
北野筆太

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記事の目次
土産菓子メーカーは安定企業でも実体は典型的な地方の同族中小企業。経営者一族に服従できなければ地獄を見ることも。
突然ですが、以下の表をご覧ください。これは全国の「土産物」の人気トップ5です。
順位 | 商品名 | 本社 | メーカー | 2003年 売上高 |
1位 | 赤福餅 | 三重県 伊勢市 |
株式会社赤福 | 85.5億 |
2位 | 白い恋人 | 札幌市 | 石屋製菓株式会社 | 85億円 |
3位 | 辛子明太子 | 福岡市 | 福さ屋株式会社 | 82.5億 |
4位 | 辛子明太子 | 福岡市 | 株式会社やまやコミュニケーションズ | 80億円 |
5位 | マルセイバターサンド | 北海道 帯広市 |
六花亭製菓株式会社 | 75億円 |
参考資料「土産物品について知りたい」(レファランス協同データベース)http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000127510
注目していただきたいのは、1、2、5位です。辛子明太子という特殊な海産物を除くと、上位の人気土産物イコール「土産菓子」であることが分かります。
土産菓子メーカーに勤めるあなたは、「当然のこと」と感じるかもしれませんが、実はそんなことはありません。土産菓子が土産物界の王者でいられるのは、「菓子」には優れた性質があるからです。
土産にお菓子市場が人気な理由とは
- 日持ちがする:消費期限2~3日の赤福餅は例外で、土産菓子の大半を占める「乾きモノ」は1カ月以上もつ。
- 地域の特色を出しやすい:どんな食材でも菓子の材料になる。地場産品をでつくったり、パッケージを工夫することで地域性を打ち出せる。
- 嫌われない:甘いものが苦手な人を除けば、菓子は万人に受け入れられる。また、しょっぱい系の菓子は無敵。
これらの長所は、全国の土産菓子メーカーが長年努力して築き上げたものです。従って、あなたは、ある意味とても優良な業界で働いているといえるのです。
なのにどうしてあなたは、いまの勤務先に不満を持っているのでしょうか。それは「優良な業界で働いている実感がない」からではないでしょうか。
ここで紹介する田口修一さん(仮名、32歳)も、地元では知られた土産菓子メーカーに勤務していたのですが、わずか3年で心が折れて他業種に転職してしまいました。
田口さんは、ルート配送と販売企画を任されていました。退職理由を尋ねると、次のような答えが返ってきました。
「変化も成長も働く喜びも得られない仕事でしたね。どんなに物覚えが悪い人でも、半年もあればこなせる業務ばかりです。それと社風ですね。経営者一族がすべてのうまみを吸い上げる仕組みが出来上がっていて、血縁関係がない普通の社員は絶対に出世できないんです」
もしあなたも、土産菓子メーカーで働き続けることに不安を感じていたら、ぜひ田口さんの体験談に耳を傾けてください。あなたのビジネスキャリアを無駄にしない方法がみつかるかもしれません。
定番のお土産菓子商品にあぐらをかく経営者はコンプライアンス無視。社員はいつ来るか分からぬクレームにおびえる。
辞めたい理由と悩み1:ルート配送によるお土産菓子の直販は高い利益率を叩きだしその商品力が称えられるも、現場で汗をかく人々自体はまったく評価されない。
田口さんの出勤場所は、菓子工場の駐車場に建てられた小さなプレハブ小屋です。そこで着替えを済ませてから、工場作業員と一緒に土産菓子を4トントラックに積み込みます。
トラックには田口さん1人しか乗車しません。まずは近隣の10の駅を回り、キオスクに商品を置きます。キオスクは1店1店の売上個数は少ないのですが、確実に売れるので重要な顧客です。
次に高速道路に乗り、サービスエリアを目指します。往路の2カ所と復路の2カ所、計4カ所のサービスエリア内の店舗で、積み荷の半分近くを降ろすことができます。
大型連休前は、サービスエリアだけの配送を行うこともあり、大口顧客です。
その後は、空港、百貨店、ショッピングモールなどを回り、ひどい渋滞に巻き込まれなければ定時に帰社できます。
こうした業務のことを「ルート配送」といい、その名の通り決められたルートを走り、決められた場所に止まって段ボールを置いていく仕事です。
この土産菓子メーカーは、商品の7割を卸会社に販売していますが、「卸会社経由」は中間マージンを取られるため、利益率は下がります。
一方、田口さんたち土産菓子メーカーの社員が、直接、小売店に商品を届けるチームを「直販部隊」といい、手間はかかりますが利益率がとても高く、彼らの売上は会社の屋台骨になっています。
しかし直販部隊の給料は低く抑えられていました。田口さんはその土産菓子メーカーに3年間勤めましたが、最終年の年収は280万円でした。ここから税金や社会保険料が引かれます。
「最近、自動車メーカーやIT企業が、自動運転車の開発をしてるじゃないですか。本当にそんなのができちゃったら、ルート配送の仕事なんて一瞬で消えてなくなりますよ。だから給料が安いんですよね」
田口さんは、この仕事に将来はないと考えていました。
辞めたい理由と悩み2:「売れるのは商品が良いからで、従業員の頑張りではない」と言い放つ、経営陣の一貫した冷たい考え方に納得できない。
田口さんの単調な日常業務の中に、たまにに彩りが加わることがあります。それは百貨店で開催される物産展です。
最近の百貨店は「何か新しいものを」と躍起になっているので、田口さんが勤めていた土産菓子メーカーの商品は、意外な注目株でした。
百貨店の物産展には、全国の土産菓子が集まります。会場は、間口1.5メートルほどの狭い「即席店舗」がひしめき合いますので、田口さんたち直販部隊は、ここでいかに目立つかを考えなければなりません。
物産展に向けた企画会議はルート配送後に開かれるため、「しんどい」と感じることもありましたが、職場の仲間意識が高まるので、田口さんにとって好きな仕事のひとつでした。
また、スーパーマーケットから「特設コーナーをつくってもいいよ」と声がかかることがあります。スーパーに土産菓子が置かれることは滅多にないのですが、それがかえって希少価値を生み客を驚かせるのだそうです。
この仕事も、企画力が問われたり、スーパー側の期待が大きかったりと、やりがいのあるものでした。
物産展でも特設コーナーでも、商品は飛ぶように売れます。田口さんは売上の新記録を出すたびに、直販部隊の仲間とハイタッチを交わします。しかし、その昂揚感は会社に戻ると一気にしぼんでしまいます。
「特に物産展は多額の現金収入があります。それを経理部長に渡すんですが、ムスッと受け取るだけなんです。総務部長を兼務する専務には、売上金額を記入した日報を渡しますが、こちらも『ご苦労さん』の一言で終わりです。ペットボトルのお茶1本、おごってもらったことはありません。会社の偉いさんたちは、『直販部隊が頑張ったからたくさん売れた』とは考えず、『うちの商品なら当然の結果』と考えるんです。もうがっかりですよ」
田口さんが勤めていた土産菓子メーカーは、典型的な同族経営でした。社長は創業者の孫で、ほとんど菓子に興味がないらしく会社で見かけることは滅多にありません。代りに会社を仕切っていたのが、社長の弟の専務でした。
物産展の売上金を無愛想に受け取る経理部長も経営者一族です。
田口さんは会社の雰囲気を次のように振り返っていました。
「会社の幹部たちは、うまい汁を独り占めしていました。社用車や接待といった『経費』を使って自分たちのプライベートを潤す一方で、従業員は最低賃金ぎりぎりで働かせていました」
田口さんたちが行っていた企画会議には、残業代は出ません。
「残業代が出ないどころの話じゃないですよ。ある冬の日の企画会議が夜10時ごろまでかかったんですが、専務からリーダーの携帯に電話がかかってきて『暖房代がもったいないからいますぐ帰れ』って言われたんです。専務の家から本社が見えるので、会議室の電灯を見ていちゃもんを付けてきたんです」
企画会議に経営者一族が出ることはありませんでした。
土産菓子は一度「定番」になってしまえば、その後は苦労せず販売を維持できるという一面があります。そこにあぐらをかく経営者がいることは、土産菓子業界に長くいるあなたならご存知のはずです。
辞めたい理由と悩み3:「悪習」がなくならないのはカイゼン意識がゼロだから。そんなところに長居は無用では…と日々悩む。
次に紹介するエピソードは、あくまで田口修一さん(仮名、32歳)が語った内容です。現在もその会社でこの「悪習」が続いているのかどうかは不明であることをお断りしておきます。
「返品された土産菓子を、包装紙を張り替えて何度も使い回していました」
田口さんのこの告白が事実だとすると、この会社は「消費期限表示偽装」をしていることになります。
乾き系の菓子は、消費期限を多少過ぎた状態で食べても健康被害がほとんどない、といいます。しかし、夏場の湿気や冬場の乾燥により、商品はどんどん劣化していきます。
田口さんも包装紙の張り替え作業に手を染めた経験があります。さらにその商品が消費期限切れであることを知りながら小売店に運んでいました。
「上司の命令だから仕方がない、と自分に言い聞かせていました。小売店からクレームが来るんじゃないかと、冷や冷やしていました」
田口さんは「いまはものすごく反省している」と言います。しかし当時をこう振り返ります。
「あれだけ食品偽装が社会問題になっているのに、なぜか感覚が麻痺していましたね。会社には逆らえない、経営者一族の指示は絶対、そのような意識が植え込まれていました。まさに社畜でした」
田口さんが土産菓子メーカーを辞めた理由をまとめてみましょう。
- 土産菓子は売り場が固定されているのでルート配送の仕事は退屈
- 物産展への出展は刺激的だが会社が成果を認めてくれない
- どんなに働いても経営者一族の私腹を肥やすだけという空しさ
- 経営者はコンプライアンス遵守意識が皆無で従業員はいつも不安
あなたが勤める土産菓子メーカーも、このうちいくつ当てはまるのではないでしょうか。もしくは、この4つだけでは足りず、5つめ6つめの「悪習」が存在するのでしょうか。もしそのような状態であれば、あなたのいまの苦難は今後も続くでしょう。ならば「転職」を考えてみてはいかがでしょうか。
この先もつらい現実に耐えながら生きていかなけばならないのでしょうか?
いいえ、「お土産菓子メーカー勤務の人生を変える解法」はきちんと存在していますので、それを今からご説明いたします。
あなたの「会社を辞めたくなる悩み」への対応策
1.土産菓子業界で独立を目指し、今は経営ノウハウを学ぶためにひたすら耐え忍ぶ
田口さんの元の勤務先は、とてもひどい職場環境だったといえます。田口さんが知人から「そんな会社は早く辞めた方がいい」と言われたのは、当然といえば当然すぎます。
しかしこの事実は、まったく逆の答えも導き出すことができます。
つまり、そんな目茶目茶な会社経営でも好調な業績を維持できるほど、実は土産菓子業界にはビジネスの魅力がいっぱい詰まっているのです。
土産菓子は、原価率がとても低いので、一発当てると大儲けできます。しかも、洋服や装飾品には「流行」という大きな障害物がありますが、土産菓子は一度名前を覚えてもらえると、高確率でリピーターになってもらえます。
シンクタンクをはじめとするビジネス界は土産菓子市場を次のように見ています。
「土産菓子市場は魅力的」といえるこれだけの理由
- 日本の土産菓子を買う訪日外国人客が急増中…2016年は2,403万人だが、2020年は4,000万人、2030年は6,000万人に拡大するとの見方がある。
- 土産菓子は土産品の3割強を占める…国内の土産品の年間売上はおよそ3兆円。そのうち土産菓子は約9,340億円。
- 地方の土産菓子ほどビジネスチャンスが大きい…観光客の「団体から個人へ」の流れはますます強まり「他人と同じ土産は嫌だ」と考える人が増えている。SNSの普及により、一瞬で人気土産菓子の地位を確立できるチャンスも。資料:
参考資料:「菓子繁盛店メールマガジン」(船井総研)
参考資料:「16年の訪日外国人観光客、最高の2403万人 22%増、政府発表」(日本経済新聞2017年1月10日)

田口さんほどの被害に遭っていれば話は別ですが、土産菓子メーカーに勤めているあなたが「多少の嫌なこと」でこの業界を去ってしまうのは、実はもったいないことかもしれません。
吉本興業がつくった「面白い恋人」という菓子を覚えていますでしょうか。北海道の銘菓「白い恋人」をパクったもので、「白い恋人」側が商標権の侵害などで販売禁止を求める訴訟を起こすとワイドショーや新聞が連日取り上げ、ちょっとした社会問題になりました。
この「事件」が起きたのは2010年です。そんな昔のことを、多くの人が覚えています。そして驚くべきことに、「面白い恋人」はパッケージデザインを変更し、いまでも販売されているのです。
パクりは褒められたものではありませんが、ここから学べることもあります。それは「土産菓子は企画が勝負。パティシエなど菓子の専門家の知恵は不要」という側面があることです。
つまり、あなたを含めた誰もが「人気土産菓子」をつくることができる可能性を持っているといえるのです。
いまの土産菓子メーカーで働きながら、人脈や経営ノウハウを身に付けておけば、独立開業したときに必ず役立ちます。
そして、もっと同業他社のことを学びましょう。
先進的な取り組みをしている土産菓子メーカーの戦略を学んでおけば、独立に至らなくても、いま会社で管理職のチャンスがめぐってきたときに成果を出しやすくなります。
不満を抱えて仕事をするのも、夢をもって仕事をするのも、労力は同じです。しかし前向きに仕事をすると、その成果は見違えます。
現在の境遇に気持ちを腐らせることなく「土産菓子業界にかける」のも次の一手といえるでしょう。
資料「吉本興業の『面白い恋人』はなぜ問題になったのか」(日経BizGate2015年9月4日)

2.土産菓子プロデューサー、コンサルタントとなる
アイデアや企画力で勝負してきた土産菓子メーカーにとって、アイデアや企画の枯渇は死活問題です。
そこで菓子をプロデュースする仕事が誕生しました。スイーツプロデューサー(土産菓子コンサルタント)とも呼ばれ、地方活性化のために自治体から招聘されることはもちろん、土産菓子の作成を考えている企業から顧問として呼ばれることが多くなっています。
菓子プロデューサーは、例えば、ちまたでハロウィンが流行り始めたらいち早くカボチャの菓子を提案します。また、味は抜群なのにインパクトがないから売れない菓子を、販売方法を変えてヒット商品にすることもできます。
店舗運営の全般を任される菓子プロデューサーもいますし、マスメディアからの取材誘致を全面担当する「PR」を主力支援内容としている方もいます。
その点、土産菓子は企画の宝庫です。そこに勤めた経験があるあなたなら、培ったノウハウを応用することで、クライアントが喜ぶ企画を提案できることでしょう。
しかもルート配送の経験があれば、クライアントに販路を紹介することもできます。販路の紹介は売上に直結するの、非常に喜ばれます。
あなたが土産菓子業界でやれることは、まだまだたくさんあるのです。
参考資料「スイーツプロデューサー活動」(一般社団法人スイーツエージェント協会)
3.土産菓子業界を辞めて他業界に転職する
土産菓子になんの未練もない、古い商習慣から1日も早く抜け出したい――そこまで追い詰められているあなたには、他業界への転職をおすすめします。
しかも土産菓子業界を知っているあなたであれば、これまでのキャリアを無駄にしない転職が可能です。
「ルート配送しかしていないから、土産菓子のノウハウなんてない」と思わないでください。ルート配送という仕事には「モノの売り方」を知る機会がふんだんに盛り込まれているからです。
あなたは単に、A地点からB地点に土産菓子が詰まった段ボールを運んでいただけでしょうか?違いますよね。搬送先の売り場のレイアウトを知っていますし、売れ筋商品の情報も入手可能です。それだけの知識と経験があれば、あなたが活躍できるフィールドはたくさんあります。
胸を張って採用面接に臨んでください。
他業種への転職…不安はよくわかります。
しかし、うまく土産菓子業界の勤務を抜け出して、人生の立て直しに成功した人の多くは、土産菓子業界以外への道を選択した人々なのです。
この件について、以下でより詳しく説明いたします。
土産菓子メーカーの辞め方とタイミング
1:会社の評判を守るため退職者に汚名を着せるひどい経営者の被害に遭わないように留意する
田口修一さん(仮名、32歳)が働いていた土産菓子メーカーは、業績は好調でしたが、創業家の血縁ではない一般従業員には、居づらい職場でした。田口さんは安定よりも仕事のやりがいを選択しようと、上司に退職願を出しました。
上司も一般従業員でしたので、田口さんに次のような言葉をかけて慰留しました。
「お前の気持ちは分かる。でも同じ苦しみを味わっている俺は10年以上我慢している。『専務に好かれろ』とは言わないが、せめて嫌われないように振る舞えば、このぬるま湯経営はとても居心地いいぞ」
田口さんは「俺はこの人のようになりたくない」と思い「ありがとうございます。でもやっぱり辞めます」と伝えました。
上司は「そうか、仕方ないな。これは専務に渡しておくよ」と言って、田口さんの退職願を受け取りました。
田口さんは翌日、総務部長を兼務する専務から呼ばれ、退職日は1カ月後と決まりました。退屈で仕方なかったルート配送ですが、渋滞に巻き込まれないルートづくりや、小売店ごとの都合のよい納品タイミングなど、田口さんならではの工夫がありました。田口さんはそれを、後輩に惜しみなく引き継ぎました。
ところがある日、その後輩から「田口さんみたいな人がどうして横領なんてしちゃったんですか」と言われました。
田口さんはびっくりしました。もちろん田口さんは、会社のカネを横領したことなんてありません。
田口さんが後輩に、誰からそんな話を聞いたのか尋ねると、「みんなそう言ってますよ」と言われました。
そこで田口さんは、最初に退職の相談をした上司に話を聞くことにしました。すると上司は「専務がそう言いふらしているんだよ」と教えてくれました。
上司の見立ては次のような内容でした。
「専務は『うちの会社が嫌で辞めるなんてけしからん』と言っていた。そんな奴は依願退職じゃなくて解雇してやる、とも言ったそうだ。でも解雇をすると会社の名前に傷が付く。それで、田口が売上金を盗んだことにして、本来は解雇に相当する事案を会社の温情で依願退職にした――というテイにしたんだ」
専務による退職希望者へのいじめは恒例行事でした。社長は不在がちなので、専務は絶対君主です。しかも一族社員は、専務に喜んで従います。
同族経営は一概に悪とは言い切れません。むしろサントリーのように、オーナーがいる会社はビジネスで大きな冒険ができるので、面白い事業を展開できます。
しかし、中小零細企業では、同族経営の弊害が色濃く出る傾向があります。あなたの勤務先も同族企業でしたら、退職するときは十分警戒してください。
2:突然の退職金不支給の決定。泣き寝入りする必要なし。弁護士を賢く使おう。
田口さんは「2年勤めたら退職金が出る」という約束も無効にされました。最後の給料日は退職日から20日後だったのですが、いつもの月給分しか振り込まれていませんでした。
もう退職しているので、田口さんが何を言っても会社から攻撃される心配はないので、田口さんは雇用契約書を握りしめて元の職場に乗り込んでいきました。その雇用契約書には退職金の規定が明示されていました。
対応した専務はゆっくりと「確かに退職金のことは書いてあるね」と田口さんに言いました。田口さんは「勝った」と思いました。
しかし専務は次のように続けたのです。
「本当に申し訳ない。この退職金規定はいまは存在しないんだよ。工場に新しい機械を入れたことや、原材料の高騰などで採算が悪化したので、従業員には申し訳ないんだけど、コストカットさせてもらったんだよ」
田口さんは「でもそれは私との契約後の話でしょ。私が入社したときは退職金規定が有効だったんだから、きちんと払ってください」と食い下がりました。
「いやいやそういうわけにはいかないのさ。君より前に入社した人たちも、退職金制度がなくなることについて了承してもらっているから。君も了承していると思っていたよ。上司が君に伝えなかったんだね」
専務はそれだけ言って席を立ってしまいました。
田口さんは会社を出て、元の上司に電話をしました。
元上司は「確かに俺は、専務から退職金制度を撤廃すると聞かされ、了承した。それをお前(田口さんのこと)に伝えなかったのは俺のミスだ」と答えました。
田口さんは「そうだった、この人は会社の犬だった」と思い出し、これであきらめることにしました。しかし、法律上は田口さんは退職金をもらう権利があります。
雇用契約書という明白な証拠がありますし、専務も元上司も、田口さんに「退職金制度の撤廃」について話をしなかったことを認めているからです。
田口さんが味わった悔しさを、あなたが味わう必要はありません。そのためには、次の方法があります。
約束された退職金が支払われなかった場合の対処
- 労働基準監督署に通報する
- 各地の労働局の相談窓口に行く
- 労働組合に相談する
- 労働訴訟専門の弁護士に相談する
弁護士への相談ですが、「敷居が高そう」と感じる必要はありません。最近は労働問題の解決に力を入れている弁護士事務所が増えてきて、そのようなところは初回の相談料を無料にしています。
弁護士による無料相談で、
- 訴訟にしたら勝てそうか、
- 勝てたらいくらくらい戻ってきそうか
- 弁護士費用を差し引いた「手元に残るカネ」はいくらくらいになりそうか
が過去の同様判例からみてある程度分かります。
これを聞いてから戦うかどうか決めてもいいでしょう。一生懸命働いてきたあなたが、泣き寝入りする必要はありません。

土産菓子メーカーの勤務経験が優遇される、より就労条件のよい「おすすめ転職先」の例
1.デパート催事場の販売スタッフに転職
土産菓子メーカーで働いた方におすすめしたい転職先は、デパート催事場の販売スタッフです。この職場は元土産菓子メーカー社員のあなたにとって非常に活躍できる可能性が高いといえます。
デパートはいま、スーパーマーケットに押され、コンビニに浸食され、苦境に立たされている、と報道されています。
しかしそれは「総売り上げ」の話であって、利益率の高い富裕層ビジネスでは依然として競争力を持っています。
そんなデパートが目玉商品にしているのは、高級バッグでもスイス製腕時計でもありません、催事こそが、彼らにとって最も力を入れるイベント商品なのです。
全国物産展は、デパートにかつてのにぎわいをもたらしています。富裕層は「地方の隠れた名産品」という言葉に弱いので、ついつい財布のひもが緩むのです。
土産菓子業界にいたあなたなら、同業他社の情報もご存じのはずです。あなたが小売店の売り場獲得争いでしのぎを削ったライバルたちは、デパート催事場に転身したあなたの顧客になるのです。
デパート催事関連の求人票をDODAで調べてみましたので、いくつか紹介します。
東京の催事店舗のマネジメント正社員 | 販売、接客業務と新人社員教育。現場はデパート、駅ナカ、空港など。 | 年収350万~600万円 | 残業月40時間、年間休日105日 |
北海道、関西で催事販売、商品管理の正社員 | プリンなどのスイーツ販売。現場はデパート、商業施設など。 | 年収221万~325万円 | 年間休日105日 |
参考資料「DODA」
2.地方でなく都市部に本社を置く大手菓子製造メーカーの菓子作り現場の管理職に転職
地方の土産菓子メーカーで働いたことがある人は、例えその業務がルート配送だったとしても、「菓子づくりの現場」の近くにいたはずです。社長や上司たちから、菓子づくりの極意を聞いたこともあるのではないでしょうか。
あなたのそうした経験は、一般菓子の領域でも生かすことができます。そこであなたには、お土産ではない一般菓子…つまり、都市部に本拠を置く大手菓子製造メーカーの管理職へ転職をおすすめします。
土産菓子と一般菓子は、ほとんど別分野の商品に見えますが、製造方法や衛生管理、原材料を見極める目、といった点は共通しています。なので土産菓子メーカーの人が一般菓子メーカーに転職しても、違和感なく新しい仕事に取り組むことができるでしょう。
これまで菓子は、手作りこそ「本物」かつ「高級」で、工場生産は「味が落ちる2級品」と考えられてきました。
しかし生産マシンは驚異的な進化をみせ、菓子職人たちの「匠の技」を工場で忠実に再現できるようになりました。
その上、生産マシンは「何万個つくっても疲れない」という長所があるので、「本物かつ高級なのに安い菓子」がつくれるようになったのです。
菓子製造工場には「未来」がぎっしり詰まっていますよ。
菓子製造リーダー | 焼き菓子、クッキー、和菓子などを製造。工場は24時間稼働。 | 年収350万~450万円 | 季節の素材を使った独自製法が売り。 |
米菓製造工場の工場長候補 | おかき、せんべいなどを製造 | 年収390万~520万円 | 社員がまだ少ない会社。若手の指導役を期待。 |
ケーキ店の店長候補 | シュークリーム、フルーツケーキ、ワッフルを製造 | 年収250万~400万円 | 岡山県内の2店の高給ケーキブティックの商品を製造。 |
菓子製造工場の統括課長(急募) | 名古屋土産、キャラクター菓子も | 年収450万~500万円 | 工場長と一緒に30名ほどの作業員を統括する業務。管理指導も。 |
資料「DODA」
ただ、どの菓子メーカーも人材育成には苦労しているようで、上記のDODAの求人票を見ても、管理職の募集が目立ちます。
どんなに優秀な機械を設置しても、それを動かすのは人です。しかも工場はチームワークで仕事をしなければなりません。そこで「菓子づくりの心」を知っているあなたの力が必要とされているのです。
3.「飲食」特に「ローカルフード」をテーマとするイベントプロモーター職、PR企画職に転職
土産菓子メーカーに勤めるあなたの転職活動では、「飲食」に関する企業を探してはいかがでしょうか。
もちろん、あなたが今から食材や調理について学び始めるのはつらいでしょう。そこで、飲食をテーマにしたイベントに力を入れている企業のイベントプロモーター職やPR企画職はいかがでしょうか。
例えばいま、埼玉県の「清龍酒造」という酒蔵が、テレビや雑誌に頻繁に取り上げられています。土日には100人以上の見学客が押し寄せる一大観光スポットになっているからです。
日本酒の国内の消費量は低迷したままなのに、この「清龍」が盛況なのは、イベントが大当たりしたからです。
酒蔵見学ツアーの参加費は1日3,000円とかなり高いのですが、その代わり、大量の日本酒が飲める上に、鮮魚の解体ショーを始めとする豪華な食事を楽しめるのです
また、長野県のサンクゼールは、単なるワイナリーでも、単なるジャムメーカーでも、単なるレストランでもありません。フランスの田舎をそのまま日本に輸入した、違いが分かる大人のテーマパークです。
ここも「カンブリア宮殿」のほか、様々なマスコミが紹介しています。
土産菓子が一般の菓子と決定的に異なるのは、「思い出」が詰まっていることです。人々は土産菓子を、その土地に来た記念に買っていきます。
土産菓子は、購入した人が食べない珍しい食品でもあります。「誰かを喜ばせる」ために買われるのです。
「思い出」や「喜ばせる」を含む土産菓子は、その存在自体がイベントといえるでしょう。だから、土産菓子業界に身を置いたことがあるあなたに、飲食イベントへの転身をおすすめしたいのです。
参考資料:「清龍酒造株式会社」
参考資料:「THE行列、酒蔵見学ツアー」(TV東京)
参考資料:「株式会社サンクゼール」
人生の選択肢は常にあなた自身が持っている
学習塾や予備校勤務のあなたの人生を変えるために、まず一番注目すべきことは「土産菓子メーカー以外の職場もあることを知る」ということです。
案外、外部と交流がない地方の土産菓子業界人は井の中の蛙になることが多いです。
自分の会社以外のことを全く知らないというケースも非常に多いようで、勇気を出して一歩外に踏み出せば大きな海が広がっているということを、改めて考えてみてはどうでしょうか。
兎に角、どうしても今の悩みが解決できなければ「別に辞めればいい」「辞めたっていいんだ」「自分は自由に人生を選択できるんだ」と割り切ること。
周囲からの目を気にしたり、あなたの人生と無関係な上司のメンツを立てて、自分の人生を後回しにしてします思考こそが「今の職場を辞められなくなってしまう」ことの最大原因であり、悩みをより深くして人生を間違えてしまう事につながります。
転職コーディネーターに無料相談することから始める
自分自身でまず何をしてよいかわからないならば、人材紹介会社に登録するのも手。
転職コーディネーター経由で他の業界、企業の内情を知ることができますし、冷静な第三者の目で、あなたのスキルと経験を活かせる新しい職場を用意してくれます。
また、辞めづらい今の職場で、(転職先を紹介してもらった後に)スムーズに次の職場に移動するための方法やタイミングなどもしっかり教えてくれますよ。
いきなり仕事を辞めたりはせず、まずはじっくり転職エージェントと無料のアポイントを取って、今後の動き方を相談しつつ、あなたの希望に沿った新天地候補をじっくりと紹介してもらうべきでしょう。