
北野筆太

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記事の目次
ドラッグストアの一般社員は「薬剤師様」の小間使いのようなもの。「私の業務内容?雑務ですけど」。
「ドラッグストアの一般社員は悲惨ですよ」
ドラッグストアでの働き方の特徴について尋ねると、飯塚翔平さん(仮名、25歳)はそのように言いました。
「僕は、大した高校に入れなかったし、大した大学にも入れませんでした。だから就職だけは『有名な会社に』と思っていました。当時、ドラッグストアは出店競争の真っただ中で、大量採用をしていました。給料もそこそこ良かったですし、とても魅力的でした」
飯塚さんの心を引きつけたのは、ネームバリューだけではありません。採用担当者は「君たちは幹部候補生。うちには店長やエリアマネージャーなど、管理職ポストがゴロゴロ落ちているよ」と言ったそうです。
また、熱心に企業研究をしていた飯塚さんは、ドラッグストアには勝算がある、とみていました。それはドラッグストアが、薬局と化粧品店とスーパーマーケットの機能をあわせ持つ「超店舗」だからです。店舗によっては、さらにホームセンターの商品が並ぶこともあります。
「正直、これから小売や流通を牛耳るのはドラッグストアの時代だって思いましたね。ドラッグストアから内定通知をもらったときは『勝ち組に入れた』って確信しました」
しかし飯塚さんは、わずか2年半で退職に追い込まれました。ドラッグストアの現実と、飯塚さんの想定は、それほど離れていたのでしょうか。
「いえ、そうではありません。ドラッグストアの現実は、僕の想定通りでした。でも、だからギブアップしたんです。薬局でも、化粧品店でも、スーパーマーケットでも、ホームセンターでも、そこの従業員たちは、その仕事だけをやっていればいいんですが、ドラッグストアの一般社員は、そのすべてをやらなきゃならないんです。だから4倍大変なんです」
さらに飯塚さんは、社内の雰囲気について「カーストの下の方に置かれることも、ストレス要因でした」と、インドの身分制度になぞらえて表現しました。飯塚さんによると、ドラッグストア内では、薬剤師が「神様」で、一般社員は「小間使い」のような存在だったそうです。
ドラッグストアの一般社員であるあなたは、「そんなの承知の上で入社したよ」と言うかもしれません。もしくは、飯塚さんと同じように「まさかこんなにひどいとは」と嘆いているかもしれません。
いずれにしても「私は会社にスポイルされている」と感じているのでしたら、飯塚さんの話に耳を傾けることをおすすめします。
ドラッグストア企業の一般社員ならではの、就業中の不満、大変さ、辛さと悩み
辞めたい理由と悩み1:豆腐を買う高齢者から発泡酒の会社員まで、幅広い全客層に対応するのは傍目から見たほど楽ではない。
「ドラッグストアの仕事って楽そうだよね」
ドラッグストアの入社が決まったころ、飯塚翔平さんは、両親からも、金融に進んだ大学の友人からも、そう言われました。しかしいまの飯塚さんは「そう思われても仕方がない」と感じています。
客の視界に入るドラッグストアの一般社員とは、「パートが足りないときにレジを打つ人」、「倉庫から商品を持ってきて棚に陳列する人」、「健康食品をすすめる人」、そして、「たまに接客する人」にすぎません。
しかし想像してみてください。ドラッグストアの取り扱いアイテム数はゆうに1万種を超えます。商品の陳列も健康食品のPRも、一見すると単純作業に見えますが、取り扱う品がこれだけ増えると「複雑で難解な仕事」に化けます。
そしてパート従業員が休んだときのレジ打ちの「代打」は、すべてのルーチンワークを中止して行わなければならないのです。野球に例えると、代打の選手が守備もグラウンド整備もビール売りもやるようなものです。
商品のアイテム数の多さなら100円ショップも負けていませんが、ドラッグストアの場合、商品ごとに客層が異なるという特異な性質があります。
化粧品はそこそこのセレブから女子高生まで買いに来ますし、除草剤を買っていく工事現場の作業員もいます。豆腐や冷凍食品は近所のお年寄りに喜ばれていますし、仕事帰りのサラリーマンのために、発泡酒やチューハイやつまみも種類を充実させなければなりません。
「すべての日本人が客、と言っても大袈裟じゃないから、僕たちはどんな客層にも対応できなきゃならないんです。とてもしんどかったです」
飯塚さんは大きなため息をつきました。
店舗スタッフの労務管理も一般社員の仕事です。
パート従業員の勤務シフトづくりは、他の業務を一切しなくても丸々1日かかります。つまり、他の仕事で半日つぶれれば2日がかりになりますし、シフトづくりの時間が3時間しか取れなければ3日作業になるわけです。
もうひとつのストレスは、無暗に威張るタイプの薬剤師が同僚にいる場合です。調剤薬局を併設している店舗では、薬剤師の数が多くなり、その分、性格の悪い人が入り込む確率が高くなります。
飯塚さんは、怒りながら次のように言いました。
「本社は薬剤師たちに『手があいているときはレジ打ちでもなんでも手伝うように』と指導しているんです。でも彼らが雑務に手を貸してくれるのは、店長がいるときだけです。店長がいないと、僕がいくらお願いしても、完全に無視です。僕が陳列作業をしているときに、台車から段ボールを落としてしまって、中のカップ麺を床に散乱させちゃったんです。そのとき目の前に薬剤師がいたんですが、見て見ぬふりです。あれは悔しかった」
飯塚さんの怒りはごもっともです。
というのも、仕事の達成感は、与えられた業務をこなしたからといって、得られるものではありません。
職場内で職種の違いや上下関係という壁を取り払って協働できたとき、「きょうは充実した1日だったな」と振り返ることができるのです。
しかし、あなたもつくづく感じていることでしょう、「ドラッグストアにあるのは『仕事』じゃなくて『作業』だ」と。
ドラッグストアの一般社員は、薬剤師から下に見られ、パートのわがままに振り回され、本社に忠誠を誓わされ、なかなか「達成感が得られる1日」はやってきません。
では、どうしたらいいのでしょうか。
「ドラッグストア戦国時代」を象徴するできごと
- 2016年度の売上高で22年ぶりにマツモトキヨシが首位陥落
- 代わって王者になったのは、イオン系のウエルシア
- 2016年度の売上高は、ウエルシアが6231億円、マツモトキヨシは5351億円だった
- ウエルシアは2014年にイオンに買収され、その後もM&A(合併・買収)を繰り返し、今回の偉業を成し遂げた
- ドラッグストアの市場規模は、2016年度は6.5兆円で前年度比5.9%アップ
- ツルハやサンドラッグも年間売上高5000億円超を誇り、ウエルシアやマツキヨを猛追している
参考資料:「ドラッグストア、マツキヨ首位陥落 22年ぶり」(日本経済新聞2017年5月11日)

辞めたい理由と悩み2:営業時間が長くなるのは仕方がない。でも給料を上げるか休日を多くするかしてほしい。
新卒で大手ドラッグストアに入社した飯塚翔平さんは、この業界の競争の激しさに翻弄されました。飯塚さんがなんとか、店長に怒鳴られないで仕事ができるようになった2年目の春、勤務先の店舗の営業時間が大幅に長くなりました。
いわゆる「ドラッグストアのコンビニ化」です。
2か月に1回あった定休日は廃止されて365日営業になり、営業時間は7時~23時へと一気に4時間も長くなりました。
すると、本社のもくろみ通り、朝の高齢者客と、夜間の若者客の取り込みに成功しました。売上は2割近く伸びました。
しかしいつの時代も、そしてどの業界でも、会社が儲かれば社員は疲弊します。
営業時間の拡大にも関わらず、新しいパートがなかなか見つかりませんでした。かといって一般社員の補強はありません。飯塚さんの仕事が「純増」しただけです。
さらに、とにかく商品が売れるので、品出しや倉庫保管の業務が格段に増えました。飯塚さんは倉庫と商品棚を1日に何度も往復しなければならなくなりました。
まだあります。
客数が増えたことで、接客がなおざりになり、店へのクレームが多くなりました。店長は、叱るとすぐに辞めてしまうパートは叱りません。「会社の宝」と言われている薬剤師も叱りません。
そうです、店長は飯塚さんだけを叱るのでした。
飯塚さんは午前6時に出社して、24時に退勤する毎日を強いられました。
「休日はもう寝るだけです。でもそれすら夢にうなされて深い眠りはできませんでした。夢の内容ですか? 化粧品が詰まった段ボールを開いたら、中の液体がダダ漏れだったとか、仕事で失敗するシーンが多かったです」
これだけ働いて、飯塚さんの2年目の月給は手取りで20万円、その年のボーナスは夏23万円、冬35万円でした。
「ドラッグストアで働いて良かったことといえば、貯金ができたことですね。忙し過ぎてカネを使う暇がないんです」
飯塚さんは乾いた笑顔をつくってそう言いました。
あなたも「給料の金額自体は悪くない、でも仕事内容を考えると激安」と感じているのではないでしょうか。
「報酬」の「報」の字は「むくい」と読みます。あなたはいまの報酬で「報われている」と感じられますか。
「ドラッグストア戦国時代」を象徴するできごと、その2
- ドラッグストアが百貨店を抜いた!
- 2016年度の市場規模では、ドラッグストアの6.5兆円(前年度比5.9%増)に対し、百貨店は5.9兆円(同2.9%減)だった
- 訪日外国人客の売上(インバウンド)が明暗を分けた。爆買いの対象が、百貨店が得意な高級品から、ドラッグストアのメインにしている低価格帯商品に移ったため
- ドラッグストアの成長エンジンは「調剤と医薬品」で、2016年度は2.1兆円を売上げた
- 化粧品は1.4兆円、日用雑貨も1.4兆円だった
- ドラッグストアの「調剤と医薬品」が好調なのは、国の「かかりつけ薬局」政策が後押ししていることも大きい
参考資料「ドラッグ店市場規模 百貨店超え 6.4兆円、16年度5.9%増」(日本経済新聞2017年3月16日)

辞めたい理由と悩み3:ドラッグストアは国内に約2万店舗もあり完全に飽和状態。淘汰が吹き荒れる暗雲はもう目の前に。
勤務3年目に突入した飯塚さんの頭には、「好業績を叩き出しているドラッグストア業界を離れることは賢い選択なのか」という疑問が浮かんでいたそうです。
しかしその疑問はいつも「でも先輩や上司たちを見てみろ。ああなりたくないだろ」という思いに打ち消されてしまうのでした。
飯塚さんは最終的に「仮にこのままドラッグストア業界が成長を続けたとしても、そこで働く一般社員の将来は明るくない」と判断し、退職の道を選びました。飯塚さんの判断を「正しい」とする「証拠」がいくつかありますので紹介しましょう。
ドラッグストアの一般社員が将来性を不安に思う「事実」
- 2015年に某大手ドラッグストアの子会社が薬剤服用歴(薬歴)の未記載問題を起こした。親会社は「指導が行き届かなかった」と述べ、会社の急拡大に管理体制が追いついていない実情を明かした。
- 日本チェーンドラッグストア協会によると、2014年度の店舗数は1.8万店。10年で25%増。飽和状態とみる経済専門家もいる。
- 業界内で「調剤薬局を併設すると店舗売り上げは2割増える」と言われているため、今後、調剤併設店の増加は不可避。そうなるとドラッグストア内での一般社員の肩身はますます狭くなる!?
光と影は、どちらも単一では存在できず、両者は共存関係にあります。
本物の太陽は様々な角度で万物を公平に照らしますが、ビジネスの太陽は不公平です。いつも照らされている者はいつも光り輝き、影に追いやられている者はいつまでも影の下にいなければなりません。
あなたも常日頃から「ドラッグストアの一般社員は影の下から出られない」と感じているのではないでしょうか。
この機会に日の当たる場所に出ませんか。そうです、転職を考えてみましょう。
この先もつらい現実に耐えながら生きていかなけばならないのでしょうか?
いいえ、「塾講師・予備校講師の人生を変える解法」はきちんと存在していますので、それを今からご説明いたします。
あなたの「会社を辞めたくなる悩み」への対応策
1.店舗淘汰時代は社員淘汰の時代。来るべく人員整理に勝ち残るため、個人でも知識研鑽に励むべし
飯塚さんは早めにドラッグストアに見切りをつけましたが、あなたが「なかなかそう簡単に割り切れるものではない」と考えるのは当然です。なぜなら、ドラッグストアの一般社員が、同僚の薬剤師の年収を上回ることは不可能ではないからです。
「辞めるのは、年収アップに挑戦してからでも遅くない」と考えるのであれば、得意分野を広げてみましょう。
冒頭で、現代のドラッグストアは、スーパーマーケットやホームセンターなどの領域に進出しているとと解説しました。
であれば、さらに100円ショップやコンビニ、金融機関の機能も盛り込むことができるはずです。すでに一部のドラッグストアは「店舗の多機能化」に着手しています。
しかし、会社の積極姿勢とは裏腹に、こうした動きに現場の店員たちが追い付いていけません。そこであなたが「世の中の商品をすべてうちの店で売る」という気概を持ち、ありとあらゆる商品の研究をするのです。
ダイエーやマイカルを持ち出すまでもなく、「何でも安く売れば儲かる」時代はとうの昔に過ぎ去りました。それでユニクロやABCマートといった、専門店が繁盛し始めたのです。
しかしドラッグストアの好業績が示しているのは、「ひとつひとつの商品をそれぞれの専門店で買うのは面倒だな」と考える消費者が増えたという事実です。
人々は「処方薬を買いに行くついでにティッシュをまとめ買いしたい」と思うようになったのです。つまり「何でも安く売ればいい」でもダメ、「専門化しすぎるだけ」でもダメなのです。
「何でもあって、なんでも安く、商品の専門性も追及している」
これから小売・流通業は「二兎」どころか三兎も四兎も追わないと生き残れないのです。
ドラッグストアの一般社員であるあなたが、スーパーマーケットの商品にも、化粧品にも、ホームセンターの商品にも、コンビニの商品にも、そしてもちろん薬品にも詳しくなれば、必ず社内で上層部にたどりつきます。
2.店長を目指し、高給取りになるためには、他の先輩方のように腹をくくることが必要。
ドラッグストアの一般社員の給与水準は、20代から30代前半は、手取りベースだと、月給20万円程度で、ボーナスが夏30万円、冬40万円といったところでしょう。
ところが、大型店の店長クラスになると、月給50万円、夏ボーナス100万円、冬ボーナス140万円にまで跳ね上がります。夢のある金額です。
若いあなたは「20年ぐらい居れば店長になれるかもしれないけど、そこまで待てそうにない」と思うかもしれませんが、そうではありません。
ドラッグストアの一般社員は、完全実力主義です。多く売った者が勝ち、多く売らせた人が店長になるのです。某中堅ドラッグストアで、女性ながら30代で店長になった人は、とにかく化粧品を売りまくりました。
それまで日用品をメインに扱っていた彼女が、新店舗の開業メンバーに入れられ、化粧品の販促チーフを命じられました。しかしこの段階では「抜擢」ではなく、単なる「お試し」でした。
ドラッグストアの本社は、一般社員の競争心をあおろうと、若手にどんどん仕事を任せますが、実績を残せないとすぐに外します。
それで彼女は、「このチャンスを逃さない」と、化粧品について猛勉強しました。
新店舗が開業すると、とにかく接客に力を入れました。どんどん新商品をすすめました。店長から「強引すぎる」と言われても聞き流しました。
それは彼女の中に、次のような信念があったからです。
「中高年の女性は『店員に背中を押してもらえないと、若者向けの化粧品に手を伸ばせない』と感じているんです。私は高齢女性にこそ綺麗になってほしかったんです」
果たして、開業から1年後には、化粧品の売上が全店で1位になり、彼女は副店長に昇格しました。それでも彼女は努力を止めず、今度は仲間をつくり始めました。
スタッフを集めて、化粧品販促講座を開いたのです。彼女は自分のノウハウを惜しみなく披露しました。そうすると自分の売上が減るのは目に見えていましたが、彼女はスタッフたちに「皆さんも私ぐらい売れば副店長になれるんですよ」と言いました。
その化粧品販促講座には、レジ打ちのアルバイトの高校生も出席するようになりました。アルバイトたちは「化粧品の知識が学べる上に、副店長から褒められる」という動機で参加したのでした。
化粧品部門がこれだけ活気づくと、同じ店舗内の薬品担当者にも日用品担当者にも火が付きます。彼女の店舗は、化粧品だけでなく、全商品の坪当たり売上高でも社内1位になりました。
こうした実績を引っ提げて、彼女は堂々と店長に就任しました。
3.ドラッグストア業界を辞めて他業界に転職する
ドラッグストア業界が百貨店業界を抜いたことは紹介した通りです。
しかし、小売・流通業界では、まだまだ「百貨店の社員」のブランドは高いままです。そしてあなた自身、「どうせ私はドラッグストアだし」と卑下してしまうことがあるのではないでしょうか。
ドラッグストアは、総合的に見て「良い業界」といえるでしょう。しかし馴染めない社員が多いのも事実です。
もしあなたが「馴染めない」「やりがいを感じられない」「別の企業に就職できていたらこの業界にこなかった」と感じているなら、いまが転職どきかもしれませんよ。
なぜ転職するならできるだけ早い方がよいのか?
それは、国内のほとんどすべての業種が、人手不足だからです。まさに「売り手市場」で、いまほど転職しやすい時期はないのです。そしてこの売り手市場はこの先ずっと続くことはまずありえません、必ずどこかの段階で人材売り手市場には歯止めがかけられます。
ドラッグストアの複雑なオペレーションをこなしてきたあなたなら、どの業種でも渡り歩くことができるでしょう。あなたがもしも、今のうちに転職施策の手を売っておくならば。
他業種への転職…不安はよくわかります。
しかし、うまくドラッグストア勤務を抜け出して、人生の立て直しに成功した人の多くは、ドラッグストア以外への道を選択した人々なのです。
この件について、以下でより詳しく説明いたします。
ドラッグストア社員の辞め方とタイミング
1:「秘密保持義務」「競業避止義務」を知らないと大やけどしかねない野で注意。
日本国憲法は、職業選択の自由を保障しています。つまりサラリーパーソンは、公序良俗に反しない限り、どんな仕事に就くことも許されるのです。
しかし、これからドラッグストアを退職しようと考えている人は、このことを「当然」と思わないでください。特に責任ある仕事を任されている方や、裁量権が大きい人は、注意が必要です。
それは、ある会社があなたを採用したいと考えているのに、あなたはその会社に転職できないという事態が起こり得るのです。
その事態を引き起こすのは、「秘密保持義務」と「競業避止義務」です。
法律用語なので「難しい」と感じるかもしれませんが、考え方自体は「常識的」なので、読み進めてもらえれば納得いただけるはずです。
企業と労働者は、お互いに誠実に行動することが求められます。そのため企業は、働く環境を安全にしたり、従業員に多少の問題があっても可能な限り解雇しないことが求められます。
一方で労働者は、秘密保持義務と競業避止義務を負うのです。
労働者が同じ会社で長く働くほど、その会社が長年かけて培ってきた「企業秘密」を詳しく知ることになります。企業秘密を握った労働者が、その会社のライバル会社に転職してしまったら、その会社は大きな損を被ります。
そこで、企業秘密を握った従業員は、退職後もそれを漏らしてはならないのです。つまり秘密を保持しなければならないというわけです。
しかし多くの人が、あるドラッグストア企業から、別のドラッグストア企業に転職しています。そのほとんどで問題にならないのは、転職している人の多くが、企業に重大な損失をもたらすほどの重大な秘密を握っていないからです。
しかし、他業種ではありますが、裁判所が労働者に対し「2年間は競業する企業に勤めてはいけない」といった内容の判決を下したことがあります。
また、元の会社のノウハウを、転職先企業で完全コピーして事業化すると、損害賠償請求の訴えを起こされる可能性があります。
当然のことながら、パソコン内の売上データや顧客情報などを持ち出して転職先の企業に渡すことは絶対にしないでください。
刑事告発されかねません。
一方で、転職前の会社に「秘密保持義務に関する規定」がない場合で、競合他社に転職してから元の会社の顧客に営業をかけた事例では、裁判所は「自由競争の原則に照らして許される」としました。
ドラッグストア各社は生き残りをかけ、様々な工夫を重ねています。あなたも多くの工夫を考案し実践してきたことでしょう。
しかしそれはあくまで「会社のモノ」ですので、転職後は、ビジネス上のルールを厳格に守り、また倫理観をしっかりもって対応しましょう。

2:ビジネスルールを厳守して穏便な退職を目指そう。
もしあなたが、ドラッグストアの店長や幹部社員で、他のドラッグストアに転職することが決まった場合、退職してしまう前に、現在の会社の社内規定を読み返しましょう。
特に就業規則は重要です。
前述した秘密保持義務や競合避止義務について書かれてあれば、その会社は退職者のことを厳しくチェックするはずです。
あなたも、新天地に移ってまで、かつての同僚から「いちゃもん」を付けられたくないでしょう。
また、退職金に関する規定も確認しておいてください。賢い会社は、退職金規定に「同業他社に転職したら減額する」といった内容を明記しています。
刑事事件や人権問題は、どんなに小さな被害でも大きな問題に発展することがありますが、ビジネス上の問題は、少額だったり裁量権が小さい人の問題は「今後気を付けるように」で終了することがあります。
その代りビジネスでは、金額が大きかったり、上の地位に就いている人だったりすると、途端に「大ごと」になります。
あなたに逃げられた企業は「裏切られた」と考える、ということを覚えておいてください。ビジネスで受けた損害は、ビジネスで報復されます。立つ鳥跡を濁さず、を心掛け、穏便に退職してください。

ドラッグストアの勤務経験が優遇される、より就労条件のよい「おすすめ転職先」の例
1.ドラッグストア以外の流通業界に転職
ドラッグストアは小売業界に属していますが、これだけ規模が大きくなると流通業としての役割も大きくなっています。
小売業は「モノを店で売る」仕事をしていますが、流通業は「モノを世の中に流す」仕事なので、この2つの役割を担うドラッグストアは、かなり社会貢献度が大きい業態といえるでしょう。
ですので、ドラッグストアの一般社員の経験があるあなたには、流通業界への転身をおすすめします。なぜなら、流通業界は「市場が相当に大きいく、消滅しない業界」からです。
そしてドラッグストアの店員であるあなたは、「世の中が必要とする商品」を熟知しているはずです。それを効率的に世の中に流通させる仕事なら、うってつけといえるでしょう。
さきほど、ドラッグストアの市場規模は2016年度で6.5兆円と紹介しました。これはすべてのドラッグストアの売上高を足した金額です。
しかし流通大手は、1社で同規模の売り上げを叩き出します。
流通大手2社の売上高(2016年3~11月までの9カ月間の売上高)
- イオン…6.1兆円
- セブン&アイ・ホールディングス…4.3兆円
マツモトキヨシを22年ぶりに抜いたドラッグストア1位のウエルシアは、イオングループです。つまり国内の「業界地図」としては、流通大手は「都道府県」、ドラッグストアは「市町村」といった位置づけなのです。
だからあなたには、次はより大きなステージに立っていただきたいのです。
転職サイト大手のDODAに掲載されている求人票を調査してみると、イオンの100%出身会社の「ATジャパン株式会社」の営業責任者の年収は、400万~600万円です。年間休日数110日も、満足いくレベルではないでしょうか。
業務は、「販売促進の企画と実行」、「従業員教育」、「数値管理」、「ショッピングモール内の他社とのコミュニケーション」、「親会社イオンとのコミュニケーション」などです。
応募条件の「店舗運営統括マネジメント3年以上」は、あなたなら軽くクリアできるのではないでしょうか。
参考資料:「スーパー・百貨店が苦戦 流通大手3社決算 イオンは赤字、セブンとユニー・ファミマも減益」(産経ニュース2017年1月12日)

2.ロジスティクス業界業界に転職
違う業種への転身は不安があると思いますが、あなたがこれまで所属していた小売業や流通業の「ひとつ手前」の業種なら、転職後もスムーズに再スタートを切れるはずです。
それは流通業界のかなめともいえる「ロジスティクス業界」です。
ロジスティクスには物流業、倉庫業を含めた一連の流通プロセスの中の裏方業務を担う一大産業ですが、一見すると目立たず大変なイメージを持たれるかもしれませんが、それは間違いです。
「現代の倉庫」は、未来工場のような最新ロボットが導入され、インターネットとがっちりつながり、そして儲けています。かつての倉庫は「在庫置き場」でしたが、いまの倉庫は「自ら稼ぎ出す力」を身に付けているのです。
日本のすべての商品は必ず倉庫を経由する。シンクタンクの野村総合研究所は「眠りから覚めた倉庫金融」と呼んでいます。
商品は金銭に換算できるので、倉庫に無数の商品があるということは、倉庫は金庫のようなものなのです。それで倉庫には「金融機能」がある、というのです。
また、工場でつくられた商品は、いったん倉庫に置かれ、そこから別の倉庫に移り、そして小売店に並びます。つまり倉庫は「物流の拠点」なのです。
商品をいかに効率的に消費者に届けられるかは、倉庫の運営にかかっているのです。ですので、世の中の物流は倉庫が握っている、という側面もあるのです。
まだあります。
最近の商品にはバーコードが付いていますし、QRコードが付いている製品も増えました。それらはすべてインターネットに接続すること可能です。
つまり星の数ほどある商品を、製造から販売まで追跡できる時代がすぐそこまでやってきているのです。
倉庫で国内すべての商品を管理できれば、倉庫には「商品保管機能」と「物流管理機能」に加えて「情報管理機能」が加わるのです。商品だけでなく「未来」もぎっしり詰まっている倉庫への転身はとても魅力的であるといえるでしょう。
国内の倉庫業者は、266社・団体があります。国土交通省が行ったアンケートでは、このうち133社・団体が回答し、その結果、黒字決算をしている企業・団体は118社と9割以上に達しました。
堅実な経営をする企業が多いことも、あなたには魅力的に映るのではないでしょうか。
倉庫の企業・団体の数
倉庫の種類 | 普通 | 冷蔵 | 貯蔵槽 | 鉄鋼専用 | 木材専用 | 合計 |
企業・団体数 | 133 | 92 | 21 | 16 | 4 | 266社・団体 |
倉庫の企業・団体の経営状況
年度 | 2005年度 |
~ |
2012年度 | 2013年度 | 2014年度 | 2015年度 |
黒字決算をした企業・団体の割合 | 88.5% | 90.9% | 91.6% | 90.0% | 90.2% |
参考資料:「眠りから覚めた倉庫金融、2011年4月号」(野村総合研究所)http://fis.nri.co.jp/ja-JP/publication/kinyu_itf/backnumber/2011/04/201104_5.html
参考資料:「平成27年度 倉庫事業経営指標(概況)」(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/common/001173176.pdf
3.ホームセンター業界(DIY業界)に転職
あなたにはドラッグストアでの業務経験があるですから、ホームセンターへの転職を検討してはいかがでしょうか。
あなたがホームセンターに転身するメリットは、「メイン商品が変わるだけで、ほとんどのサブ商品は同じ」である点です。
ドラッグストアのメイン商品はもちろん薬品です。ホームセンターのメイン商品はDIY関連です。しかし両店に並ぶそれ以外の商品は、健康食品、清涼飲料水、家庭菜園関連、洗剤、口腔ケア用品、介護用品、文具など、見事なくらいバッティングしています。
また、ドラッグストアがホームセンターの要素を取り込もうとしているように、ホームセンターにもドラッグストアの強みを導入したいと考えています。
だから、あなたが活躍できるのです。ドラッグストアの強みを、ホームセンターが「輸入」するためには、あなたの力が必要です。
ホームセンターにおけるDIYの位置付け
- 2016年(1月〜12月)ホームセンター売上高…2兆6,446億円
- 売上高対前年比…全店(新店含む)ベース100.8%、既存店ベース98.7%
- 商品分野別売上高構成比では「DIY素材・用品」が25.1%で第1位
ホームセンターのトレンド
- 店舗数と売場面積…前年同月比で増加。増加は調査開始以来、13年4カ月連続。
- 売上高…新店含む全店:前年同月比99.2%、既存店のみ:前年同月比で97.3%
- 前年同月比プラスになった商品分野…「園芸・エクステリア」や「ペット」など5分野
- 概況…概ね全国的に、平年と比べて気温が高かったことから、季節商品を中心に不調となった。一方、園芸用品等の外回り関連商品では動きが見られた。
参考資料:「日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会の公表データから」
参考資料:「月例調査 2016年12月度」(日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会)
人生の選択肢は常にあなた自身が持っている
ドラッグストア勤務のあなたの人生を変えるために、まず一番注目すべきことは「ドラッグストア以外の職場もあることを知る」ということです。
案外、外部と交流がないドラッグストア業界人は井の中の蛙になることが多いです。
自分の会社以外のことを全く知らないというケースも非常に多いようで、勇気を出して一歩外に踏み出せば大きな海が広がっているということを、改めて考えてみてはどうでしょうか。
兎に角、どうしても今の悩みが解決できなければ「別に辞めればいい」「辞めたっていいんだ」「自分は自由に人生を選択できるんだ」と割り切ること。
周囲からの目を気にしたり、あなたの人生と無関係な上司のメンツを立てて、自分の人生を後回しにしてします思考こそが「今の職場を辞められなくなってしまう」ことの最大原因であり、悩みをより深くして人生を間違えてしまう事につながります。
転職コーディネーターに無料相談することから始める
自分自身でまず何をしてよいかわからないならば、人材紹介会社に登録するのも手。
転職コーディネーター経由で他の業界、企業の内情を知ることができますし、冷静な第三者の目で、あなたのスキルと経験を活かせる新しい職場を用意してくれます。
また、辞めづらい今の職場で、(転職先を紹介してもらった後に)スムーズに次の職場に移動するための方法やタイミングなどもしっかり教えてくれますよ。
いきなり仕事を辞めたりはせず、まずはじっくり転職エージェントと無料のアポイントを取って、今後の動き方を相談しつつ、あなたの希望に沿った新天地候補をじっくりと紹介してもらうべきでしょう。