
北野筆太

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記事の目次
インターナショナルスクールの事務職は「汚仕事(おしごと)」と内々で呼ばれる3つの仕事と格闘する日々…。
インターナショナルスクール、通称インターは、日本に住むセレブ外国人たちの子供が通う「学校」です。なぜ学校に「」を付けているかというと、インターは、小学校や中学校といった学校教育法に規定された学校ではないからです。ですので、インターに通っても、日本の義務教育を受けたことにはなりません。
では、インターは「単なる学ぶ場所」かというと、そうでもありません。大学入試を受ける資格を得られるインターもありますし、都道府県知事の認可を受けている「各種学校」という位置づけのところもあります。各種学校とは、学校教育法において「学校教育に類する教育を行うもの」となっているので、各種学校になっているインターは「ちゃんとした学校」といえます。
そして、多くのインターに共通していえることは、
- 教育水準が高い
- ステータスがある
- 従来の高学歴とは違った迫力がある
という点です。
教育水準については、英語で授業が行われることでも、その高さが想像できます。さらに外資系企業の日本オフィスに勤める外国人の子弟が通うことから、ステータスもばっちりです。こうしたことからインターの卒業生は、中学受験→有名進学高校→東大・京大・早慶上智進学といった、従来の高学歴とは違った迫力ある学歴を持つことができます。
これだけ魅力が詰まった「学校」ですから、日本に住む日本人の親も、その子供をインターに通わせようとします。芸能人が子供をインターに通わせると、ちょっとしたネットニュースになるくらいです。
子供をインターナショナルスクールに通わせている芸能人
木村拓哉・工藤静香 夫妻 | 松山ケンイチ・小雪 夫妻 |
本木雅弘・内田也哉子 夫妻 | 葉加瀬太郎・高田万由子 夫妻 |
早見優 | 関根勤 |
藤本敏史(FUJIWARA)・木下優樹菜 夫妻 | 三船美佳 |
神田うの | 鈴木紗理奈 |
参考資料「gooランキング」

ならば、インターで働く人も、それなりにハイグレードなサラリーパーソンであると予想できそうです。しかしその予想は半分正解で、半分間違っています。
つまり、インターの「教員」たちの中には超が付くエリートもいて、彼らは高給で遇されています。しかし、インターの「事務職」の社員たちは、かなり過酷な労働を強いられているのです。そういった意味では、職場内格差が大きな労働環境といえるでしょう。
その過酷さについて、関東圏の老舗インターで事務職で働いていた橘誠子さん(仮名、35歳)は、次のように話しています。
「インターの事務職は3匹の鬼と闘わなければならないのです。わがままな子供たち、もっとわがままなその親、そして、さらにわがままな教員です」
あなたもインターの事務職なら、橘さんがいう3匹の鬼たちの傍若無人な振る舞いに辟易していることでしょう。
橘さんは耐えかねてインターを退職してしまいました。あなたは橘さんがこの業界から撤退したいきさつを知りたくないですか。
インターナショナルスクールを含む外国人学校の数と児童生徒数(文部科学省)
参考資料「外国人学校の現状について」(文部科学省)
インターナショナルスクール職員ならではの、就業中の不満、大変さ、辛さと悩み

学校運営、海外情勢の把握、セレブ対応、すべて難しい仕事なのに雑用を押し付けられる酷な職。
辞めたい理由と悩み1:「毎月が入学シーズン」という忙しさに加えて、外国人教員の税金対策もお手伝い。
橘さんが勤めていたインターナショナルスクールは、小学校から高校までありました。
先述したとおり、法律上の「小学校から高校まで」ではありませんが、ただ、日本人の子供でも、ここを卒業すれば一部の大学受験の資格を得ることもできます。
このインターの児童・生徒たちの8割は外国人セレブの子弟で、その父兄の職業は、アメリカやイギリスなど先進国の駐日大使館職員、外国に本社を置く保険会社や法律事務所の社員などです。
そして2割が、両親を日本人に持つ日本人の子供たちです。
橘さんの仕事は、多岐にわたります。
最もボリュームがある仕事は、児童・生徒の受け入れです。日本の学校は秋ごろまでに学校説明会を終わらせて、1~2月に試験を行い、4月に入学というスケジュールですが、インターの入学方法は、多くが転校です。ですので、学校説明会・入試・入学手続きは「毎月の業務」になっているのです。
入試は、筆記試験よりも面接を重視します。特に親の面接が入学の可否のカギを握ります。英語とスペイン語ができた橘さんは、このインターへの入社当初から入試面接に立ち会って通訳を務めました。そしてすぐに1人で面接を行うようになりました。大抜擢といってもいいでしょう。
「まあ抜擢といえば抜擢かもしれませんが、でも語学ができれば誰でもできるような業務内容でしたね。要するに、やることは親の身辺調査です。大使館職員であれば、本当にそこに在籍しているかどうかを確かめたり、企業社員であれば就労できる在留資格を保有しているかどうかを調べます。重要なのは、授業料をきちんと支払ってもらえるか、ということなんです。子供の性格なんて、1時間程度の面接では分かりませんからね。それは日本の子供も海外の子供も同じですよ」
橘さんの業務には「特別な経理」の仕事もありました。学校運営のための経理業務は、別に経理担当者がいたのですが、橘さんは外国人教員たちの「節税」を手助けさせられていました。
「外国人教員は高給取りなので、普通に給料を支払うと課せられる税金がものすごい額になってしまい、彼らの大きな不満になります。そこで私たちが、違法にならないぎりぎりのラインを調べて、支払方法や支払時期や複数の銀行口座を使い分けて1円でも多い手取り額を確保してあげるんです。でもこの仕事は、インターでの仕事の中で一番好きだったかも。各国の税法や、日本の税務署の体質を学ぶことができました」
逆に、橘さんが嫌だった仕事は、ずばり「雑務」です。
教材や遊具や事務機器の購入とそれらの在庫管理は、いわゆる「誰がやってもできる」仕事です。
「残業が多い職場だったんですが、私にしかできない仕事で残業になるなら、仕方がないなと思えました。でも、誰でもできる仕事なら、バイトでもパートでも雇って、その人たちにやらせてよ、って思いましたね」
いくら語学ができようと、各国の税法に詳しくなろうと、事務職はヒエラルキーの最底辺に置かれていたのです。
橘さんは、職員の採用はもちろんのこと、幹部候補のヘッドハンティング業務にも携わったことがあります。つまり、インターの事務職は、「高度な事務をこなせる専門職」並みの仕事が与えられるのに、待遇は「単なる雑務係」なのです。
この労働環境の悪さも、橘さんがインターを退職した理由のひとつでしたが、しかしこれはほんの「序の口」にすぎません。
それでは、橘さんが遭遇した「3匹の鬼」についてみてみましょう。
参考資料「子どもをインターナショナルスクールに通わせた場合、保護者は就学義務を履行したことになるのでしょうか」(文部科学省)
参考資料「インターナショナルスクールについて教えて下さい」(YOMIURI ONLINE、発言小町)

辞めたい理由と悩み2:大人を完全になめきっている子供は手に負えない――これは万国共通の真理である。
学校の教師たちは、「子供たちは天使と悪魔の性質を持っている」と言います。あどけなさや無邪気な言動に触れると、「教師という仕事を選択して良かった」と感じますが、人格の形成とともに底意地の悪さが出てきて、「このクソ餓鬼が」と思わずにいられなくなります。
しかしインターナショナルスクールの事務職だった橘誠子さん(仮名、35歳)は、「教員は天使に出逢えるだけましです。子供たちは事務職の地位の低さを知っていますから、私たちには悪魔の面しか見せませんでした」と振り返ります。
もちろん、インターの子供たちが「先天的」に事務職を軽んじるわけではありません。教員たちが事務職を自分のアシスタントのようにコキ使う風景を見ているうちに、また、親たちが事務職の悪口を言っているのを聞いているうちに、子供たちの事務職への態度はどんどん横柄になっていくのでした。
最近では、日本の学校でも体罰は厳禁になっていますが、インターでは子供の頭を軽くなでただけで職員会議にかけられることもあります。特にアメリカ人は、母国で幼児虐待や児童ポルノが社会問題化しているだけに、日本の学校では当たり前のスキンシップでも、大ごとにしがちなのだそうです。
つまり、インターの事務職員は、あたかも王室の王子様お姫様に仕えるように、児童・生徒たちを扱わなければならないのです。
子供たちが校内に居残るということは、インター職員たちの残業を意味します。日本の中学校や高校は、当然のように担任教師がボランティアで部活を担当しますが、橘さんが勤めていたインターではそのような制度はありませんでした。
そのインターにも部活はありましたが、教員は特別な事情がない限り、部活をみません。部活をみるのは専任のコーチたちです。
そして専任コーチたちは、部活の活動しかみません。つまり建物の管理や、子供たちの安全確保は、すべて橘さんたち事務職が受け持たなければならないのです。
それで事務職は、部活が終わったら速やかに子供たちを校舎から追い出して帰宅したいのですが、事務職をなめきっている子供は、「私は授業料を支払っています。その中には建物使用料も含まれていると思うのですが(I pay tuition fees to school. I think that the fee includes the use fee of the school building.)」などと言うのでした。
橘さんはこう話します。
「子供たちの父親は、世界中でビジネスや政治を展開するハード・ネゴシエーターなんですよね。子供たちはそういう親にしつけられているので、私たちにも交渉や取り引きをもちかけるんです。私には子供の感性に悪影響を及ぼしているとしか思えないのですが、インターの親たちは、自分の子供が事務職をやり込めると褒めるんです」
こういう子供たちが、橘さんに「鬼」に映るのは当然でしょう。
そして日本人の両親を持つ、日本在住の日本国籍の子供たちにも、橘さんは手を焼きました。
「こういっちゃなんですけど、日本人の子供の方が、外国人の子供より頭が悪いんです。授業は英語で行われますから、勉強についていけなくてどうしても落ちぶれます。でも、意識だけは外国人かぶれしているんです。外国人の子供には『なるほど、そういう理屈をこねるかあ、むむむ』と感心することもあるんですが、日本人の子供には『はあ?』と思わされることばかりでした」
しかも、日本人の子供たちは、インター内で嫌なことがあると、すぐに親に密告する傾向があるそうです。自己解決する気持ちを持っていないのです。
ところが、日本人の子供たちも、王子様お姫様扱いしなければならない事情があるのです。
外国人の子供たちは、親の転勤によって転校してしまうので「売上リスク」が大きいのですが、日本人のインターの子供はほぼ100%が高校まで卒業してくれるので「上顧客」なのです。
しかも、日本人の児童・生徒の親の年収は、海外勢をはるかにしのぐので、寄付金も期待できます。
よって、インター経営者は、橘さんたち事務職に「海外の子供を大切にしなさい、日本人の子供はもっと大事に扱いなさい」と指示するのでした。
「教育熱心な親ほど面倒な人種はいない」と橘さんは思っています。鬼っ子の親は本物の鬼、ということです。「インターを一度経験すれば、公立小中学校のモンスターペアレントなんて、イージーに感じるんじゃないでしょうか。なぜなら、彼らは頭が良くないからです。しかしインターナショナルスクールの親たちは、とてもクレバーで、外堀を埋めるのがうまいんです。悪意あるクレバーな富裕層は、最強の鬼だと思いますよ」
辞めたい理由と悩み3:知識を授ける能力には長けている外国人教員だが人間性にはクエスチョンマークが付く場合も珍しくない。
インタビューの中で橘さんから、こんなクイズを出されました。
「小学校の教室で、子供が突如、嘔吐しました。別に食中毒というわけではありません。小さな子供は、健康でも頻繁に嘔吐します。ですので、うちのインターのマニュアルでも、この場合の対応は、
1.子供を保健室に送り届けて
2.教室に戻って吐瀉物(としゃぶつ)を処理する
となっています。それではクイズです。この2つの仕事は、誰がすべきでしょうか?」
日本の学校であれば、1も2も担任教師の仕事です。しかし橘さんが勤めていたインターでは、いずれも事務職の仕事なのです。
外国人教員たちは、とにかくドライです。「勉強を教える」という業務を行うことで契約書を交わしている以上は、汚物処理には一切手を貸しません。
ただ、「児童・生徒の健康管理」は契約書に記載されているので、児童が教室で嘔吐したら、授業を中断して事務所にやってきて、「児童が吐きました(A child vomited in my classroom.)」と報告します。
そこには「後の処理はあなたにお任せします(I will leave the rest up to you.)」という意味が含まれているのです。
橘さんは、インターの事務職の仕事を、侮蔑と自虐を込めて「汚仕事(おしごと)」と呼んでいます。
それは、吐瀉物という「汚れ」を扱うから、という意味の他に、ビジネスパーソンとして尊敬できない態度をとる外国人教員の「尻拭い」という「汚れ」の仕事でもあります。
橘さんはさらに外国人教員について、「日本人のようなセクハラやパワハラをしない代わりに、酔ったときに始末に負えない」という印象を持っていました。
インターにも保護者会があり、保護者、教員、事務職で懇談します。その後は飲み会に流れるのですが、トラブルを起こすのは決まって外国人教員だったそうです。
「教育観にはお国柄が露骨に出るので、日本人と外国人が論争するのは仕方がないと思うんです。でも、お酒が入ると暴力的になるのは、欧米人の特色なんですかね。だって、日本のプロ野球を見ていても、乱闘のきっかけとなるのはいつも外国人ですよね。これって偏見ですかね。でもうちの学校では、特定の外国人教員は必ず宴席で失敗していました。カルチャーショックや日本生活のストレスもあるんでしょうが、海外の日本人ならそういうときホームシックにかかったり心を病んだりして、自分の内側にこもると思うんですよ。でも欧米人たちはいつも『Why Japanese people?』なんです、『自分たちは正しい、日本の常識は世界の非常識だ』なんです」
そして、外国人教員は、「契約書にない仕事」は絶対にやらないうえに、「契約書に書いてあっても、雰囲気的にやらなくてよくなった仕事」も絶対にやらないのだそうです。
例えば、自身の授業で使うプリントなどの配布物も、一度、事務職が用意してしまうと、もう2度と自分で準備しなくなります。
橘さんはこんな経験もしています。
児童・生徒が提出したレポートは、外国人教員が「目を通しました」という意味でシグネチャー(教員のサイン)を記載して子供たちに返却するのですが、その代筆を頼まれたのです。
これにはさすがの橘さんも「『あなたの仕事です(That is not my job but your job.)』と言って突き返しました」とのことです。
インターにお勤めのあなたなら、橘さんのたくさんのクエスチョンマークをご理解いただけると思います。職場にいつも歴然と鎮座している「日本と世界の壁」が、インター事務職を苦しめるのです。
いいえ、「インターナショナルスクール職員の人生を変える解法」はきちんと存在していますので、それを今からご説明いたします。
あなたの「会社を辞めたくなる悩み」への対応策
1.国際バカロレア資格が取れる格上のインターに転職する
インターナショナルスクールの事務職のあなたが、「辞めたい」と思っているのに退職願の準備に取り掛からないのはなぜでしょうか。
それは「国際的」という、他の職場ではあまり経験できない仕事に携わることができるからではないでしょうか。
雑用係とみなされようと、給料が仕事に見合わないと感じようと、高いスキルがないとこなせない難しい仕事にやりがいを感じているからではないでしょうか。
では、それならばなぜ、あなたの頭にはいつも「退職」の2文字が浮かんでくるのでしょうか。
「辞めたい」「まだ頑張ろう」「辞めたい」「もう少しやってみよう」いつもその繰り返しです。
それならばいっそのこと「辞めない」という決断をしてみてはいかがでしょうか。
そう決めるためには、いまの仕事を充実させる必要があります。
そのひとつが、国際バカロレア資格を授与できるグレードの高いインターナショナルスクールに転職することです。
先述した通り、インターは学校教育法上の小中高校ではありません。よって、インターごとにそのレベルはまちまちです。
その中で、スイス・ジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構の認定を受けたインターは、格上校といえるでしょう。生徒が国際バカロレア資格を取得できるインターは、国内には33校しかありません。
認定インターは、その児童・生徒たちに、国際バカロレア資格を授与できます。この資格を持っていると、東大や東北大、お茶の水大などの有名国立大や、慶應、上智、法政、立命館などの著名な私立大の入試を受けることができます。
つまり、こうしたインターでは、本当の国際人の育成を行っているわけですから、事務職の地位も高いのです。挑戦し甲斐がある転職といえるでしょう。
参考資料「国際バカロレアとは」(文部科学省)
参考資料「国際バカロレア資格を生かした入試方法~国内大学編~」(ベネッセ)
2.インターナショナルスクールの日本語教員になる
日本の学校での「国語」は「日本語」です。インターナショナルスクールでの「国語」は「英語」です。では、インターでの「日本語」はなんでしょうか。
答えは「日本語」です。
そうなのです、インターでは、外国人の子供たちに「日本語」を教える授業あり、その教員はもちろんネイティブです、つまり日本人です。
インターにおける、教員と事務職員の格差に憤りを感じている事務職あなたは、日本語の教員を目指してみてはいかがでしょうか。
というのも、あなたも、日本語教員と同じくらい日本語が上手ですし、さらに日本語教員と同じくらい英語力に自信を持っているはずです。
インターの日本語教員になるには、英語圏の大学で学び、教員免許を取得する必要があります。しかし「大きな壁」はこれくらいです。資金づくりを含め、年計画を立てて臨めば実現不可能な壁ではありません。
次にやることは下積みで、教員のアシスタントを務めるなどして「教える」実績を重ねていきます。後は、インターの日本語教員の求人票を見つけたら、履歴書を送るだけです。
インター事務職のあなたには、大きなアドバンテージがあります。それは、インターの仕組みを熟知しているということです。
一般的な教員は、教育や指導のニーズを把握するだけで精いっぱいですが、あなたはそれに加えて親のニーズやインター側の要望を把握しています。また、インター独特の校風にも慣れ親しんでいるはずです。つまり、あなたなら雇用主の要望に100%応えられる教員になれるのです。
報酬アップも狙えます。国際バカロレア資格取得試験において、教え子たちに高得点を取らせることができる教員は、ヘッドハンティングされることが珍しくありません。そのため、英語圏での教員免許の取得費用も簡単に取り戻せます。
また、海外のインターで勤めるチャンスもつかめます。インターの日本語教員は、世界に羽ばたくことができる仕事なのです。
参考資料「インターナショナルスクールの先生になるには?」(THE INTERNATIONAL SCHOOL TIMES2016年12月06日)

3.インターナショナルスクール職員を辞めて他業界に転職する
しかし、あなたがもし、わがままな子供たちに嫌気をさしているのだとしたら、別のインターに転職することにも、日本語教員にステップアップすることにも興味を持てないでしょう。
なぜなら、インターの世界は特殊だからです。プライドが高い外国人が多い、意識高い系の日本人も多い、子供というとてもやっかいなお客様、これらにストレスを感じるようですととてもこの業界では勤まりません。この業界にとどまる限り、これから逃げることはできないのです。
そのようなあなたには、他業界への転職をおすすめします。そこにはもう鬼はいません。
しかも、インターの事務職で培ったスキルは、国内のあらゆる業界で再利用が可能です。
なにしろあなたはこれまで、最も難しい客たちを相手にビジネスを展開してきたのですから。そしてあなたの語学力は、各種業界企業の垂涎の的です。
日本国中、業界、業種を問わず、ありとあらゆる企業が空前の人手不足に頭を抱えています。転職の絶好のチャンスです。
いまインターの世界を飛び出すことは、最もリスクが小さい時期といえるのです。
他業種への転職…不安はよくわかります。
しかし、うまくインターナショナルスクール勤務を抜け出して、人生の立て直しに成功した人の多くは、インター以外への道を選択した人々なのです。
この件について、以下でより詳しく説明いたします。
インターナショナルスクール職員の辞め方とタイミング
1:節目まで退職日を延長させられるのは日本の企業と同じ
インターナショナルスクールの雰囲気になじめなかった橘誠子さん(仮名、35歳)は退職を決意しましたが、辞めるまでにはひと悶着ありました。
橘さんが最初に退職願を出したのは4月でした。上司の反応は「何言ってるの?」でした。というのも、インターの1年は、9月にスタートして翌年6月に終業します。よって上司は、「6月まで退職させないよ」と言っているのでした。
一度退職を決意してしまうと、1日でも早く辞めたくなってしまうものです。橘さんも仕事に身が入らず、ミスを連発しました。ただ、橘さんが「さすがはインターナショナル」と感じたのは、退職の意向が職場内に伝わっても、業務に支障が出たり、嫌味を言われたりすることがなかったことです。
橘さんは以前、まったく別の業界で働いていましたが、退職することが同僚に分かった途端、手の平を返すように無視されたり仕事を取り上げられたりしました。
インターでは、そういうことが起きなかったのです。
それで橘さんは、すぐに退職願をつくりなおし、希望退職日を6月末に修正して再度上司に提出しました。上司は「橘さんに去られるのは残念ですが」と言って、受理してくれました。
ところが「それ」が起きたのです。
2:最後の最後に困難な仕事をさせようとする態度、それをカネで解決しようとする姿勢。
5月の連休明けに、人事部の日本人社員が橘さんのところに飛んできて「申し訳ありませんが、退職日を延ばしてもられませんか」と依頼しました。
それまでのドライな対応とは打って変わって、土下座ばりに腰を低くして頭を下げるので、橘さんも思わず「ど、どうしたんですか」と心配になりました。
7月と8月にかけて行うサマースクールの担当者が妊娠していることが分かり、肉体的にハードな業務が多いその仕事を行えなくなってしまったのです。
サマースクールとは、文字通り夏休みを利用して課外授業を行うカリキュラムで、受講料を別途徴収できるので、インター経営者としてはドル箱企画なのです。
なので、人事部社員が橘さんにそこまで下手に出るのでした。
しかし橘さんは「だからこそ」本当は4月で辞めたかったのです。それくらいサマースクールの仕事が嫌いだったのです。
興奮しがちな子供たちは、雰囲気が普段と異なるだけでヒートアップします。しかも教員たちは彼らを制御することをすぐにあきらめてしまい、結局は事務職たちが泣かされるのです。
早熟な海外の子供たちは、中学生でも「宿泊研修」で性交に及ぼうとします。橘さんの在籍期間内にも、生徒が妊娠して大問題になりました。結局実現しませんでしたが、一時は子供たちにコンドームを配布することを検討したこともあるそうです。
橘さんは「最後の最後に、サマースクールの仕事をやらなきゃならないのかあ」と悩み、人事部からの要請に対する回答を保留しました。
すると2日後にまた人事部職員が橘さんの元にやってきて、「いかがでしょうか」と言いました。橘さんは「正直に申し上げますと、サマースクールをやりたくないから辞めようと思ったところもありまして」と言いました。
人事部職員は「では、6月末で退職の手続きは取りますが、バイトでサマースクールに参加することを約束してくださいませんか。時給は破格の金額を支払います」と言いました。
橘さんがその時給額を尋ねると、それは外国人教員並みの金額でした。橘さんは仲良くなった教員から、教員たちの年収を聞いていたので、その計算がすぐにできたのでした。
「そんなにもらえるんですか」
「はい。なので、ぜひ」
「分かりました。でも、申し訳ありませんがやっぱり6月末で退職して、それ以降はこの学校と縁を切らせていただきます」
「なぜですか」
「だって、困っているときはそんな大金を支払うのに、それほど困っていないときは安い給料で仕事をさせるって、なんか面白くないです。
昨年のサマースクールも、本当に大変でした。だから昨年もその金額をもらっていたら、最後のご奉公として、今年も引き受けたかもしれません。でも実際はそうじゃありませんよね。だからお断りします」
人事部職員は、それで引き下がりました。
人事部が橘さんに提示した金額は、いくら大変なサマースクール業務とはいえ、2カ月程度のバイトとしてはとてもおいしいものでした。しかし、正当な業務評価や人事考査をするのではなく、あたかも繁忙期と閑散期のホテルの宿泊費の変動のように賃金が動くのは、橘さんには耐えがたい屈辱だったのです。
「欧米人のやり方にはついていけませんでした。職場に義理人情浪花節的なものがないと、私は息が詰まりますね」
橘さんは「いい辞め方ができました」とさばさばした様子で言いました。
インターナショナルスクールの勤務経験が優遇される、より就労条件のよい「おすすめ転職先」の例
絶対に失敗しない転職には、極意があります。それは、
- これまでに培ってきたスキルが活かせる
- 自分が求められている職場
の2点を追い求めることです。
ヘッドハンティングは理想の転職方法ですが、ヘッドハンターたちの目に止まるのはほんの一握りにすぎません。一般の方が、ヘッドハンティングを待っていたら、なかなか転職は実現できないでしょう。
そこで、ヘッドハンティングの要素を盛り込んだ転職を心掛けていただきたいのです。
まず「1.これまでに培ってきたスキルが活かせる」ですが、30歳以上の方の転職では、このことにとことんこだわってください。
新しいことにチャレンジすることも重要ですが、これまでに身に付けたスキルをまったく使えない職場に入ってしまうと、とても大きなストレスを抱えることになります。
ですので、インターナショナルスクールの事務職の経験者であれば、「英語」または「教育」または「英語と教育」というキイワードに関連した仕事を探すとよいでしょう。
次の「2.自分が求められている職場」探しとは、あなたの履歴書に強い関心をもってくれた企業を優先した方がよい、という意味です。
企業の「この人を採用したい」という気持ちには、強さのレベルがあります。
「ものすごくほしい」と思ったら、企業側は履歴書を見ただけで面接前にほぼ内定を決めてしまいます。
それより「ほしい」が弱まると、企業は「採用面接で注目しよう」と考えます。
「ほしい人たちのなかの1人」レベルですと、採用担当者は面接で「どうしてもうちに入りたいなら入れてあげなくもないけど」という態度を取ります。
インター事務職の場合、転職活動時には、英語スキルと教育スキルが際立つことになります。いわゆる「人材のキャラが際立っている」状態ですので、あなたのことをすごくほしいという企業が存在する一方で、「どうしてもうちに入りたいなら入れてあげなくもないけど」という企業もあります。
この場合、多少年収が低くても前者の企業を選んだ方が、気持ち良く働けるでしょう。こうして観点から、あなたに3つの転職先候補をお勧めいたします。
1.日本酒メーカー、日本茶メーカーに転職
国際情勢への関心が高いあなたであれば、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことは記憶に新しいところではないでしょうか。和食は一過性のブームで終わらず、今後、日本の重要輸出品になるでしょう。
和食は、フレンチやイタリアン、中華と並んでグローバル規模での巨大ビジネスを形成する可能性を秘めているのです。
しかし、そんな日本の「宝」でありながら、和食はまだまだ家電やクルマやアニメには及びません。海外には日本食レストランが約9万店あるとされていますが、そのうち「ちゃんとした和食」は何パーセントあるでしょうか。
それは、日本のビジネスパーソンたちが、和食の魅力を上手に伝えていないからです。和食ビジネスのワールドワイド化には、和食の繊細さを伝える「プレゼン力」と、各国の食の輸入規制を打ち破る「突破力」が必要になります。
あなたには、その両方が備わっているはずです。
日本酒業界も、海外に打って出ようと意気込んでいますが、なかなか2つ力を蓄積できていない模様です。
日本酒の2016年の輸出額は前年比1割増の155億円でした。しかも7年連続で過去最高を記録しています。日本経済新聞も「日本の農産物輸出の主力に成長しつつある」と評価しています。
しかし日本酒を含むすべての日本製アルコールの輸出量は2015年で約11万キロリットルにすぎません。
一方、日本が輸入しているワインの量は、チリ産だけで年5千万キロリットル、フランス産だけでも年4600万キロリットルに達します(いずれも2016年)。桁違いなのです。
日本酒業界は、海外に日本酒の魅力を売り込んでくれる人材を求めています。もしあなたに、「英語」「国際感覚」に加えて「お酒好き」という特質が備わっていたとしたら、ぜひともこの業界に飛び込んでみてください。
では、アルコールが苦手なインター事務職はどうしたらいいのでしょうか。もちろん答えを用意しています。それは日本茶業界です。
日本茶、つまり緑茶も日本酒と同じ問題を抱えています。2016年の輸出額では過去最高を記録しましたが、中国の緑茶やインドの紅茶に比べると、世界でのブランド力はいまひとつです。
まだまだ伸びる産業ですし、あなたの力でまだまだ伸ばせる商品なのです。ぜひあなたの力を貸してあげてください。
参考資料「和食がユネスコ無形文化遺産に登録されました!」(農林水産省)
参考資料「酒類の輸出金額・輸出数量の推移について」(国税庁2016年2月)
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2015/sake_yushutsu/pdf/sake_yushutsu.pdf
参考資料「和食ブーム、緑茶と日本酒の輸出額最高、2016年」(毎日新聞2017年1月)
2.日本の学校法人の事務職に転職
インターナショナルスクールの事務職にほとほと嫌気をさしたあなたでも、「子供が好き」という気持ちが少しでも残っているのであれば、日本の学校法人への転職をおすすめします。
というのも、あなたが疲れているのは「教育に」ではなく、「外国人に」ではないかと推測するからです。
日本の学校法人の求人票は、転職支援大手のDODAには120件もあります。この数字は「人手不足が相当深刻」であることを示しています。つまり「あなたを必要としている」度合いが強いということです。
求人元 | 業務内容 | 年収など |
学校法人角川ドワンゴ学園 | 法人が運営するITを活用した新しいタイプの「N高校」の法務、契約、公官庁提出書類作成、弁護士折衝、内部統制、電子決済管理、リスクマネジメントなど。 | 大卒年収450万~600万円 |
株式会社近大アシスト | 世界で初めてマグロの完全養殖に成功した近畿大学の100%出資子会社。近大に対し、研究資料出版、医療機器、医薬品、OA機器、事務用品などを売り込む営業。 | 大卒以上、年収300万~350万円。 |
学校法人帝京大学 | 大学の組織を運営する法人本部での人事、労務、庶務。組織の中核となる人材を募集。 | 大卒月給213,840円~、賞与年2回、 |
日本外国語専門学校 | 1970年創設の通訳ガイド養成専門学校。全国の高校を訪問して学校説明会を実施。パンフレットの企画や、オープンキャンパス準備も。学生の就職支援も。 | 月給24万~35万円
年収モデル 25歳、経験1年、350万円 33歳、経験1年、450万円 |
まず注目していただきたいのは、出版の角川とITのドワンゴが設立した「学校法人角川ドワンゴ学園」の求人です。新自宅でネットを使って学習したり、エンタメ系の授業に特徴がある、まったく新しいタイプの学校「N高校」の運営の仕事です。年収は大卒で450万~600万円となっています。
またユニークなところでは、近畿大学で使用するあらゆる物品を調達する株式会社近大アシストです。近大は、世界では始めてマグロの完全養殖に成功し、東京でも知名度が高いユニークな大学です。
大学という組織はありとあらゆる「買い物」をしますが、株式会社近大アシストは、その調達係ということです。
「角川」と「近大」をあなたにすすめるのには、理由があります。それは新しくてユニークだからです。それでいてビジネス感覚が鋭く、そしてもちろん、日本の教育の将来について真剣に考えている法人だからです。
こういう法人は、学校運営に熟知している人を求めています。ユニークな教育を展開するといっても、最終的には教育行政を担う文部科学省や地域の教育委員会といったお堅い行政機関と渡り合う必要があり、「お堅い」事務職が欠かせません。
つまり、ITや先進技術を次々取り入れる「いけいけどんどん」のスタッフがアクセルだとしたら、ブレーキ役の事務職が欠かせないのです。
その次に紹介した帝京大学と日本外国語専門学校の求人票は、典型的な学校法人の求人といえるでしょう。
両者の求人票の魅力は手堅さです。いずれも伝統がある「学校」ですので、堅実な仕事運びが求められます。あなたに向いているのではないでしょうか。
「学校の仕事」には、さまざまな種類がありますので、必ずあなたが「やってみたい」と思えるものが見つかるはずです。
参考資料「学校法人の転職・求人検索結果」(DODA)
3.大手英会話教室の講師に転職
英会話教室の講師は、「その業界なら、私も考えた」と思ったのではないでしょうか。
しかし、あなたほどの英語の達人が、この業界への転身を真剣に考えないのはもったいないといえるでしょう。
なぜなら、英会話教室への転身は、独立のチャンスがあるからです。一国一城の主になれるのです。
公的金融機関の「独立行政法人中小企業基盤整備機構」のホームページには、英会話教室を始める個人を支援するページがあります。それによると、国内の外国語会話教室の市場規模は年間1296億円にも達し、受講者は約820万人もいます。いずれも増加傾向にあるのです。だから、中小企業基盤整備機構も、この業界に注目しているのです。
中小機構は全国9カ所に拠点があり、資金調達の相談にも乗ってくれます。
いきなりは独立はできないので、まずは英会話教室の企業に勤めることになるのですが、運営企業にも魅力的なところが多いのです。
例えばテレビCMで知られている英会話教室「COCO塾」を運営するのは、東証1部上場企業の株式会社ニチイ学館です。同社は介護も展開し、年商は3000億円に達します。
転職によって、大企業勤めの安心感が得られるでしょう。
英語ビジネスは健在ですし、すべての業界のビジネスパーソンは、今後ますます英語スキルが求められます。つまり英会話教室は成熟産業であると同時に未来産業でもあるという、珍しい業界なのです。
この業界での成功を目指すことは、あなたに相応しいチャレンジングなことです。
参考資料「英会話教室を起業するにあたっての留意点」(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
人生の選択肢は常にあなた自身が持っている
インターナショナルスクール職員勤務のあなたの人生を変えるために、まず一番注目すべきことは「インターナショナルスクール以外の職場もあることを知る」ということです。
案外、外部と交流がないインター校業界人は井の中の蛙になることが多いです。
自分の会社以外のことを全く知らないというケースも非常に多いようで、勇気を出して一歩外に踏み出せば大きな海が広がっているということを、改めて考えてみてはどうでしょうか。
兎に角、どうしても今の悩みが解決できなければ「別に辞めればいい」「辞めたっていいんだ」「自分は自由に人生を選択できるんだ」と割り切ること。
周囲からの目を気にしたり、あなたの人生と無関係な上司のメンツを立てて、自分の人生を後回しにしてします思考こそが「今の職場を辞められなくなってしまう」ことの最大原因であり、悩みをより深くして人生を間違えてしまう事につながります。
転職コーディネーターに無料相談することから始める
自分自身でまず何をしてよいかわからないならば、人材紹介会社に登録するのも手。
転職コーディネーター経由で他の業界、企業の内情を知ることができますし、冷静な第三者の目で、あなたのスキルと経験を活かせる新しい職場を用意してくれます。
また、辞めづらい今の職場で、(転職先を紹介してもらった後に)スムーズに次の職場に移動するための方法やタイミングなどもしっかり教えてくれますよ。
いきなり仕事を辞めたりはせず、まずはじっくり転職エージェントと無料のアポイントを取って、今後の動き方を相談しつつ、あなたの希望に沿った新天地候補をじっくりと紹介してもらうべきでしょう。