自動車部品サプライヤー(自動車部品メーカー)を辞めたい人へ=つらい職場を上手に辞める方法

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北野筆太

北野筆太

ブラック企業の取材などを主なテーマにしているライター。実際の転職経験者にインタビューをすることで、労働者が煮え湯を飲まされるその業界ならではの特殊事情やゆがみを探り当て、「就業する前に(転職する前に)知ってほしい体験談記事」を日々執筆中。

つらい職場「1次下請け自動車部品メーカーの営業」




記事の目次

自動車部品メーカーの仕事はダイナミックでやりがいが大きい。ただ企業体質が古く窒息しそうだ。

「1次下請け自動車部品メーカー」に勤めているあなたは、一般の人が「下請け」という言葉にネガティブな印象を持っていることをご存知のはずです。

この業界を知らない人は「下請け」と聞いただけで、「町工場」や「経営が大変」といったイメージを持ってしまいます。

トヨタやホンダ、日産などの「完成車メーカー」に勤めている人は、世間では「世界を席巻する優良企業の社員」と理解されます。

しかし、デンソーやアイシンなどの「1次下請け自動車部品メーカー」または「1次サプライヤー」は、「知っている人知っているけど、知らない人は全然知らない」企業です。

しかし、完成車メーカーの厳しい品質要求に対応してきた1次サプライヤーたちは、いつしか完成車メーカーを脅かす存在にまで成長しました。

自動車評論家の中には「完成車メーカーは部品を組み立てて売っているだけ。本当の『クルマづくり』をしているのは1次サプライヤー」と言う人もいます。

「名もなき実力者」そんなふうに言う人もいます。とても格好いい存在です。

しかしここで紹介するのは、国内有数の1次サプライヤーで12年にわたって営業の第一線で活躍しながら、「定年までここにとどまることはできない」と考えて、退職の道を選んだ男性の話です。

彼が「超一流企業を辞めた理由」は、いくつかあります。

自動車部品メーカーで働いているあなたなら、その理由の中に「その通り」と納得できるものがあるはずです。

あなたも一度は「このままでいいのか」と考えたことがあるはずです。彼の話に耳を傾けることで、あなたの苦しみは確実に減るでしょう。

日本の自動車産業
日本経済を支える大きな柱 自動車産業の出荷額は年約52兆円で、これは国内すべての製造業出荷額の2割を占める。
日本人の生活を支える 国内の自動車関連企業で働く人は約550万人で、これは国内すべての就業人口の1割に達する。
中国ではまだまだ 中国での自動車販売シェアでは、トヨタ5%、日産4%、ホンダ4%にすぎない。

フォルクスワーゲン18%、GM9%、ヒュンダイ9%、上汽9%にまったく及ばない。(2014年)

参考資料

http://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/GB/04.pdf

下請け中小企業(自動車部品メーカー)ならではの、就業中の不満、大変さ、辛さと悩み

悪しきビジネス慣習が横行する下請け職場は有能な人にとって地獄でもある。無能な同僚と同じ評価が下される苦痛も。

辞めたい理由と悩み1:ものづくりに携わる喜び、アメリカ赴任、最高の企業ライフだったが。

米山健一郎さん(仮名、41歳)の元の勤務先であるA社は、様々な自動車部品を製造し、完成車メーカーに直接納品していました。

完成車メーカーと直接の取引をしているので、A社は「1次下請け自動車部品メーカー」または「1次サプライヤー」と呼ばれます。A社に部品を納品している会社を2次といい、2次に部品を納めている会社は3次となります。

米山さんの担当は、A社の主力製品であるカーナビとカーオーディオです。米山さんは大学を卒業後、大手総合商社に入社しましたが「商品を右から左に流すだけの仕事ではなく、ものづくりに携わりたい」と感じ、しばらくしてA社に転職しました。

A社入社後は本社の営業支援部門に配属され、営業のなんたるかをみっちり叩き込まれました。ここに配属された新人は、通常は1~2年で支社や営業所に異動させられるのですが、米山さんは5年も在籍しました。

米山さんが「俺も早く同期のように顧客回りをしたい」とあせり始めたころ、ようやく異動の辞令がありました。

アメリカ支社への転勤です。

A社はいまや、グローバルカンパニーなので海外派遣自体は珍しくありません。しかし、新人の2カ所目の勤務地として、A社の主要マーケットであるアメリカに配属されるのは大抜擢です。もちろん米山さんの同期の中で初の快挙です。

英語が得意な米山さんは、意気揚々と大陸に足を踏み入れました。米山さんの現地での顧客は、国内で付き合いがあった完成車メーカーの現地法人でしたから、「仕事内容は変わらず、日本語を英語に替えるだけだろう」と軽く構えていました。

ところが、同じ完成車メーカーの同じブランドのクルマでも「日本仕様」と「アメリカ仕様」は大きく異なりました。

例えば、右ハンドルと左ハンドルの違いがあるだけで、ハンドル近くに備え付けるカーナビは、電気配線を大きく組み替えなければなりません。

米山さんはそのような細かい要望を聞き入れ、自社の開発陣に伝えなければなりません。米山さんはこれまでも製品知識をたくさん頭に詰め込んできましたが、「技術者並みの知識が必要になる」と覚悟を決め、あらためて勉強することにしました。

「受注できるかどうかは、完成車メーカーの開発者の要望に応えられるかどうかにかかっています。『アメリカ人開発者』と聞くと、大雑把な印象を持つと思うのですが、そのようなことはありませんでした。求めるレベルはとても高く、ミリ単位での変更も珍しくありません」

ただ、ビジネス大国での仕事の進め方は、米山さん性に合っていたといいます。

結果こそすべて。

ですのでアメリカ人スタッフは、仕事を完璧にこなしてしまえば退勤時刻前に帰ってしまうこともありますし、バカンス期間に入ると平気に後任者に任せて1カ月以上の休みを取ります。

当時、独身だった米山さんはアメリカ流をとことん真似て、有給休暇をフルに使ってあの広大な国土を縦横無尽に放浪しました。

アメリカに来てから1年半、仕事の評価が定まり、プライベートも充実し始めたころ、帰国命令が出ました。

米山さんは「羽を伸ばしていることが、本社の耳に入ったのかな」とあきらめた気持ちで荷造りに取り掛かりました。

帰国後の配属先は、地方の営業所でした。米山さんはここで、「この会社の本性」を見せつけられることになりました。

「本社にいたころもアメリカでも、薄々『そうじゃないかな』という感じはあったのですが、ダイナミックな仕事に関わることができる興奮や、新しい知識や新しい仕事仲間が得られることの喜びが大きすぎて、会社の本性をあえて見ないようにしていたんです」

営業所ですごした5年半に、米山さんに何が起きたのでしょうか。米山さんは何を見たのでしょうか。あなたも同じ自動車部品業界に居る者として、とても気になるのではないでしょうか。

1次サプライヤーが強くなった理由
取引のオープン化 完成車メーカーの締め付けが厳しかった「クローズ」の時代は、1次サプライヤーは特定の完成車メーカーのみに製品を供給していた。しかし「オープン」化の波によって、1次サプライヤーはいくつもの完成車メーカーと取引するようになった。
選択権は1次サプライヤー側にある 「取引のオープン化」においては、完成車メーカーが取引先を増やしているのではなく、1次サプライヤーが選択肢を多くもつようになっている。
モジュールとは 完成車メーカーのかつてのクルマづくりは、「1個の部品」を3万個集めて組み立てる、というイメージ。

しかしいまは、1次サプライヤーが「300個の部品」を組み立てて、それを完成車メーカーに納めている。

つまり現代の完成車メーカーは「300個の部品が組みあがった大きな部品」を100個集めてクルマをつくっているイメージ。

この「300個の部品が組みあがった大きな部品」をモジュールという。

モジュール化の進展が1次サプライヤーを強くした モジュール化が進んだことで、完成車メーカーは「モジュールをくっつけるだけでよい」という状態になった。

また、リコールになるような故障が発生しても、完成車メーカーは発生場所のモジュールを特定するだけでよく、原因究明や対策や謝罪や補償は1次サプライヤーに押し付けることができる。

しかし次第に、「モジュールづくりこそクルマづくり」と言われるようになり、1次サプライヤーこそが「クルマのつくり手」となってしまった。

また1次サプライヤーは、そのモジュールを他の完成車メーカーにも売るようになった。

これにより「自動車部品の価格決定権」は、完成車メーカーから1次サプライヤーに移ったのである。

参考資料

RIETI - 日本の自動車産業における完成車メーカーと一次サプライヤーの取引構造とその変化
経済産業研究所(RIETI)

http://repository.kyusan-u.ac.jp/dspace/bitstream/11178/174/1/02_Uyama.pdf

辞めたい理由と悩み2:人事評価システムがおかしい。社内の支援が受けられない。「なんで私がこんな雑務を」

若くしてアメリカ勤務を経験した米山健一郎さん(仮名、41歳)は、日本の地方の営業所に配属され、愕然としました。

この人事はもちろん左遷ではなく、この1次下請け自動車部品メーカー(1次サプライヤー)A社の営業職の人事としては、普通の流れです。

だから、米山さんが地方勤務に驚いたわけではありません。

米山さんは「おかしいな」と感じ始めたのは、A社の人事評価システムです。業績を上げても評価されず、そもそも業績の評価基準があいまいで、なおかつ、明らかに業績を上げていない社員もそこそこ評価されているのです。

評価基準のあいまいさについて、米山さんは次のように語りました。

「自動車部品メーカーは、完成車メーカーの開発スケジュールに合わせて仕事をします。つまり、人事部などの『評価者』は、この開発スケジュールを把握していないと、自社の社員が『なぜこの時期にこの仕事をしているのか』が分からないのです。しかし『評価者』たちは、完成車メーカーの開発スケジュールを把握するような面倒なことはしないのです」

また、一般的な企業は営業職を「獲得した契約金額の大きさ」で評価しますが、A社の顧客は事業規模がバラバラなため、「獲得した契約金額」で評価してしまうと不公平が生じるのです。

例えば、巨大メガ企業を担当する営業パーソンは、1件の契約を獲得しただけで莫大な金額を計上できますが、より規模が小さい企業を担当する営業パーソンは、10件の契約を獲得してもその金額に達しません。

米山さんは「小さな完成車メーカーを担当する営業パーソンは、苦労と努力と実績を重ねても評価は上がりません。なのに、誰がどの企業を担当するかという『担当分け』は、営業所長の一存で決まってしまうのです」と憤っていました。

また、A社の営業活動では、先方との技術的な話が欠かせないため、米山さんたちは社内の他部署との連携が必要になります。

「技術部門ときちんと連携してスムーズに進んだ営業活動」と「他部署との連携が欠けたために混乱した営業活動」は、きちんと分けて人事評価をしなければならないはずですが、そうしたことはなされなかったのです。

また、外で走り回っている営業パーソンを支える営業支援部署がまったく機能していないことも、米山さんをいらだたせました。

「新たな案件が発生すると、営業支援部署の人たちは露骨に嫌な顔をしました。営業先で激しい議論を戦わせて自分の会社に戻っても、味方がいない状況です。資料づくりや連絡調整は彼らの仕事なのに、色々な理由を付けて後回しにしようとするのです。それで仕方なく自分でパワポをつくったり、関係者にメールを送ったりしていました。深夜の営業所でパソコンに向かいながら『こんな雑用、なんで俺がやらなきゃならないんだよ』って思っていました。でもそのお陰で、会社を辞めるころには簡単な設計資料なら自分でつくれるようになっていました(笑)」

日本政府も強力に自動車部品メーカーを後押し
経産省が自動車部品メーカーを支援するための部署を開設 経済産業省は2016年に、自動車部品の国際競争力の強化を目指し「自動車部品・ソフトウェア産業室」を設置した。
ニッポン経済の力の源泉 経済産業省は自動車部品メーカーのことを「日本の経済を支える屋台骨として最も重要である自動車産業の競争力の源泉」と高く評価している。
なぜ国が自動車部品メーカーを後押しするのか 自動走行、次世代自動車、安全運転支援システムなど、自動車業界の事業環境は大きく変わろうとしている。

国としてもこの分野を一層効果的に支援していく必要がある。

参考資料

http://www.meti.go.jp/press/2016/10/20161014002/20161014002.html

辞めたい理由と悩み3:社内に脈々と流れる「年功序列は正しい」という思想。

米山さんは、A社の年功序列人事の強さについても不満を持っていました。

「世界で戦っている会社なのですが、最新技術を生み出している会社なのですが、企業体質は創業当時のままなのです。明らかに業績を上げていない社員も、そこそこ評価されていました。目立った問題を起こさなければ昇進できてしまう仕組みが、いまだに残っているのです」

米山さんは、勤務先の営業所の上司たちを「仕事のできない管理職」とみなさざるをえませんでした。

「他部署の管理職の決済が必要なとき、私は自分の上司にその調整を頼みます。しかし上司は一向に動いてくれないのです。上司が動かない時間は、そのまま顧客を待たせる時間になります。それで仕方なく、私は自分の上司に、他部署の管理職に直接交渉してもいいかと許可を得るわけです。すると上司は『そうしてくれると助かる』と言って安堵の表情を浮かべるのでした」

米山さんは地方営業所の勤務が2年目に入ったときに我慢の限界に達し、本社に出張した折に、人事部に出向いて職場の惨状について相談しました。

「すると人事課長は平然と『うちの会社が働きやすいのは、年功序列がしっかりしているからだよ』と言ったのです。

さらに『アメリカ勤務の経験があるからって地方の営業所を守ってきた人たちを下に見るような発言はするな』とも言われました。あたかも、仕事の効率を高めようとする私の方に非があるような言い方でした」

人事課長はその面談の最後に、米山さんに向かってこう言ったそうです。

「君は優秀だけど、昇進をあせらないようにね。君の先輩たちが昇進を終えなければ、君の代の昇進はないから」

これは人事課長ひとりの考えではなく、この会社に脈々と流れる思想でした。部次長職までは、実力に関係なく同期はそろって昇進するのでした。

昇進と給料に大きな差が出るのは、50代以降、部長職以上でした。米山さんは「自分はそれまで待てそうにない」と感じ始めました。

辞めたい理由と悩み4:経営判断が遅い。書類1枚つくるのに何カ月かけているのか。取引先にも呆れられる。

「判断の遅さ」も、米山さんのストレスを増やしました。

社内の複数の部門が関わり、投資額が大きくなることが予想される案件は、なかなか事業に着手できませんでした。

そのような案件は契約金額が大きく、営業職としては「必ずものにしたい」仕事なのですが、社内の承認システムが複雑で遅々として進まないのです。

米山さんたち営業パーソンは、顧客の依頼内容をA社独自の書類様式に書き写さなければなりません。これは行政機関に書類を提出するときと同じ手続きで、まさに「お役所仕事」です。

その書類様式は、社員だけが閲覧できるデータベースに保存されていて、それをダウンロードしなければなりません。

100種類以上ある書類様式から、適切なものを選択するのは至難の技です。間違った書類様式で書類を作成し、上司や他部署の管理職の印鑑をもらった後に間違いが発覚したら、またいちから作り直しです。

中には、「僕は同じ案件の書類に2度も印鑑を押さない」と言う偏屈な管理職もいます。そういうときは、米山さんは自分の上司を連れて、その偏屈な管理職に謝罪しなければならないのでした。

「私がお得意様のお客さんに『納期は2カ月です』と伝えると、お客さんは『じゃあ4カ月はかかるってことだよね』と言います。それくらい、うちの稟議や決済の遅さは、社外でも有名だったんです」

自動車部品メーカーの、しかも1次下請けの社員であるあなたなら、米山さんと同じ気持ちを抱いているのではないでしょうか。

仕事は面白い、社会に貢献しているという自負もある、だけど会社の古い体質になじめない――。

1次サプライヤーの中には、創業家の力が強すぎて雰囲気が悪くなっている企業もあります。効率化より社内の掟を重視する機運がまだまだ強いのです。

日本経済の新興勢力であるIT企業やネット企業とは、まったく企業文化が異なります。米山さんは結局、その優良1次サプライヤーであるA社を12年で見切り、転職しました。

転職先企業について米山さんは次のように語ってくれました。

「いまの勤務先は人事評価は明確で、『結果』と『正しいプロセスを踏んでいるか』どうかが問われます。管理職の判断は素早く、変な根回しも要りません。純粋に仕事に打ち込める環境で、とても快適です」

この言葉は、いまのあなたに強く響くのはではないでしょうか。

あなたも「純粋に仕事に打ち込める環境」と「快適」性を手に入れたいと思いませんか。それには時に転職をも視野に入れることです。

1次サプライヤーが活躍できる分野は確実に拡大する

今後、爆発的な成長が見込める電気自動車と燃料電池自動車は、モジュール化しやすい分野。つまり1次サプライヤーが活躍できる領域がさらに広がる。

2014年(実績) 2030年
従来車 76.0 30~50%
次世代自動車 24.0% 50~70%
ハイブリッド車 21.6% 30~40%
電気自動車、プラグイン・ハイブリッド車 0.68% 20~30%
燃料電池自動車 0.0% ~3%
クリーンディーゼル車 1.7% 5~10%

参考資料

http://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/GB/04.pdf

では、下請け中小企業(自動車部品メーカー)に勤めるあなたはどうすればよいのでしょうか?この先もつらい現実に耐えながら生きていかなけばならないのでしょうか?いいえ、あなたの人生を変える解法」はきちんと存在していますので、それを今からご説明いたします。

あなたの「会社を辞めたくなる悩み」への対応策

あなたにはぜひ転職をおすすめしたいのですが、しかし「やり残したこと」がある状態では次のステージに進んでほしくありません。まずは今の置かれた状況で下記のことを最低限試してみるべきでしょう。

1.今の職場での最高峰を無心でまず目指せるか試す

「完成車メーカーより1次サプライヤーの方が強い」というトレンドは、日本の自動車産業に限りません。というより、部品をある程度の大きさまで組み立ててから完成車メーカーに納める「モジュール方式」は、ドイツが発祥とされています。

モジュール方式によるクルマづくりが世界中に広がれば、あなたがいまお勤めの1次サプライヤーは、日本経済の柱になるのです。

そんな素晴らしい会社を、いっときに考えで捨ててしまうのはもったいない話です。もう少しこの業界で頑張ってみませんか。

というのも、米山さんが勤めていたA社の人事課長が言った「年功序列システムは労働者に働きやすさをもたらす」という考えを肯定する専門家もいるのです。

年功序列のアンチテーゼとして出された「成果主義」が、崩壊しているのは事実です。東京大学大学院経済学研究科の高橋伸夫教授は「『成果主義は失敗だった』と企業は明言せよ」とまで述べています。

さらに、企業が成長を目指すのであれば、年功序列制に戻るべきだとも主張しています。

「温故知新」という言葉を用いるまでもありませんが、古いと感じる制度こそがその企業の力の源泉になっていることは珍しくありません。

いまのあなたは、会社のしがらみに苦しめられているかもしれませんが、これから社内ポジションが上がっていけば、そのしがらみに助けられることがあるかもしれません。

苦しいときこそ頑張りどき、なのかもしれません。

参考資料

http://business.nikkeibp.co.jp/article/pba/20080626/163800/

2.技術系社員との付き合いを増やし人脈を強化

自動車部品メーカーの営業職ということは、あなたは文系ではありませんか。しかし自動車部品メーカーというものづくり企業は、理系の人間が多いはずです。

また、経営陣の多くも理系人間で占められていませんか。だとしたら、社内人脈を、技術系社員に広げてみませんか。

技術系社員は、社内のごたごたに驚くほど関心を示しません。彼らの関心事は、最新技術の開発だけです。

彼らとコミュニケーションを取るようになると、「人事評価」や「年功序列」や「出世のスピード」が瑣末に感じられるようになるでしょう。

例えば自動ブレーキシステムのモジュールを開発している技術者は、「どうやったら交通事故による被害者が減るか」について真剣に考えています。

さらに、より良い製品が出来上がったら、すぐに「どうやったら安くつくれるか」について考え始めます。安くつくらないと社会に普及しないからです。

あなたのような営業パーソンが技術者の情熱に触れると、自分の仕事の意義、つまり「自社製品を売ることの正当性」が理解できるようになり、それはあなたの営業活動を一変させるでしょう。

自分の周囲の人間だけを見て「この会社にはろくな人材がいない」と判断するのは、正しいとは言えないでしょう。別の部署の人と付き合うことは、会社を見直すチャンスになるはずです。

3.下請け自動車部品メーカーを辞めて他業界に転職する

1次下請け自動車部品メーカー(1次サプライヤー)の営業職という、誰でも就けるわけではない「うらやましい仕事」を投げ打った米山さんは、完全に職場を見限りました。

退職に際し、「惜しい気持ち」は1ミリもなかったそうです。

もしかしてあなたも同じ状況でしょうか?ならば、「いま以上に頑張って」というアドバイスも、「技術系社員との付き合いを増やす」といった提案も、無意味といえるでしょう。

ならば、思い切って転職するのも有効な手段です。

あなたを待つ企業は、たくさんあります。しかも、いまより良い待遇で迎えてもらえる可能性が高いです。いまの頑張りが転職先で報われた人は、何万人もいます。

他業種への転職…不安はよくわかります。

しかし、まく下請け自動車部品メーカーを抜け出して、人生の立て直しに成功した人の多くは、下請け自動車部品業界以外への道を選択した人々なのです
この件について、以下でより詳しく説明いたします。

下請け自動車部品メーカーの辞め方とタイミング

辞め方とタイミング1:古い体質の会社は退職前の引き継ぎ業務も硬直化しているので注意

転職活動それ自体もかなり大きな仕事ですが、しかしその前に退職という大仕事も待っています。「退職なんて簡単」と思っているあなたには、やはり米山さんの体験が教訓になるでしょう。

米山さんが退職の意向を上司に伝えると、慰留はあったものの、退職日は1カ月半後に決まりました。

そして3日後には米山さんの後任者が決まり、米山さんは上司に「新規業務はもちろんのこと、ルーティンワークもやらなくていいから。その代りこいつ(後任者のこと)にしっかり引き継ぎするように」と命じられました。

この段取りの良さは、さすが大手企業といったところです。しかし、この引き継ぎ業務にも「古い企業体質」が残っていました。

米山さんが後任者に指導していると、上司がことあるごとに「進捗状況を報告せよ」と横槍を入れるのでした。

米山さんが口頭で説明すると「書類をつくれ」と言い、書類をつくると「これでは分かりにくい」とケチをつけるのでした。後任者が「米山さんの説明は分かりやすいです」と言っているにもかかわらずです。

しかも、その上司はほとんど米山さんの仕事を把握していなかったので、米山さんはいちから説明しなければなりません。挙句の果てに「こんな大事なことを、私の許可を得ずに進めていたのかね」と言われる始末です。

「もちろん、上司の決裁はもらっています。稟議書は何枚も残っていて、そこに彼の印鑑がいくつも押されてあります。上司の目的は、『担当者の退職後も業務が途切れない引き継ぎ』ではなく『部下の引き継ぎ業務をきちんと監督した証拠』なのです。だから、書類づくりにこだわったのです。呆れるやら情けないやらで、ほとほと疲れ果てました」

米山さんはこのように振り返ります。

あなたが米山さんと同じ目に遭うのは確実です。こうならないようにするためには、「辞めたい」と思った段階で、引き継ぎの準備に取り掛かることです。

日常業務の「やることメモ」を会社のパソコンに打ち込むだけでも、引き継ぎ業務の効率化を図ることができます。

辞め方とタイミング2:会社契約の賃貸住宅を退去する際にトラぶらないように

あなたはいま、どこに住んでいますか。米山さんは地方の営業所に勤務していたので、会社がマンションオーナーから借り上げた部屋に住んでいました。いわゆる「借り上げ社宅制度」を利用していたのです。

もし、あなたが米山さんのように社宅に住んでいるのでしたら、退去時には余計なトラブルに巻き込まれないようにしてください。

米山さんはたくわえがあったので、退職後は長期の海外旅行に出ようと計画していました。そこで、退職後の一定期間、借り上げ社宅であるマンションに住み続けたいと思っていました。

米山さんが不動産屋を通じてマンションオーナーに確認すると、「同額の家賃収入を確保できるならば、契約者はこだわらない」という回答を得ることができました。

ところが会社からまた横槍が入ったのです。

営業所の総務担当者が、マンションオーナーに対して「米山と個人契約をするなら、その時点でうちとの契約が打ち切られたことになり、米山が退去した後に再契約することはない」と通告したのです。

マンションオーナーは、A社のような大企業に借り上げてもらって安心できていたので、米山さんの申し出を断るしかありませんでした。

「もちろんそんなことをした担当者を怒鳴りつけましたよ。そして本社の人事部に電話をして、会社に貢献してきた社員にこんな仕打ちをするのかって言いました。それで1カ月だけは個人契約できることになりました。本当は3カ月くらいヨーロッパを回りたかったのですが、それは断念せざるをえませんでした」

従業員の数が増えれば増えるほど、企業は社員の個人的な事情に耳を傾けられなくなります。あなたの現在お勤めの企業の従業員数が、数千人をゆうに超える場合、米山さんを襲った悲劇にあなたも見舞われかねません。

会社の福利厚生がどの時点で打ち切られるのか、いまのうちからそれとなく確認しておいた方がいいでしょう。

下請け自動車部品メーカーの勤務経験が優遇される、より就労条件のよい「おすすめ転職先」の例

1.外資系の自動車部品メーカーに転職する

再三申し上げてきたとおり、自動車部品メーカーに勤める魅力はとても大きいといえます。ですので、国内資本の自動車部品メーカーに勤めているあなたにおすすめする転職先は、外資系の自動車部品メーカーです。

内資企業に疲れたあなたが外資系に勤めるメリットは、2つあります。「公正な業務評価」と「生産性の高さ」です。

公正な業務評価は、温情やしがらみを一切排除した「数字のみ」の世界です。厳しさはありますが、仕事での頑張りが給料に直結するのでやりがいが大きくなります。

「生産性の高さ」も似たような発想から生まれています。外資系企業には「上司が残業しているから部下が帰りにくい」といった悪しき風習はありません。

有能なスタッフが、できの悪い管理職の下で働いているために十分なパフォーマンスをあげられなければ、すぐに人事異動が発令されます。

ドイツのロバート・ボッシュの日本法人「ボッシュ(株)」は、東京、神奈川、愛知、北海道、九州などに拠点を持っています。

営業職だけを見ても、「エレクトリカルドライブ事業部、神奈川県」「ディーゼルシステム事業部、埼玉県」「オートモーティブアフターマーケット事業部、東京都」などがあります。

つまり、あなたの「いまの事情」に合致した部署に就ける可能性が大きいのです。ボッシュは、自動運転システムでもトップランナーのひとりです。

2016年に発表した自動運転車は、緊急時は運転者が操作しなければなりませんが、操舵や加速や減速は車が考えて行います。なんとボッシュは、日本国内でこのプレゼンテーションを行うときに、ホンダ車を使ったのです。

日本で発表するので日本車を選択したのですが、しかしボッシュはドイツメーカーですので、ドイツ車を使ってもなんら違和感はありません。

しかしあえてホンダ車を選ぶことで、「ボッシュは日本の完成車メーカーにも食い込んでいる」ことをアピールしたのです。また日本法人のボッシュ(株)は、キャリア採用のページで「離職率1%」をうたっています。いうまでもなく、離職率の低さは働きやすさを意味します。

ボッシュに限らず、外資系の日本法人は「日本人労働者の気質」をかなり研究しています。日本車が外国人のニーズに応えることで成功したように、いまは外資系メーカーが日本流の働きやすさを追い求めているのです。

それはひとえに、あなたのような優秀な人材を迎え入れたいがためです。

参考資料

https://progres11.jposting.net/pgbosch/u/job.phtml
Bosch社、「レベル3」の自動運転実験車を公開
 ドイツBosch社は2016年9月28日、米SAE(自動車技術会)が定義する「レベル3」の自動運転に対応した実験車両を公開した。日本法人のボッシュが同日に北海道で開催した試乗会で、この実験車両を用いたデモンストレーションを行った。

2.営業ノルマの緩い2次下請け自動車メーカーに転職する

1次サプライヤーにお勤めのあなたならご理解いただけると思いますが、あなたが2次サプライヤーに転職することは「逃げ」でも「ランクを落とすこと」でもありません。

1次サプライヤーが完成車メーカーのものづくりを取り込んだように、いまや2次サプライヤーは1次サプライヤーに追いつけ追い越せの勢いを持っています。

2次サプライヤーが1次サプライヤーに対し、部品開発に必要な試作品や改善案を提供することは、もはや当たり前のことです。

しかもあなたは「1次サプライヤーが求めるもの」も「完成車メーカーが必要としている技術」も知っているわけですから、2次サプライヤーが「いますべきこと」を提示することができます。あなたは、2次サプライヤーの成長エンジンになることができるのです。

また、現在お勤めの1次サプライヤーと関係が深い2次サプライヤーに転職すれば、あなたの人脈がそのまま活かせます。

このタイプの転職を、「転職ロスが小さい転職」といいます。これは自身のキャリア形成に大きなプラスとなります。

あなたはこれまでに、「1次サプライヤーは完成車メーカーより格下だ」と思ったことは1度もないはずです。そうであれば、2次サプライヤーで働くことの大きな意義もご理解いただけると思います。

参考資料

http://www.smrj.go.jp/keiei/dbps_data/_material_/b_0_keiei/chosa/pdf/H19supplier2.pdf

3.カーディーラーの営業職に転職する

ものづくりから離れてしまうのですが、あなたに最後におすすめしたい転職先は、カーディーラーの営業職です。というのも、カーディーラーはいま、営業職のスキルについて大きな悩みを抱えているからです。それは「自動車の仕組みを知らない営業パーソンが増えている」という悩みです。

かつてカーディーラーの営業職の頭の中は、クルマの知識でいっぱいでした。排気量や馬力、走行性能、デザインのことを、自社製品だけでなくライバル車についても暗記していました。

それは、クルマを買う人にクルマ好きが多かったからです。

しかしいまや、クルマを買う人が求めるものは便利さです。それでほとんどのディーラーでは、「このクルマを買うと生活がこのように変わりますよ」といったセールストークを展開するようになりました。

ところが、性能やデザインにこだわったクルマ選びをしている人は存在し、そういう客たちは、「最近のカーディーラーの営業担当はとにかくクルマのことを知らなすぎる。自社のクルマでも馬力とトルクを暗記していない」と怒っているのです。

カーディーラーは、クルマについて詳しい人を求めています。

クルマのことをとことん語ることができる営業パーソンを、自分の店舗に配置したいからです。性能でクルマ選びをする人は、営業パーソンとのクルマ談義が盛り上がると、あっさり購入してしまうからです。

それでは、転職支援大手の「DODA」に掲載されているカーディーラーの求人票をのぞいてみましょう。

BMW、MINI

ディーラー各社合同募集

年収例

37歳1,300万円(入社4年)

高卒以上、未経験者歓迎、経験者優遇
フォルクスワーゲン、アウディの東京の販売会社 42歳1,000万円(経験7年)

36歳800万円(経験7年)

新車、認定中古車、整備、保険の販売
メルセデス、ジープ、キャデラックの関東の販売会社 28歳1,190万円 輸入車の新車、中古車販売
フェラーリ、ランボルギーニの名古屋の販売会社 月給24万円+インセンティブ+賞与年2回 ロールスロイスやベントレーも取扱い。新車販売、アフターフォロー。
日産の埼玉県の販売会社 年収252万~600万円 日産、ルノーの新車販売、中古車の買い取りと販売、車検など

外車ディーラーは年収の高さが魅力ですが、月に何台も売れるという商品ではないため、収入の増減はかなり大きくなります。

一方、国産車ディーラーの求人票では派手な年収表示は見かけませんが、それでも「普通のサラリーマン」よりは稼ぐことができそうです。

同じ営業でも、1次サプライヤーはBtoBですのでビジネスパーソンが顧客になりますが、カーディーラーはBtoCとなるので一般消費者が客になります。ですのでそれなりの「頭の切り替え」は必要になります。

BtoBの営業では、仕様やコストがシビアに問われますが、おもてなし術やトーク力はそれほど必要としません。

一方のBtoCの営業は、客を喜ばせることから入らなければなりません。とはいえ、あなたほどの知識を持っていれば、一度顧客の心をつかんでしまえば、その客はあなたのことを質問責めにすることでしょう。

そしてあなたも、顧客に新開発の技術のことを理解した上で運転してもらえれば、これ以上の幸せはないはずです。

クルマを部品の集まりとしてではなく、全体としてとらえることができるのも、あなたの大きな喜びになるでしょう。

参考資料

資料「自動車ディーラー-小売、販売・サービス職 の転職・求人検索結果」(DODA)

人生の選択肢は常にあなた自身が持っている

学習塾や予備校勤務のあなたの人生を変えるために、まず一番注目すべきことは「自動車部品サプライヤー以外の職場もあることを知る」ということです。
案外、外部と交流がない自動車部品業界人は井の中の蛙になることが多いです。
自分の会社以外のことを全く知らないというケースも非常に多いようで、勇気を出して一歩外に踏み出せば大きな海が広がっているということを、改めて考えてみてはどうでしょうか。

兎に角、どうしても今の悩みが解決できなければ「別に辞めればいい」「辞めたっていいんだ」「自分は自由に人生を選択できるんだ」と割り切ること。

周囲からの目を気にしたり、あなたの人生と無関係な上司のメンツを立てて、自分の人生を後回しにしてします思考こそが「今の職場を辞められなくなってしまう」ことの最大原因であり、悩みをより深くして人生を間違えてしまう事につながります。

転職コーディネーターに無料相談することから始める

自分自身でまず何をしてよいかわからないならば、人材紹介会社に登録するのも手。
転職コーディネーター経由で他の業界、企業の内情を知ることができますし、冷静な第三者の目で、あなたのスキルと経験を活かせる新しい職場を用意してくれます。

また、辞めづらい今の職場で、(転職先を紹介してもらった後に)スムーズに次の職場に移動するための方法やタイミングなどもしっかり教えてくれますよ。

いきなり仕事を辞めたりはせず、まずはじっくり転職エージェントと無料のアポイントを取って、今後の動き方を相談しつつ、あなたの希望に沿った新天地候補をじっくりと紹介してもらうべきでしょう。

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