
野村 龍一

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未払い賃金を国に立て替えてもらえる方法があります
記事の目次
給与未払いのままでいきなりの会社倒産!さあどうする?
通常、会社は事前に社員に対して「いついつに倒産しますよ」という事前通告をしてくれるような優しいことは致しません。会社が倒産すれば債権者が社内に押し掛けて修羅場となりますので、弁護士の指導のもと秘密裏に倒産処理を進めるのが一般的です。
したがって、社員や取引先から見れば「まるで突然死」のように見える会社の最後も、実は資金繰りを直接に処理している企業経営者からすれば、予定調和のように「Xデー」がいつ訪れるのかは、相当事前に把握できているのです。
倒産時に未払い賃金が発生している場合、国が企業に代わって立て替えてくれるケースがある。
当然、未払い給与は会社から支払ってもらうのが筋でもあり、法的にも社外債権者よりも労働者の賃金(債権)の方が強いのはよく知られた話ではあります。
しかし、いくら文句を言おうが、金庫にも銀行にも存在しないお金を会社が支払うことはできません(だからこそ倒産に至ったわけです)。現実的には未払い賃金を回収できないまま、時がだらだらと過ぎていくケースが多くなります。
その場合には、条件があるものの、退職者に一定の範囲の賃金を国が(倒産企業に代替わりして)支払ってくれる立替払制度があることを知っておきましょう。
国による未払い給与立替払いの要件
- 労災保険の適業事業であること。あなたが1年以上事業活動を行った企業における労働者であること。
- あなたが次のいずれかの倒産により退職した労働者であること。
- 破産手続き開始の決定を受けた
- 特別清算開始の命令を受けた
- 法人整理開始の命令を受けた
- 民事再生手続き開始の決定を受けた
- 会社更生手続き開始の決定をうけた
- 中小企業事業主(※)が労働者賃金の支払いが不可能な状態になり、労働基準監督署署長がその認定をした
- あなたが倒産した日の6か月前の日付から2年以内に退職した労働者であり、未払い賃金が存在していること。
※法律で定める「中小企業」とは、A「資本金3億円(卸売業は1億円、小売業・サービス業は5000万円)以下」、または、B「労働者が300人(卸売業とサービス業は100人、小売業は50人)以下」のどちらかに該当する企業のことです。
未払い賃金立て替え金額と上限
立替金にはあなたの年齢を基準に上限が設定されています。年齢は退職日時点での年齢となります。また2万円未満の未払い賃金に関しては、支払を受けることはできませんので注意してください。
年齢(退職日起算) | 立替払いの上限金額 | 未払い賃金総額の限度額 |
30歳未満 | 88万円 | 110万円 |
30歳以上45歳未満 | 176万円 | 220万円 |
45歳以上 | 296万円 | 370万円 |
未払い賃金の立替を請求する
先の要件にてふれたように、破産申し立て日から6か月前の日付より2年以内に請求を行わなければなりません。立替金の請求手続きは下記のように行います。
1.未払い賃金の立替払い請求書を入手
労働基準監督署にて書面(未払い賃金の立替請求書)を入手し、破産宣言の裁判所などが発行する証明書と一緒に、労働者健康福祉機構に対して請求します。
もしも裁判所から証明書を発行してもらえない場合には、所轄の労働基準監督署長に「賃金支払い不可の認定」をしてもらう必要がありますので覚えておいてください。
2.労働基準監督署長に「認定申請書」を提出
会社が倒産をして、未払い賃金を支払う能力が既にないことについて「倒産の認定」を労働基準監督署長に行ってもらう必要があります(既に他の労働者が労働基準監督署に認定をしてもらっている場合はこの作業は不要です)。
電子申請で「倒産の認定」を請求することも可能です。
倒産にはいろいろな種類がある
一言で倒産といっても、先にも触れたように法律上では「破産」「特別清算」「整理」「民事再生」など様々な形態の種類があります。
どのケースも従業員にとっては「突然、仕事場が奪われる」ということには変わりありませんが、未払い賃金がある場合には、まず自分がどのような対応ができるかを、倒産の種類などの現状について冷静に把握する事から、状況判断するようにします。
参考までに、倒産の分類を簡単に整理しておきます。
1.銀行取引停止処分
企業が債務者として降り出した手形が、期日到来しても(債権者が)決済できず、不渡りとなってしまった場合。そしてその状態が6か月以内に2回発生した場合は、銀行取引停止処分となります。
簡単に言うと、6か月間の間に2回支払手形を会社が落とすことができなかった(銀行口座に手形を通じて「●月●日に支払います」と約束したお金を入金できなかった)状態を指します。
この場合は、銀行取引停止処分から2年間、同一手形交換所に加盟している全金融機関との手形決済(当座口座を通じた取引)ができなくなりますし、金融機関からの借入も事実上不可能になりますので、「倒産」の1種として考えられています。
2.会社更生
債権者との話し合いの末、会社が事業再建の見込みがあるとされた場合、債務額を減免してもらったり、支払期限を延期してもらったりすることで、企業を存続させる処置となります。従って、従業員が全員解雇にはならず、雇用継続がなされる可能性も大いにあります。
会社の財産は管財人が管理をすることとなり、企業の更生計画案を作成、債権者を含めた関係者集会の賛否と裁判所の認可によって会社更生が認められることとなります。
3.民事再生
平成12年4月の民事再生法施行により、企業経営者が経営権を失わないままで、債権額の減額や支払い繰り延べなどを行い、再生計画書に基づき、事業存続を図ることができるようになりました(「会社更生」の場合、事業経営者はその権利のほとんどが逸失しますが、民事再生の場合はその欠点が緩和されています)。より中小企業向けの企業再建方法と考えてよいでyそう。
4.破産
原則として事業存続は考えず、法人の営業は廃止されて、企業そのものは清算される方向に向かいます。残った法人の財産は、債権者順位に応じて分与されることとなります。
債務者(通常は企業経営者)の申し立てにより、裁判所が「破産手続き開始決定」を出すことで、はじめて破産となります。
5.特別清算
破産を防ぐために、清算中の会社に対して、債権者精算人や株主が申し立てる裁判上の手続きのことです。
6.整理
上記のような法的解決法ではなく、債権者と債務者(企業経営者)が直接話し合うことで、具体的な方向性(清算か事業継続か、債権額の減免か維持か、支払い猶予について等)を決めることをいいます。