
野村 龍一

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記事の目次
国家公務員は恵まれている?いえいえ…ノンキャリ国家公務員にしかわからない悲哀に満ちた話を聞いてください。
私の国家公務員としての職務経歴は、中央省庁の本省でノンキャリアとして採用され、人事課の給与係(職員給与・手当の認定、共済掛金や所得税・住民税などの控除項目の手続き)から始まって、情報システム課(省庁内のパソコンやネットワークの管理)、会計課予算係(省庁内の予算要求のとりまとめ、財務省との折衝)、会計課契約係(外注する役務の入札・契約手続き)等に配属されるほか、部局の総括ラインでの予算要求や会計検査対応などの管理部門的な業務に従事してきました。
最後の数年は東日本大震災の発災後の予備費使用や、法改正に伴う国会対応も任され、中央省庁ならではの仕事をたくさん経験させてもらったと思います。
中央省庁の国家公務員ならではの、就業中の不満、大変さ、辛さと悩み
辞めたい理由と悩み1:国会答弁作成や予算要求というストレスフルな激務が続く日々
中央省庁で働くことの最大の特徴であり、多くの公務員が抱く不満は「激務」でしょう。激務の根源は「国会対応」と「予算要求」が二大巨頭ですよね。このほかにも「立法(法改正)」も中央省庁ならではの苦労と言えますが、これはその時限りのタコ部屋に入るかどうかが運命の分かれ道で、国会や予算のように毎年巡ってくるものではないのが救いでしょうか。
国会対応での最も大きな不満は、答弁作成のための待機時間の長さであり、その原因は国会議員のセンセイ方が自分たちで決めたはずの「質問は前々日までに通告する」というルールを守ってくれないことです。つまり、通告が遅れることによって、どの質問をどの大臣が答弁するか、どの省庁が答弁を書くか、省庁内でもどの部局が答弁を書くか、といった割り振り作業も遅れることになります。
答弁は書けばそれで完成とは限らず、関係省庁でも内容をチェックする場合がありますし、予算に関わることであれば財務省の了承を得なければいけません。財務省には様々な省庁の多くの部署の答弁が集まりますので、チェックしてもらえるまで長時間待つこともあります。待った挙句にダメ出しを受け、また答弁を書きなおし、、、などということもしばしば。
ただ、国会対応はどんなにキツくてもその日限り、と言うと語弊がありますが、翌朝の大臣レクまでという区切りがありますので、先が見えているという安心感があることが救いでしょうか。ともあれ、センセイ方が前々日までに質問通告してくだされば、徹夜で朝まで作業を続ける必要は無くなるはずで、くれぐれもルールを守っていただきたいものです。
一方、予算要求の場合は、国会対応とは違った苦しみがあります。
おおよそ5月くらいから、来年度要求のためのタマ出しが始まりますが、この頃はまだ穏やかな感じで、予算化されるかどうか分からない事業のことを延々と検討するだけなので、むしろ楽しいと言ってもいいくらいでしょう。しかし、幸せなのはこの時期だけ、7月には概算要求基準が発表され、来年度予算の要求ルールが判明します。
最新の平成30年度概算要求基準では、前年度比1割減で要求し、この他に「新しい日本のための優先課題推進枠」という特別枠で要望することができるようですが、結局は前年度よりも削らなければなりません。まずは各省の中でどの予算を削るかについて侃々諤々の議論があり、削減を割り当てられた部局はそれを持ち帰り、部局内でまた調整し、、、
その一方で、様々な方面(主にセンセイ方)からプレッシャーがかかり、まったく新しい予算を要求しなければならないこともあります。予算要求の基本ルールはスクラップ&ビルドですから、こうなると新規事業と同じ規模の事業を廃止しなければなりません。自分の部局だけで調整できればまだマシですが、ときには部局を超えて要求額削減の調整をしなければならず、この苦労が概算要求書を財務省に提出する8月末まで続きます。
しかし、本当の苦労はこの後に始まる財務省との折衝です。
9月から、提出した要求内容について「この事業が有用であるので予算を付けてください」ということを延々とご説明し、それに対して「この事業は必要ないですね。(又は減額していいですね?)」と言われ、それを持ち帰ってはまた作戦を組み立て直して再説明に伺い、、、という地獄のループが続くのです。「ご説明」と言えば簡単そうですが、このアポイントを取るだけでもかなり大変。なにしろ主計局の方々は何十という部局、何百という担当者の事業をを査定しなければならないので、そもそも人的資源が足りていないのですが、こればかりはどうにもなりません。こちらとしては、なるべく一度でご説明が済み、予算を付けてもらえるようにご説明するしかないのです。
数々の折衝を経て、国会に提出する予算案がまとまるのが毎年クリスマス前後。この時期には、ご説明の段階で切り捨てられてしまった予算も「復活折衝」という儀式を経て予算化されたりします。実際のところは、どの予算が復活するかは内々に決まっているようで、局長が出てきてお願いしたら予算化されたとか、大臣がお願いしたら予算がついた、という対外的な実績アピールの場となっている感もあります。それならば早めに内容を固めて、クリスマスや年末はゆっくりさせてもらいたいところですが、何故か毎年この時期に盛り上がるのが慣例となっています。
そして年が明けると、通常国会が開会して予算案が提出されます。政府としての至上命題は予算案のとおりに予算を成立させることであり、年度内に予算が成立することが大事なので2月末までに衆議院を通ることを期待しています。ところが、迎え撃つ野党もここが腕のみせどころで、予算委員会にはありとあらゆる問題が取り上げられます。予算要求している内容についての指摘であればいいのですが、まったく関係ないようなスキャンダルや重箱の隅をつつくような審議内容となることもあり、前述のとおり答弁作成のための待機時間が長くなるのが困ったところです。
衆議院を2月末に通過すればよいのですが、これが3月にずれ込み、3月末までに参議院で成立する見通しが立たないと、今度は暫定予算を組むことになり、また一作業です。暫定予算は最低限必要な生活費等のみを計上するので、予算の分捕り合戦はありませんが、年度内に成立すれば必要のないものですから、この作業も相当虚しいものがあります。もっとも、近年は「景気の後押しのためにも予算の早期成立が重要」という認識が広まり、よほどのこと(民主党政権とか)がなければ暫定予算の作業が始まることはありませんが。
もちろん、これらの激務も人員配置に余裕があれば、もっと楽になるはずです。ところが、定員は削減されることがあっても増えることはありませんので、人員増によって激務が緩和されることは未来永劫期待できないでしょう。
そして激務から体調を崩してしまう人も多く、丈夫で倒れない人にはますます負担がのしかかるという悪連鎖もあります、、、倒れたほうが楽というブラック企業も真っ青の職場。それが中央省庁なのです。
辞めたい理由と悩み2:国民のために働いているという実感を持てない
中央省庁では、2~3年ごとに人事異動があります。キャリアの場合は「〇〇局の人」という感じで経験を積み上げるような人事異動が多いように思いますが、ノンキャリアであっても人事課がある程度の将来を見越して「なんとなく国会関係(総務課や総括ライン)」とか「なんとなく会計畑(会計課や予算担当)」といった育成をする場合もあります。
しかし、人によっては「なんでもできるけどなんにも専門性が無い」という人事異動を繰り返している人もいます。専門性を習得できずにいて「自分は何のためにここで働いているのだろう?」と思うようになる人も少なくないようです。元々「安定」を求めて公務員になったような人ならそれでもいいのですが、熱い志を持って就職したような人はストレスを抱えるようになりがちです。マスコミ上での公務員バッシングは止むことがありませんし、国民のために働いているはずなのに、一体何なんだろうと思うことが多々ありますよね。
国民のため、と言えば年度末の予算消化も悩ましいところです。
中央も地方も同じことですが、役所の中には「予算の完全消化」という至上命題があります。例えば、ある政策を実施するために1000万円の予算が用意されていても、800万円で実施できれば200万円節約することができるので、民間企業の事業であれば800万円で実施することでしょう。そのように事業を進めれば、担当部署の評価も上がるでしょうし、担当者の人事評価も上がるはずです。
ところが、予算要求のルールが厳しくなる中で、「予算を使いきれなかった場合は次年度の予算を削られやすい」という傾向があり、予算が減れば来年度の政策規模が縮小してしまいますので、絶対に避けなければなりません。予算が減るということは、その部署の権限がそれだけ縮小するということに等しく、責任者や担当者の評価も下がるのです。
もちろん、「削られないため」という後ろ向きな理由だけではなく、「将来的に新しい事業を立ち上げる際の財源にする」という役人ならではの前向きな理由で、ほとんど使命を終えたような事業の予算が生き残っている場合もありますが。いずれにせよ、税制状況が厳しいために、予算を死守する必要があり、予算が余りそうな場合は「モノを買う」「出張に行く」といった無駄な?努力をしなければなりません。
数年前に吹き荒れた「入札至上主義」という嵐のせいで、外部に発注する調査モノは入札や企画競争が必須ですし、出張の際にも旅行代理店の見積もりを取って出張パックを利用しなければならず、近年は予算が余りやすい状況になってきたはずなのですが、その効果を打ち消すように予算を消化しなければならない、、、わざわざ手間をかけて入札や見積りをしているのは税金を無駄にしないためなのに、それを打ち消すための努力をしなければいけない。いったい何のために働いているのだろう?と思うのは誰しも同じだと思います。
辞めたい理由と悩み3:キャリアとノンキャリアの間に超えられない壁がある
民間企業でも、ある程度の大企業では「総合職・一般職」という採用区分がありますが、国家公務員の採用試験にも、これに倣って「総合職・一般職」という区分が設けられました。かつては「I種・II種・III種」という区分で、I種がキャリア、II種・III種がノンキャリアであることは公務員にとっては常識でしたが、キャリア=総合職・ノンキャリア=一般職という区分になったことにより、一般の人にも分かりやすくなったのでしょうか。
キャリアは幹部候補生なので、途中で退職しない限り、誰でも課長級までは出世します。ところが、ノンキャリアで採用された場合は定年まで勤めたとしてもせいぜいが室長(企画官)までで、課長補佐で定年を迎える人が大半でしょう。霞が関全体を見渡せばいくつかのノンキャリ課長ポストもあるようですが、一つもないという省庁のほうが多いようです。
採用試験というのは、学校を卒業する時点での学力の差を図っているに過ぎません。ノンキャリの中にも、働き始めてみたらすごく優秀という人もいます。ところが、ノンキャリであるかぎり、どれだけ努力しても成果を上げても、公務員試験を受けなおしてキャリアとして採用されない限り、キャリアのように出世することはありません。(仮に、在職中にキャリア試験に合格したとしても、そのままではキャリアとして扱ってもらえない)
このため、ノンキャリの公務員(特にII種採用)の中には、不満を持ちながら働いている人も少なからずいるようです。新たな政策を企画するような公務員としての華々しい業務を担当するのはキャリアばかりで、ノンキャリはその政策を予算要求するための三段表(細かい積算)を作ったり、イベントを外注するための手続きや有識者を招へいするための旅費の計算や支払いなど、裏方の業務に徹するのみです。このイベントの内容や有識者に検討してもらう政策の内容はキャリアが主体となって取組みます。
このことが分かっていて公務員試験を受けて採用された人であっても、実際に働き始めて感じる身分の差の大きさに、不満を抱えつづける人も少なくないようです。特に、キャリアとノンキャリアの両方を受験したものの、キャリアで落ちた高学歴のノンキャリアの人は人一倍つらい思いをしていることでしょう。一般の企業に行けば、幹部候補として登用さるような有名大学であっても、中央省庁では採用区分の違いが一生を決定づけるのですから。
いいえ、「中央省庁勤め国家公務員の人生を変える解法」はきちんと存在していますので、それを今からご説明いたします。
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1.やはり公務員のメリットは大きいので、倒れない程度に我慢し続ける
中央省庁なのだから、忙しいのは当たり前。入る前から分かっていたことですから、じっと我慢しましょう。と言われても、ただただ我慢するのにも限度があります。ここはひとつ、中央省庁で働くことのメリットを考えてみましょう。
第一に挙げられるのは、なんといっても「身分保障」です。不況で倒産することは絶対にありませんし、もちろん不況でのリストラ解雇もありません。(景気とは関係なく、法人化されたり民営化されることはありますが、今後も霞が関の本省が民営化されることはほぼないでしょう。一部の外局には法人化の噂がありましたが、、、)
この身分保障は、プライベートで絶大な効果を発揮します。例えばクレジットカードを作ろうと思ったとき、自動車や不動産の購入に際してローンを組む時など、審査に落ちることはほとんどありません。婚活にしても、〇〇省と書くだけで相手が受ける安心感が違います。大企業の社名が書いてあったところで、本社勤務と工場勤務では雲泥の差がありますが、〇〇省ならそれだけで通じるのです。
さらに、安定的な収入が見込めますので、経済面での将来設計が立てやすいのも大きなメリットです。不況で民間企業の賃金が下がれば、人事院勧告でも引き下げられることになりますが、生活が苦しくなるほど下がることはありません。先ほど挙げた銀行の審査に強いことや、婚活で持たれる安心感も、この「経済的な安定」という裏付けがあってのことでしょう。
そして、月々の給料や年に二回のボーナスだけではなく、退職金のことも忘れてはいけません。人事院の調査によれば、退職金は平均で約2,500万円です。これだけあれば、ちょっと田舎の新築マンションならキャッシュで購入できますし、定年まで勤めれば相応に蓄えもあるでしょうから、一戸建ても全く夢ではありません。もちろん、現役のうちにローンを組んでいたとしても、簡単に完済できてしまうでしょう。
調査では、民間の退職金も同じような結果となっていますが、よく見ると企業年金との合計額となっています。企業年金制度がある会社は約半分にすぎませんので、2人に1人の退職金は約1000万円ということになります。しかも、民間企業には倒産のリスクもありますので、ン十年後に退職金がもらえるかどうかは、ン十年先にならなければ分からないのです。
どうでしょう。身分保障と人生設計を考えたら、激務でも仕方ない。家族のためにも倒れない程度に頑張ろうと思う余地があるのではないでしょうか。
2.地方公務員へ転職する
中央省庁で働いている中で、地方自治体の人と接触すると思うのは、自治体(とく市町村)は住民のために働いているという実感を得やすいだろうな、とういことです。前述のとおり、国家公務員の場合、特に中央省庁勤務の場合は国民と接触する機会が少なかったり、担っている政策範囲が広すぎて国民が恩恵を受けているかどうかの実感を得にくいものです。国民のために働きたいという思いを持っている人が、より確かな実感を得るために地方公務員に転職しようと考えるとしたら、それは自然なことなのかもしれません。
また、就職する時点で地元志向だったために自治体の試験を受けたけれど不合格となり、国家公務員試験に合格したので国家公務員となった、というケースもあるでしょう。田舎のほうに行けば行くほど、特に親世代は「地方より国。地元より東京。」と考える人が多いようで、両方の試験に合格したものの、親や親類の意見で国家公務員になったという知人もいました。
このように、地元志向だったのに中央省庁勤務となったけれども、やはり地元への思いが捨てられないという人や、家族の事情で地元に戻ることになったという人の中には地元の自治体で地方公務員として働きたいと考えている場合もあるようです。
そのためには、自治体の採用試験を受けて合格し、採用されるのが一番の近道でしょう。ただし、中途採用であってもたいていは年齢制限があるため、30代中盤が上限になるでしょうか。
また、試験を経ずに、自治体へ出向した際にお互いが意気投合して、そのまま転籍(割愛採用)するというケースも稀にあるようです。
3.中央省庁勤めの国家公務員を辞めて他業界に転職する
いくらメリットのことを考えても、この激務は我慢できない、地方であっても公務員になんてなりたくない、という人は退職するしかないのかもしれません。激務に耐えきれず、体調を崩す同僚も少なくないでしょう。そして、同僚が一人倒れたらその分のしわ寄せが職場全体に広がり、また体調を崩す人が現れるという悪循環があります。そんな働き方をしている中で、新たな就職先を探したり、自ら起業することを考えたことは誰でもあるのではないでしょうか。
ただ、一度退職してしまったら、再び戻ることはできません。もう一度公務員試験に合格して、面接を受けて採用されなければいけませんから、不可能と言っても過言ではないでしょう。このため、どうしても辞めたくなってしまっても、もう一度考えなおすことが大事です。可能であれば、身上調査や人事意向調査の際に他省庁や自治体への出向を申し出てはどうでしょうか。他の組織で働いてみると、同じ中央省庁であっても驚くほど文化が違ったりします。良いところもあり、悪いところもあり、どこの組織で働いても不満の無い職場など無いということに改めて気づくことができるでしょう。
そして、もう一度就職した時のことを思い出してみましょう。なぜ中央省庁で働きたいと思ったのでしょうか。ブランド力や身分保障に魅力を感じたなら、そのような面で中央省庁より格上の会社はありませんし、同格と思われる大企業であっても確実性では足元にも及びません。廃業した山一証券も、昔は四大証券会社と呼ばれてしましたし、シャープもソニーも東芝も、今ではかつてのような勢いはありません。
「国を動かしたい」とか「国民のためになる政策を担いたい」という理由で就職したのなら、その志をもう一度思い出してみましょう。退職してしまったら、その思いが叶うことはないでしょう。もとい、国会議員を目指すなら話しは別ですが、中央省庁の激務に耐えられないようでは、国会議員は務まりませんので。
それでも今の自分を取り巻く状況に我慢ができない、ストレスで心身ともに限界を感じているようならば、躊躇なく転職することをお勧めします。人間、自分自身が壊れてしまっては人生そのものが崩壊していしまいます。何もあなた個人だけがそこまで自分を国家に殉じなくともよいのではいないでしょうか?
他業種への転職…不安はよくわかります。
しかし、うまく中央省庁勤務を抜け出して、人生の立て直しに成功した人の多くは、中央省庁勤務の国家公務員以外への道を選択した人々なのです。
この件について、以下でより詳しく説明いたします。
中央省庁勤務国家公務員の辞め方とタイミング
辞め方とタイミング1:辞めること自体を表明しないで、秘密裏に準備を着々と進める
中央省庁に限ったことではありませんが、辞めた後の身の振り方(就職の内定や起業など)が決まっていないうちは、絶対に「辞める」ことを表明してはいけません。呑み会のときに「辞めたいな~」という愚痴をこぼすくらいなら日常的によくあることですが、就職活動をしているとか、起業のために準備を始めたとか、具体的な退職計画を進めていることを、職場の人に感づかれてはいけません。
役所において、あなた自身がどれくらい重用されているかにもよりますが、辞めると発覚した瞬間から、上司や人事課があの手この手で篭絡を図ってくることでしょう。曰く「何が不満なのか」「次の人事異動では考慮するから」「公務員しかやったことのないやつが民間に行って通用すると思うか?」「給料は下がるだろうな」「民間はいつ潰れるか分からないぞ」等々、飴と鞭を駆使して、なんとか残ってもらおうとするはずです。
そして、プレッシャーは外から来るだけではありません。もっとつらいのは、自分自身の集中力が削がれることです。筆者の経験上、内心で「新しい仕事」のことを準備しているうちはいいのですが、職場の同僚から「辞めるんでしょう?」と言われるようになると、あらゆる業務に対する集中力が削がれます。なんとか責任感を頼りに働いていた最後の数ヶ月は、本当につらいものでした。
かと言って、もちろん「今日で辞めます」などという無責任なことはできませんので、最低でも1ヶ月前、できれば2~3か月前には上司や人事課に報告する必要があります。
辞め方とタイミング2:退職の時期は人事異動の時期に合わせる
中央省庁の人事異動は、ほとんどが4月(幹部の異動は7月)に行われます。このため、退職する時期は、3月までとする人が多いようです。なるべく波風を立てずに退職するためにも、人事異動のタイミングに合わせるということは一つの大切な要素となります。
また、人事課の採用担当者が言っていたのは「人が足りなくなるのは困るので、新年度の新人採用が終わる前に言ってほしい」とのことでした。ノンキャリアの採用スケジュールを考えると、前年の12月くらいに人事課に伝えれば、頭数の補充という意味ではなんとかなるのかもしれません。
辞め方とタイミング3:再就職規制や副業規制など、国家公務員法を順守する
国家公務員の再就職規制は、平成19年の国家公務員法の改正によって大きく変化しました。かつては「離職後2年間、離職前5年間に在職していた国の機関と密接な関係のある営利企業の地位への再就職の原則禁止」という単純な規制のみで、事前に人事院の承認を受ければ例外として再就職可能というルールでした。
法改正後は、「1 他の職員・元職員の再就職依頼・情報提供等規制」「2 現職職員による利害関係企業等への求職活動規制」「3 再就職者(元職員)による元の職場への働きかけ規制」という3つの規制が敷かれました。1つめは例えば人事課等による再就職のあっせんに関する規制で、3つめは再就職後の規制ですから、注意すべきは2つめの求職活動規制です。
従来は利害関係企業への「再就職」が禁止されていましたが、法改正後は「求職活動」それ自体が規制されています。また、現役職員側から利害関係企業への働きかけが規制されているだけではなく、利害関係企業側から働きかける場合でも規制の対象となることがあります。知らなかったでは済まされないことですので、就職活動を始める前に、規制の概要について確認する必要があるでしょう。
参考資料再就職等監視委員会による国家公務員法の再就職等規制の概要
また、再就職ではなく、自ら起業することを考えている人の場合、現役のうちから副業として準備を始める、というケースを想定しているかもしれません。ところが、これは相当険しい道のようです。アパート・マンションや土地などの不動産賃貸であれば、承認を得たうえで営むことが許されますが、管理人などを別途手配しなければとても成り立たないでしょう。
現実的に許されるのは、実家や配偶者が自営業の場合で、週末にその手伝いをするとか、ネットオークションやフリマアプリを活用して自作の何かを売るとか、「せどり」のような活動をしたり、株式やFXなどの金融投資でしょうか。これらの業態で、公務員を退職して生活していけるかどうかを考えると、よほどの適性がなければ難しいように思います。
ただし、筆者の先輩のケースはひとつのケースとして参考になるかもしれません。
彼の場合は、「奥さんがペンション経営をする」ということで、その手伝いとして毎週末に夫婦でペンションに通い営業していました。人事課にもそのように届け出をしたようで、職員本人はボランタリーにペンションと関わっているということで、問題なく続けられたようです。
似たようなケースとして、知人の経営する会社(飲食店など)を週末限定でボランタリーに手伝うことで経験を積み、その後に自立する人は少なからずいるようです。
中央省庁国家公務員の勤務経験が優遇される、より就労条件のよい「おすすめ転職先」の例
1.優遇制度もあり、経験を活かせる士業に転職し、将来的には独立開業も視野に入れる。
国家公務員法での再就職規制の厳しさを考えると、もしかしたら「起業する」という選択肢は悪くないかもしれません。ところが、副業でノウハウを得ながらの開業準備は難しいというジレンマがあります。そんな中でも、公務員経験者ならではの独立開業しやすい分野が「士業」の世界と言えるでしょう。
週末に資格学校で勉強して試験に備え、資格を取得して開業する。それが士業を目指す王道かもしれませんが、公務員の場合には職務経験によってほぼ自動的に資格を得られるものがあります。
行政書士:公務員として行政事務を担当した期間が通算して17年以上(通称6号会員)
弁理士:特許庁において審判官又は審査官として従事した期間が通算して7年以上
税理士:国税従事者における免除として、従事した内容に応じて試験科目を免除
弁理士や税理士は勤務先が限定されていますが、行政書士の場合は対象が広範囲です。現業の場合などは期間から除外されるようですが、中央省庁の公務であればおおよそ対象になるものと思われます。
もちろん、試験を受けずに資格を取得できるからと言って、そのまま独立して商売が成り立つかどうかは別です。役所に雇われているときと違って、自分で仕事を開拓していかなければならないのは言うまでもありません。しかし、自分の頑張り次第で収入が増えたり減ったりすることや、クライアントから依頼を受けて仕事をし、成果を上げて収入を得るという働き方は、中央省庁では絶対に体験できないでしょう。
そのためには、いきなり独立するよりは既に開業して成功している事務所(できるだけ大手が望ましい)に一旦就職し、営業ノウハウを1から盗み取るくらいの気持ちで業務を覚えることが最優先事項となるでしょう。独立はその後でも十分間に合います。
また、行政書士試験に合格して開業する人と比べた場合でも、公務員経験者には一日の長があります。なんと言っても、こちらは役所の中で長年働いていたのですから、相手がどのように考え、処理するのか、その際にどのような点を気にするかなど胸の内が手に取るように分かるのです。
試験に合格して開業した人は6号会員を一段下とみている人もいるようですが、これはあくまでも定年後の肩書欲しさに資格登録したようなケースを言っているのであって、早期退職して開業するような人を見下すような人はいないでしょう。実際には開業してどう稼いでいくかの勝負ですから、試験合格も6号会員も関係ないのです。
2.ノンキャリアであれば、事務仕事の経験を活かせる事務職で転職する
特に、役所の中での予算要求から予算の成立、執行手続き(一般競争入札・随意契約・見積り合わせ)から支払まで、一般的な物品役務の契約だけでなく、補助金等の交付や額の確定作業まで一通りの知見があるため、会社として入札に参加する場合の手続きや、補助金を獲得した際の業務処理について、社内での信頼感はもとより役所側から見ても「ここの会社なら大夫だろう」と思って貰えているようです。
補助金等を獲得すると言っても、利害関係のあるものには手を出せませんが、全く関係ない役所の補助金であっても、「元役人が経理処理している会社」という事実は、補助金の担当者にとっても安心感があるようです。実際に「過去に補助金を交付した任意団体の支払処理が滅茶苦茶で年度末に苦労して、、、」という補助金担当者の嘆きも聞いたことがあります。
もちろん、再就職規制に触れるような業界への再就職はできませんが、非営利活動をしている団体等は恒常的に資金調達に苦労していますので、補助金等の獲得に力を発揮できるとなれば、就職活動の際のアピールポイントになるのではないでしょうか。
3.特定の専門領域があれば大学教員やコンサル・シンクタンクなどに転職する
キャリア官僚のように、何らかの分野で専門的な知識や経験を持っているならば、大学教授となるのが現実的かもしれません。実際に、現役のころから土曜日に大学の講師として働いたり、現役出向として国立大学で教鞭をとる人も多くいます。
前述のとおり、国家公務員法の天下り規制によって利害関係企業への就職活動はできませんので、現役時代の知見が役に立つような営利企業への再就職は、容易ではありません。ところが、これが大学であれば文部科学省の高等教育局でもない限り、大学との直接の利害関係を持つ部署は少ないのではないでしょうか。(そういえば最近、そんな騒動がありましたが)
大学教授以外でも、コンサルティング会社やシンクタンクの研究員なら、専門性を発揮できるのは間違いないのですが、所属省庁から業務を発注しているような場合もありますので、再就職規制の要件を慎重に見極める必要があります。
ともあれ、係長級以下であれば原則として規制対象外ですので、キャリア官僚で転職を考えている人なら、三十代前半くらいを目途に踏み切るのがお勧めです。
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人生の選択肢は常にあなた自身が持っている
中央省庁勤務のあなたの人生を変えるために、まず一番注目すべきことは「中央省庁の国家公務員以外の職場もあることを知る」ということです。
案外、外部と交流がない中央省庁業界人は井の中の蛙になることが多いです。
自分の会社以外のことを全く知らないというケースも非常に多いようで、勇気を出して一歩外に踏み出せば大きな海が広がっているということを、改めて考えてみてはどうでしょうか。
兎に角、どうしても今の悩みが解決できなければ「別に辞めればいい」「辞めたっていいんだ」「自分は自由に人生を選択できるんだ」と割り切ること。
周囲からの目を気にしたり、あなたの人生と無関係な上司のメンツを立てて、自分の人生を後回しにしてします思考こそが「今の職場を辞められなくなってしまう」ことの最大原因であり、悩みをより深くして人生を間違えてしまう事につながります。
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