
北野筆太

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記事の目次
新人つぶしは当たり前の美容師業界。カリスマまで駆け上がれる美容師アシスタントはほんの一握り。
地元の美容専門学校を卒業したサエコさん(仮名、22歳)は、「有名芸能人の髪を切るまで絶対に帰省しない」と決心し、東京に出てきました。
南青山の大型美容室に入社し、まずはアシスタントになりました。ところが「アシスタント美容師は、スタイリスト美容師のアシスタント」と思っていたサエコさんは、仕事内容を聞いて驚きました。
新人アシスタントは、先輩アシスタント美容師のアシスタントをさせられるのです。やることといえば、パシリです。お客さんの髪を触ることはもちろんのこと、スタイリスト美容師と会話することもできませんでした。
田舎の美容院しか知らなかったサエコさんは、最先端美容ビジネスのガチガチの縦社会にへこみ、一気にホームシックにかかりました。
母親に電話をして、慰められて大泣きして、すっきりして翌朝出勤する――という日々が続きました。
それからも修行生活は苦難の連続で、何度も挫折しそうになりました。サエコさんを支えたのは、母親の言葉だけではありません。高校時代にいじめに遭ったことを思い出して「ここで地元に戻ったらあいつらにまた笑われる」と自らを奮起させました。
それから1年半が経過し、「なんとか続けられるかも」と思った矢先に、「事件」が起きました。
一般の社会人にとっては当たり前のことなのですが、サエコさんには「事件」と呼ぶしかない出来事でした。人事異動です。
系列の横浜の美容室に移ることになったのです。仕事が評価されての栄転ではなく、店長には「あっちのアシが辞めたらから、穴埋めなんだ」と言われました。
人事異動はエリートサラリーパーソンでも少なからぬショックを受けます。それを単身で上京してきた20代前半の女性が、ようやく仕事と生活に慣れたころに人生初の転地命令を受けたのです。
しかも、滅多に会話を交わすことがない店長から冷たい口調で言われたので、サエコさんには「まったく仕事を覚えないお前なんか、うちには要らねえんだよ」と聞こえました。
新しい店に着任すると、サエコさんの予想通り、最底辺のアシスタントから再スタートです。しかも叱られる言葉に「ここが最初の店じゃないんだからさ」がくっつくようになりました。
毎日、「私には、東京の美容師なんて無理なのかな」と思ったり、「芸能人の髪を切りたいなんて言っていた自分が恥ずかしい」と悔やんだりしているうちに、ある朝、目覚ましが鳴っても布団から出ることができませんでした。
出勤時間になっても起き上がることができず、スマホで店に電話をして「具合が悪いので休ませてください」と言うことすらできませんでした。
人生初の無断欠勤です。
しかも、夕方になっても美容室から電話はありませんでした。
サエコさんはその夜、「私なんて誰も必要としていないんだ。死んじゃいたい」とつぶやきました。いじめに遭っていたころ以来の言葉です。
あなたがもしサエコさんと同じ年代の美容師なら、このつらさを理解してあげられるでしょう。もしくは「私の方がもっとつらい」と感じるでしょうか。
あなたがもし、最近スタイリストに昇格した美容師なら、「そこを乗り越えればもう1段上のステージに立てるよ」と思うでしょうか。
いずれにしましても、もう少しサエコさんの体験談に耳を傾けてみてください。
美容師アシスタント業界ならではの、就業中の不満、大変さ、辛さと悩み

鉄壁のタテ社会、睡眠時間を削る競争社会。体を壊しても働くのは「有名人の髪を切るという夢があるから」
辞めたい理由と悩み1:朝は7時前に出勤し19時まで仕事をした後は23時まで技術レッスン…心身共に衰弱。
サエコさんは、南青山の美容室に入社した当時を振り返って「これが地獄なんだって思いました。学生時代の嫌なことなんて、本当にちょろかったと思いました。人って、おカネと仕事がからむと、ここまで意地悪になるんだって実感しましたね」と言いました。
最初にダメージを受けたのは、勤務時間の長さでした。店長の出勤時間は午前9時で、一般スタイリスト美容師は8時半、アシスタントリーダーは7時45分で、サエコさんたちアシスタント美容師は6時50分には店に到着しなければなりませんでした。
最初の客が入店する午前10時までの3時間10分、アシスタントたちは店内を走り回ります。もうその時点でへとへとです。
ところが、ここからが本番なのです。忙しい日だと、そこから閉店の19時まで、昼食はもちろんのこと、トイレに行くことすらできません。
サエコさんの先輩の多くは、膀胱炎を経験していました。
まだ終わりません。
南青山を目指してやってくる美容師のヒヨコたちは、激しい競争に勝ち残ろうと閉店後にレッスンを行います。サエコさんも気合十分でしたので、レッスンに参加しました。そうなると22時、23時になります。
「気が付いたら、体から出るべきものが、ピタッと止まっていました。便秘になるし、生理が来ないし。体重は入社から半年で7kgも減りました」
激務に体が悲鳴を上げていました。
美容室業界を取り巻く現状
- ネット化とIT化の波…ネット予約、ブログやSNSでの情報発信は「当たり前」の時代に。他店との差別化には、ネット戦略専従社員を置いたり、コンサルを受ける必要がある。
- 求人戦略と人材不足…特に新人教育はかつてのスパルタ式からの脱却が必要。「2年でスタイリスト美容師になれるカリキュラムを実施」といったうたい文句が必要。
- 進む業界の統廃合…後継者のいない美容院を、大手チェーンが買収する動きは今後更に加速する。
- 格安カットチェーンとの生存戦争…富裕層向けのラグジュアリー美容室と、1000円カットの格安美容室の2極化が進む。顧客も「ラグジュアリー系に通いつつ、格安店でカットを整える」といったように使い分けている。
参考資料
辞めたい理由と悩み2:ワンマン店長は自分が気に入らないスタッフに「仕事を与えない」という私怨で罰を与える。
大手美容室に入社してから1年半が経過し、サエコさんは南青山店から、系列の横浜市の店舗に異動になりました。少しは上級な仕事が任されるかと期待していましたが、最底辺暮らしが続き、とうとう無断欠勤をするまで追い込まれました。
横浜店の店長の説得に応じ、出勤を再開しましたが、それから半年後に退職しました。入社からわずか2年で、美容師の道を断念したのでした。サエコさんが退職を決意したのは、店長から「仕事を与えない」という罰を受けたからです。
サエコさんが何気なく発した一言が、先輩アシスタントの怒りに触れ、その先輩は店長に「南青山店から来た子(サエコさんのこと)、生意気で使いづらいです」と告げ口したのでした。
店長はサエコさんを呼び出して、事実確認を行いました。言ったのは事実ですので、サエコさんは「その通りですけど」と答えました。するとその答え方が店長の逆鱗に触れたのでした。
「『けど』ってなんだよ。お前、俺にまで逆らう気か。鬱になって働けないところを、俺が助けてやったんだろうが」
サエコさんは体がぶるぶる震え、一言も発せられませんでした。謝罪の言葉が出てこないことに、店長の怒りが膨れ上がり、「お前にはもう仕事をさせない!」と宣言して部屋を出ていってしまいました。
仕事を与えない罰は、この店長の「いつもの手」でした。
大手格安美容室の市場戦略
- FaSS…コンセプトは「思い立ったら予約なくフラッと」。店舗入口に自動受付機を設置し、客は番号札を受け取る。順番が来たらメールが届く。カットとスタイリングで20分、2000円(税別)。有楽町、三軒茶屋、新宿などに10店舗を展開。
- EARTH HAIR&MKE…カット、シャンプー、ブローで3000円。運営会社の株式会社アースホールディングスは、全国83社と提携し、従業員数は約3000人にのぼる。
- Rino HAIR…カットとブローで1900円。横浜、長野に計3店舗を展開。
参考資料


辞めたい理由と悩み3:美容師アシスタントを取り巻くブラック環境の改善見込みはない…ならば職場から去るしかない。
「仕事を与えない」罰は、バブル崩壊後の大不況時代の日本で、多くの企業がリストラ策として採用していた極悪非道の仕打ちです。
会議室に1人残され、何もさせない、だけど帰宅もさせない、ただこれだけなのですが、大の大人でも数カ月で音を上げて退職届を書くといいます。パワハラよりも強いストレスを与えるという説もあります。
それを21世紀のファッションの最先端基地が真似をしていたのです。
翌朝、サエコさんが恐る恐る出勤すると、誰も口を聞いてくれません。いつもの準備作業に取り掛かろうとすると、アシスタントリーダーから「あなたには何もさせるなってスタイリストさんから言われているんだけど」と言われました。
営業時間になっても、サエコさんは店舗の中で立っているだけです。みんなが必死に働いているのに、ただ見ているだけです。
事情を知らなかった若いアシスタントがサエコさんに用事を頼んだら、それを見ていたスタイリストが「その子は使わないで!」と激しく注意しました。
客もその異変に気が付き始めます。客がスタイリストに、サエコさんのことについて質問していることが、サエコさんにも分かりました。
この店では「仕事を与えない」罰はこれが初めてでなかったらしく、客が「あっそう、また店長が…」と言ったのが、かすかにサエコさんにも聞こえました。
さらに、先月入社したばかりの新人アシスタントが、シャンプーを任されていました。アシスタントリーダーが、サエコさんには見せたことがないような笑顔を交えながら、懇切丁寧に指導しているのでした。
シャンプーは2年近い経歴があるサエコさんでも、本当に店が混雑しているときしかやらせてもらえない仕事です。完全にサエコさんへのあてつけでした。
サエコさんは2時間頑張りました。しかし午後0時、頭がくらくらして、目の前が真っ暗になり、その場に座り込んで大声で泣きました。
店内は静まり返り、しばらくはサエコさんの嗚咽(おえつ)だけが聞こえます。そこにベテランスタイリストがサエコさんのところに近寄って、肩を抱いて立たせて、控室に連れて行きました。
この店を退職したサエコさんは、東京のアパートを解約し、実家に戻りました。コンビニでアルバイトをして、家には毎月6万円の「家賃と食事代」を渡しています。
サエコさんが「死ぬほど会いたくなかった」高校時代の同級生が、サエコさんが勤めるコンビニに現れました。サエコさんをいじめた張本人です。しかしサエコさんはニッコリ笑って「いらっしゃいませ。どうも、久しぶり」と挨拶できました。
サエコさんはインタビューの最後に、こんなことを言いました。
「アシスタントリーダーがこれ見よがしに新人にシャンプー指導をしていたときのつくり笑顔を思い出すと、私も簡単に口角を上げられるようになったんです。両親やコンビニの店長は、性格が明るくなったねとか、笑顔がいいねって言うんですが、違うんです。沈みきった心を隠すために、明るく振る舞うことができるようになったんです。だからもう少ししたら、地元の美容院に履歴書を送ってみようかなって思っています」
美容師の厳しい世界を生き抜いているあなたも、もしかしたらつくり笑顔の達人なのではないでしょうか。鏡に映る客の顔を見て「似合わないなあ」と思っていても、「すっごくお似合いですね」と平気に言えるようになっているのではないでしょうか。
美容師の中には「それが成長」と考える人もいますし、自己嫌悪する人もいます。
しかしそれでも、あなたちは毎朝、戦場に向かう兵士のように、「おっしゃあ、きょうも稼ぐぞ!」と気合を入れて自宅を出るのではないでしょうか。
美容師の働く環境は今後も改善しない
- 休眠美容師60万人が参入か…美容師の資格を持ちながらその仕事に就いていない人は約60万人。なんと美容師として働いている人の数45万人の1.3倍にものぼる。休眠美容師の復職で人手不足が解消し、残業が減るかも。
- 環境改善がないと人材が集まらない…休眠美容師が休眠しているのは、子育てや家族の介護など「家庭の事情」によるところが大きい。各美容室は、短時間労働や週1日勤務などを導入することで、休眠美容師を呼び込む。これが正社員美容師の働く環境にも良い影響を及ぼす可能性がある。
- 大規模化に欠かせない人材定着率アップ…美容室業界は生き残りをかけた再編が進む。中小企業から大企業に脱皮するときに欠かせないのが、既存スタッフの定着率の向上。銀行は、大手美容室チェーンへの融資を検討する際、「重要業績評価指標」としてスタッフの定着率に着目している。労働時間、給与、待遇、独立支援制度などを改善できない美容室は淘汰されるか。
参考資料
この先もつらい現実に耐えながら生きていかなけばならないのでしょうか?
いいえ、「美容師アシスタントの人生を変える解法」はきちんと存在していますので、それを今からご説明いたします。
あなたの「会社を辞めたくなる悩み」への対応策
1.コンペティションに勝ち抜き、美容師の道を究める
仕事でつらい目に遭って、立ち直れないくらい凹んだときに取るべき手段は2つしかりません。別の道を選ぶか、仕事で仕返しをするか、です。
もし後者、すなわち仕事で見返してやるという気持ちがわいてきたあなたには、コンペに挑戦することをおすすめします。例えば「JBTPコンペティション」には、学生の部5種目と一般美容師の部5種目があります。
- アップスタイリング競技(学生の部)
- アップスタイリング競技(一般美容師)
- カット&スタイリング競技(学生の部・一般美容師)
- メイクマスク競技(学生の部・一般美容師)
- ネイル競技(学生の部・一般美容師)
- ワインディング競技(学生の部)
ここで入賞すればホームページに名前が掲載されますので、カリスマ美容師に一歩近付きます。
このように目に見える形で実績を積むことができる仕事は、あまりありません。例えば営業や経理の仕事には、コンペなどというものは存在しません。
美容師は、実力を試すチャンスがたくさん転がっている仕事なのです。若い人の「悔しい思い」はエネルギーになりますので、「有名人の髪をカットしたい」という思いを持ち続け、技術の向上に努めてください。
2.独立開業を決心して、自分自身の力で生きる
小さな美容サロンを開きたい ― その目標を、かなわぬ夢と思わないでください。
美容室だったテナントに居抜きで借りて、リフォームで壁に漆喰を塗ってもらい、西洋の小物雑貨を装飾品として置いて、1日5名ほどのカットやカラーを施す。
東京のリッチ層向けの美容室とも、田舎のパーマ店とも違う、隠れ家的な美容室は、あなたの憧れの城のはずです。
いまの職場の先輩たちの厳しい叱責は、一言1000円の価値があると思ってください。
あなたが独り立ちした瞬間、あなたは、あんなに嫌っていた先輩たちの言葉を思い出し、「そうそう、こういうふうにやらなきゃならないんだった」と感謝することでしょう。
独り立ちを経て独立という流れになりますが、自分で店を持てばカットのことだけでなく経営やスタッフ管理もしなければなりません。
そのとき、誰も教えてくれません。
だからいま、1日10回、先輩アシスタントやスタイリストや店長やオーナーたちから叱られたら「1万円もらった」と思ってください。
月25日勤務であれば、給料の他に25万円もらっているようなものです。説教はあなたの財産です。
先輩たちは、言葉遣いが荒いだけで、言っていることは間違っていないはずです。あなたも、図星を突かれたから悔しくて泣いたのでしょう。
いまの苦しみは5年後の笑顔の養分です。
3.美容師アシスタントを辞めて他業界に転職する
業界の再編、小規模美容室の閉鎖、格安美容室の出現、価格破壊…経済の専門家たちは、美容室業界は今後さらに厳しい状況に置かれると予測しています。一見するととても華やかな世界なのですが、スポットライトが当たるのはほんの一握りの才覚あふれる美容師だけです。
強い者だけが生き残り、そうでない美容師は苦境に立たされるでしょう。実力世界であり競争社会でもある美容室業界は、勝った者しか笑えないのです。
そんな業界に耐えかねたら、心を壊される前に辞めてしまいましょう。
美容師の厳しい修行に耐えてきたあなたなら、他の業界でも十分通用します。美容の世界をまっしぐらに突き進んできたあなたには、この世界から抜けることは「敗け」と感じるかもしれませんが、そうではありません。
周囲を見渡してみてください、美容室だけが「美」を扱っているわけではないでしょう。女性を美しく変身させる仕事は、この世の中にたくさんあるのです。
他業種への転職…不安はよくわかります。
しかし、うまく美容師アシスタント勤務を抜け出して、人生の立て直しに成功した人の多くは、美容師アシスタント以外への道を選択した人々なのです。
この件について、以下でより詳しく説明いたします。
美容師アシスタントの辞め方とタイミング
1:先輩たちは「突然の退職」にショックを受ける。軽々しく「辞めたい」と職場で言わないこと。
勤務先の美容室を退職すると決めても、すんなり辞められるかどうか分かりません。多くの美容師たちが、退職のときに嫌な思いをさせられています。
そうならないためには、事前の準備が必要です。
まず、「もう絶対に辞める」と決心できるまで、辞めたい気持ちを持っていることを、美容室内の誰にも言わないでください。どんなに信用している人に相談しても、「辞めたがっている」という噂は瞬時に伝わると覚悟しておいてください。
同年代の同僚美容師と飲みに行ったときがとても危険です。お酒の力で気が大きくなり、愚痴が強くなり、「いつだって辞めてやる」と言ってしまいがちです。
まだ辞める覚悟が固まっていないのに、スタッフ内に「辞めたがっている」という噂が流れたら大変なことになります。
先輩や店長たちは、あなたを成長させようと厳しい指導をしています。あなたにとっては単なるパワハラでも、先輩や店長たちは自分が努力して手に入れたスキルを、あなたに授けようとしているのです。
なので、後ろ足で泥をかけるように退職しようとしている後輩に、技術指導などしたくなくなります。
ということは、後日あなたが、退職を撤回して「やっぱりこの店で頑張りたい」と思っても、もうかつてのような師弟関係には戻れません。
「辞めるつもりはありません、また仕事を教えてください」と頭を下げても、先輩たちは「一度辞めたいと思った子は、必ず再び辞める辞めると騒ぎ出す」と思っているので許してくれないでしょう。とにかく、退職の決意が固まるまで、軽々しく「タイショク」の5文字を口にしないことです。

2:もしもスカウトや引き抜きにあったら…そのことは絶対に人に言わないこと。軽い口は身を滅ぼします。
美容師の世界は、スカウトや引き抜きが頻繁に起きています。ある美容室から別の美容室に移ることで、収入を上げていく道を選ぶ美容師もいます。
ですので、あなたにもスカウトの声がかかるかもしれません。
もし破格の条件で引き抜きを打診されたら、ぜひチャレンジしてみてください。しかしそのときも「他言しない」ことに注意してください。
引き抜きで退職することが現在の勤務先にばれたら、大騒ぎになるでしょう。店長どころか、オーナーが飛んできて、あなたを引き留めにかかります。
「いくらでスカウトされたんだ。うちはその給料の1.2倍出す。だから残ってほしい。君がいなくなったら店が回らない」
そんな甘い言葉に踊らされないでください。
もし本当にそれだけ必要とされているのであれば、いままで不当に安い給料で雇っていたことになります。それは誠実な対応ではありません。なので、そんなところは辞めた方がいいでしょう。
また、本当はそこまで実力を認めていないけど、他店が有利になるのが嫌だからあなたを引き留めるのであれば、「1.2倍の給料」は単なる妨害策であり、これも誠実な経営者のやることとはいえません。
そして、給料で引き留められてその店に残ったとしても、良いことはありません。同僚には「あの子、退職をちらつかせて給料アップをせがんだらしいよ」と思われるはずです。
そんな職場環境では、まともな仕事はできません。よって、やはり退職に追い込まれるのです。
しかしその時点でスカウトしてくれた人に連絡を取っても、時すでに遅しです。スカウトはあんたに振られたわけですから、あなたのことを憎く思っているはずです。
それに、「行く」と言ったり、「行けなくなりました」と言ったり、さらにまた「やっぱり行きます」と言うような人は、社会人として信用されません。
このような結果にならないように、スカウトの声がかかったことは、絶対に誰にも言わないでください。身内にも教えない方がいいでしょう。
すべての状況が整い、退職を決意し、無事辞めることができ、新しい美容室で活躍できたときに初めて「実は私、いまのオーナーにスカウトされたお陰でここまで成長できたんです」と言いましょう。
美容室の勤務経験が優遇される、より就労条件のよい「おすすめ転職先」の例
1.ウェディングプランナーをはじめとする、ブライダル業界に転職する
美容師の仕事に疲弊したあなたにおすすめしたい業界は、ブライダルです。それはあなたの中にまだ「キレイな女性をつくりたい」という気持ちが残っていると推測するからです。
ブライダルに関わる仕事は多岐にわたります。
ウエディングプランナーは、素敵な挙式と思い出に残る披露宴を提案する仕事です。結婚式は舞台演劇に例えられます。主役がいて、脇役がいて、観客がいて、監督がいて、プロデューサーがいて、さらに、舞台、衣装、小道具、大道具、小物が必要です。
これらを統括するのが、ウエディングプランナーです。花嫁の衣装から披露宴の料理、イベントのスケジュール、引き出物などを、新郎新婦の意向を汲みながら、限られた予算内に納める提案をします。
またマリッジブルーに襲われた新婦のカウンセリングを行う優秀なプランナーもいます。
ドレスコーディネーターは、ブライダル業界でも人気の仕事です。新婦用のウエディングドレスは、どれもステキなものばかりですが、しかし、どれでも新婦に似合うわけではありません。
また、ヘアスタイルやアクセサリーも、新婦の容姿とドレスに合わせてコーディネートする必要があります。この仕事は、女性の髪を見続けてきたあなたにうってつけではないでしょうか。
そのほかにもブライダルには、美容師経験があるあなたが「できそう」な仕事や、あなたが「やりたい」と思える仕事がたくさんあります。
ブライダル業界の現状
- 2015年度の市場規模は2兆5480億円で、前年比約1%減
- 披露宴予算、ジュエリー、新婚旅行など、関連予算も抑制傾向
- 「なし婚」や「少人数婚」といった小規模パーティーの需要は増加
- 一方で、招待客1人当たりにかける費用は増加傾向に。2000年の3万9千円/人から2016年は6万8千円へと1.7倍になった。
参考資料
2.高級ブランドショップの店員に転職する
「美」の世界と同じ匂いがする「高級ブランド」への転職はいかがでしょうか。現在は募集が出ていませんが、かつて転職支援サイト大手「DODA」にこんな求人票が出ました。
「LVMHグループの『LVMHウォッチ・ジュエリージャパン株式会社』がセールスアドミニストレーションスタッフを募集」
LVMHは、ルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオール、ブルガリなどを傘下に持つ、世界最大級の高級ブランドグループです。「LVMHウォッチ・ジュエリージャパン株式会社」という会社は、このLVMHグループの一員で、高級時計や宝飾を扱っています。
業務内容は、取引先との連絡や営業支援で、月給は25万円以上で、賞与は年2回、完全週休2日制で、年間休日は120日となっています。
高級ブランドは、いつも求人票を出しているわけではありませんし、募集を出してもすぐに大人数が集まるので激戦といえます。
しかし、DODAなどを小まめにチェックすることで、運命的な出会いを見逃さずに済むでしょう。サイトに登録しておくと、無料でコンサルティングを受けることも可能です。
参考資料
3.激戦区の大都市をあえて避け、ゆったりと仕事することができる地方の美容室に転職する
芸能人が来るような都会の美容室と、地方都市の駅前の美容室と、地方の住宅街の美容室では、同じ「美容室」を名乗っていますが、仕事内容は全然違います。
この3つはほとんど別業界のようなものです。
ですので、都会の荒波にずたずたにされた人でも、別の土地の美容室に転職すれば、まったく違った世界を体験できます。
転職支援サイト大手「DODA」には、地方の美容室の求人票が多数掲載されています。
地元に帰るもよし、札幌や長野といった住みやすいマチに新天地を求めるもよし、です。心の平穏を取り戻すために、引っ越しはかなり効果的です。
長野市の美容室フランチャイズチェーン | 美容室の経営、チェーン展開、事務代行 | 年収200万~300万円 | 経営コンサルティングも実施 |
札幌市に28店を展開する美容室チェーン | 店長候補のスタイリスト美容師 | 年収280万~450万円 | 海外研修、カリスマ美容師との交流会など研修多 |
岡山市の美容スタジオ | 着付け、ヘアメイク、ブライダル美容、成人式 | 年収300万~400万円 | そのほか写真スタジオも併設 |
参考資料
「美容関連の求人票」(DODA)より
人生の選択肢は常にあなた自身が持っている
美容師アシスタント勤務のあなたの人生を変えるために、まず一番注目すべきことは「美容師業界以外の職場もあることを知る」ということです。
案外、外部と交流がない美容師業界人は井の中の蛙になることが多いです。
自分の会社以外のことを全く知らないというケースも非常に多いようで、勇気を出して一歩外に踏み出せば大きな海が広がっているということを、改めて考えてみてはどうでしょうか。
兎に角、どうしても今の悩みが解決できなければ「別に辞めればいい」「辞めたっていいんだ」「自分は自由に人生を選択できるんだ」と割り切ること。
周囲からの目を気にしたり、あなたの人生と無関係な上司のメンツを立てて、自分の人生を後回しにしてします思考こそが「今の職場を辞められなくなってしまう」ことの最大原因であり、悩みをより深くして人生を間違えてしまう事につながります。
転職コーディネーターに無料相談することから始める
自分自身でまず何をしてよいかわからないならば、人材紹介会社に登録するのも手。
転職コーディネーター経由で他の業界、企業の内情を知ることができますし、冷静な第三者の目で、あなたのスキルと経験を活かせる新しい職場を用意してくれます。
また、辞めづらい今の職場で、(転職先を紹介してもらった後に)スムーズに次の職場に移動するための方法やタイミングなどもしっかり教えてくれますよ。
いきなり仕事を辞めたりはせず、まずはじっくり転職エージェントと無料のアポイントを取って、今後の動き方を相談しつつ、あなたの希望に沿った新天地候補をじっくりと紹介してもらうべきでしょう。