
野村 龍一

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記事の目次
専門学校の教員は、教員にして教員にあらず(?)実態は雑務にまみれたブラック企業社員と変わらない…
「教育者」といえば聞こえはよいものの、専門学校の教員が行う仕事のうち、本当に教育的な指導を行うのはごく一部であり、年々雑務の割合が増えています。
専門科目のみの授業ではなく、少ない教員で多くの学生を回さなければいけないという学校側の事情から、時には自分の専門外の分野まで新たに勉強して授業をすることもあります。
また、クラス制をとっている専門学校の場合、1クラス30人ほどの学級の担任も兼務し、ひとりひとりの学習管理、就職指導までを請け負います。
それだけではなく、学生を集めてくるのは教員の仕事ではないものですが、専門学校では教員も学生募集を行います。
オープンスクールの企画・運営から広報まで、授業やクラス運営の他に行うわけですから、残業残業の毎日…。
これで収入がともなえばまだ溜飲を下げられますが、新卒で入った当初のまま額面はほとんど額面が変わらないから、毎年多くの教員が退職していきます。
教育に持っていた熱い志は遥か彼方へ、厳しい労働環境と学生やその親への対応に追われる毎日は、とても恵まれているとはいえないでしょう。
専門学校教員業界ならではの、就業中の不満、大変さ、辛さと悩み
辞めたい理由と悩み1:平日は授業、土日はオープンスクールで休みなし
大学では、AO入試が盛んになる夏前の時期と、センター試験前の時期などに集中して3~5回程度行われるオープンキャンパスですが、専門学校は同じような年代の学生を大学と取りあうために、オープンスクールの開催頻度が非常に高くなっています。
春から秋にかけては、毎週土日のどちらかはオープンスクールで出勤していますし、代休や有給をとろうにも平日には授業が朝から退勤時間まで入っていて、なかなか休みをとることができません。
厳しい時期(4月~7月)には20連勤は当たり前です。
年間休日は90日いけばいい方で、中には業務が終わらないばかりにタイムカードを切らずにこっそり休日出勤したり、朝方まで残業している教員もいます。
さらに、検定や資格取得を目的としている専門学校ならではの悩みがあります。
それは、土日・祝祭日に行われる検定監督という仕事が頻繁にあるということです。
良心的な専門学校では、検定を主催している法人から入る検定監督料がそのまま検定監督の教員の給料に反映されることもあります。
しかし、ほとんどの専門学校では、毎月いくら土日・祝祭日に休日出勤をして検定監督をしても、給料には反映されず、代休が増えるのみです。
代休が増えても、休みたい平日には授業が詰まっていることは前述したとおりですから、検定監督はするだけ損ということになります。
また、大学では休日出勤に手当がつくのが当たり前ですが、専門学校では手当すらつきません。
平日は90分授業を最大で4コマ入れられ、休み時間にも学生が雑談や欠席届等の書類提出に来るため休めず、お昼休みは実質10分という日もあります。
それでも残業代を出してもらえないし、持ちコマが指定のコマ数(相当高く設定されている)を越えないと超勤手当が発生しないので、ただただ疲労とストレスだけがたまっていくことになります。
専門学校をのぞいてみると、年配の教員ほど疲れていて、土日も関係なく学校の照明が煌々とついている光景が見られます。
辞めたい理由と悩み2:学生数減で、本来は教員の仕事ではない学生募集も給料据え置き。プロ並みの広報力を求められる
専門学校教員は授業のプロではなく、雑務のプロではないかと思うほど、授業以外の仕事の時間が増えてきています。
代表的なものは、学生募集です。
大学では、入学相談・学生募集などの専門の職員が複数名事務局に在籍していて、広報やPRの専門知識を持つ職員が学生募集を行うものです。
ところが、専門学校には入学相談係はいるものの、教員も学生募集に深く関わることを求められます。
具体的には、学科の説明を行う際のプレゼン資料の作成、オープンスクールでのプレゼンの実施、オープンスクールでのクロージング、学科の特徴をあらわした資料、挙句の果てに学校のパンフレット作成にまで携わることになるのです。
この資料作成やオープンスクールの企画・運営・実施が授業準備時間を食いつぶし、学生募集のために授業準備が不十分になるという本末転倒な事態が起こっています。
学生募集が芳しくなく、来年度の学生数が目減りした際には、容赦なく「専門学校教員の」賞与はカットされます。
つまり専門学校の教員は、本来の教育者としての業務において、どれだけ質の高い授業をしていても、学生募集で学生が集められなければ評価されないのです。
教育者になりたい!学生への学習指導を生きがいとしたい!という志望動機で入社すると、実際の業務において授業は30%程度であり、他は上記のような専門外の仕事で、落胆することになるでしょう。
辞めたい理由と悩み3:近すぎる学生との距離がプライベート時間を削る…休日・深夜問わず学生からのLINE攻撃
専門学校では資格を取得し、即戦力を武器にした高就職率・専門職への就職を目的として入学してくる学生が多いものでした。
ところが、大学の専門学校化が進み、いまや大学でも専門学校のように資格を取得し、即戦力となるようなカリキュラムが採用されています。
学習面で大学と差別化できないなら、「学生との距離の近さ(学生の面倒をよく見ますよという約束)」を売りにしようとしている専門学校が増えています。
少子化が進んでいる現代では、少ないパイ(学生)を大学からいかに持ってくるかという視点から学生募集が行われている専門学校。
もはや授業はオマケで、先生のキャラや、面倒見のよい先生がよく話をきいてくれるということを売りにしているのです。
困ったことに、専門学校の上層部からは「担任は学生とLINEを交換し、クラス管理に役立てること」というお達しがあります。
強制的に交換させられたLINEには、「明日のホームルームは何時に終わりますか?」「学校やめたいです」「試験って何時からですか?」「〇〇ちゃん(クラスメイト)に無視された」「明日学校って開いてますか?(盆や正月にもこの連絡が来る)」「家族にお前なんかいらないと言われて死にたい」など、学業に関係のないこと、さらには既に告知している試験時間についての問い合わせ(要は学生がただ聞いていなかっただけ)が時間帯を問わずに入ってきます。
週に1度あるかないか分からないような休日にこんなLINEが送られてきた日には、これだけで退職したい気持ちになる教員も少なくありません。
メディアリテラシーの低い専門学校生を相手にLINEを強要してくる上層部もどうかと思いますが、18歳になって一からメディアリテラシーを教育し直すことも業務の一環になってしまうのです。
この先もつらい現実に耐えながら生きていかなけばならないのでしょうか?
いいえ、「専門学校教員の人生を変える解法」はきちんと存在していますので、それを今からご説明いたします。
あなたの「会社を辞めたくなる悩み」への対応策
1.非常勤講師となって数校掛け持ちする
上記で紹介してきたような学生対応や、学生募集などの雑務は、常勤講師のみが課せられる仕事です。
専門学校の非常勤講師は決められたコマ数で契約し、そのコマの授業が終われば、他の業務(出席管理くらいはしますが)はせずに即刻帰ることができます。
また、非常勤講師はオープンスクール開催とは関係ありませんから、土日も休めます。
ただし、非常勤講師の場合、1コマいくらというようにコマの単価が設定されていて、1つの専門学校だけではとても生活していけません。
非常勤講師の場合、退職金も出ませんし、福利厚生も常勤講師と同じというわけにはいかず、額面の給与は増えても手取りが目減りするという現実もあります。
よって、いくつかの専門学校を掛け持ちして、平日に十分なだけの授業を行って生計を立てるという対処法もあります。
2.広報の知識を得てキャリアアップにつなげる
何の専門学校かにもよりますが、特に私が従事してきた心理学という学問は、応用性が高い一方で、修士まで出てもつぶしがきかないという短所があります。
つまり、他業種への転職は非常に困難です。
ところが、専門学校で勤務したからこそ身についた広報の知識とスキルが転職時に見方になってくれることがあります。
本来は広報課・入学相談課などの仕事である学生募集の仕事は、専門学校教員としてこれからの時代増えていく一方でしょう。
それなら発想の転換をして、とことん広報に精通するという手があります。
どのようなフライヤーやDMが学生の目にとまるのか、保護者の好感度が高くなるポイントは何か、SNSを利用した募集形態など、広報に携わったからこそ身についた知識を使って、次の転職につなげるという対処法もあります。
3.大学教員にスカウトされる
専門学校教員の中には、本当は大学で教鞭をとりたかったけど、空いている枠がなかったり、自分のキャリア(発表論文数など)が足りなかったなどの理由で専門学校に就職した人もいます。
大学では、ゼミがあり、ゼミの教員との距離の近さを売りにしている大学はあるものの、SNSでのやりとりを強制するような大学はありません。
また、大学レベルになると、メディアリテラシーも身についている学生の方が多く、深夜や休日にどうでもいい内容のLINEで悩むこともありません。
専門学校でキャリアを積んで、その実績を大学が買ってスカウトされれば、専門学校のように学生からのLINEで眠れないというような環境からは脱することができるでしょう。
ただし、大学から声がかかるのはほとんどが縁故です。
大学や大学院での恩師に「今専門学校で勤務していて、空きがあれば助教から大学で働きたいです」というようなアピールをしていて、たまたまポストが空いたとき、恩師から連絡がきてスカウトされたという人もいますが、レアケース中のレアケースです。
4.思い切って転職を志す
大学教員スカウトも転職の1種でしょうが、思い切って他の専門学校に転職したり、全く別の業界に転職をすることは、もっとも専門学校教員の人生を好転させるきっかけになる1つの方法であるといえるでしょう。
転職にはそれなりの心の準備が必要となりますが、転職活動をやりきった後は「前の職場、何故もっと早く辞める決断をしなかったのか…今となっては不思議です」と感想を漏らす方が多いのが実際のところです。
他業種や他社への転職…不安はよくわかります。
しかし、うまく勤務を抜け出して、人生の立て直しに成功した人の多くは、今の職場以外への道を選択した人々なのです。
この件について、以下でより詳しく説明いたします。
専門学校教員の辞め方とタイミング
辞め方とタイミング1:退職は学生の卒業・就職を待つこと
専門学校教員のゴールは、学生を卒業させるとともに、希望の企業・施設等に就職させることです。
卒業年次の担任なら、学生の卒業と就職が決まる3月で退職するのがベストです。
それよりも早い段階で退職してしまうと、卒業を間近に控え、まだ就職の決まっていない学生を放り出す形になってしまうからです。
そのような学生を途中から引き継ぐ教員の負担はかなりのものですし、何よりも学生自身が「先生に捨てられた」という感覚を持って、すべてにおいてモチベーションを低下させることになってしまいます。
ただし、実際に職場に退職の意を表明するのは、9月頃が望ましいでしょう。
10月に入ると、前後期制の専門学校では後期の授業が開始されるとともに、翌年度の授業カリキュラム、授業担当者、担任の配置、校務分掌が始まります。
既にあなたの名前が多くの業務に割り振られてから退職の意を表明すると、また一から時間割などを組み直さなければいけなくなるのです。
よって、9月頃に退職の意を上司に表明し、実際に退職するのは卒業式後にすれば、最も周囲の職員・教員に迷惑をかけないで済むでしょう。
辞め方とタイミング2:進級年次の担任なら、新担任へきめ細やかな引継を
進級年次の担任をしていて転職・退職するなら、クラスに在籍するすべての学生のデータを新担任に引き継ぐ必要があります。
クラス担任をしていると、クラスの学生の性格、行動パターン、家庭背景、経歴を含めた膨大な情報を一人で管理することになります。
その30名ほどのクラスを引き渡すにあたって、これらの情報を間違いなく詳細に新担任に伝えなければいけません。
特にクラス内の人間関係については、初見の新担任が把握できずに問題が起こるケースがあります。
クラス内での恋愛関係、不仲について、現在と過去の状態・経緯を新担任に伝えておくことによって、元担任の退職後も引継後のクラスは安定していくでしょう。
辞め方とタイミング3:退職理由について、学生に嘘をつかなければいけないのは仕方なし
学生にとっては、教員がどんなに辛い思いで勤務していても、そこがホームであり、卒業しても元担任に顔を見せに来校する学生もたくさんいます。
自分が卒業した専門学校が、実はブラックだったなんていう事実は知らなくていいものです。
専門学校を退職していく人は、私を含めて皆さん学生には本当の理由を言わずに退職されていきます。
学生には「親の介護の必要があって」「現場に戻りたいという夢があって」「育児に専念したいと思うようになって」など、当たり障りのない理由を告げます。
しかし、本当のところは前述してきたように、厳しい労働環境や上がらない給与、目の前にいる学生との近すぎる距離が原因なのです。
最後の最後になって、教員との別れに涙している学生たちに嘘をつくのは、気が引けるものです。
専門学校教員の勤務経験が優遇される、より就労条件のよい「おすすめ転職先」の例
1.一般企業の広報に転職する
学生募集で培った広報力は、転職でも武器になります。
専門学校教員の中には、まったく知識がなかったのに、必要に追われて一眼レフカメラの操作や、イラストレーターやフォトショップをマスターした人もいるほど、広報としてのスキルが高くなります。
高校生や社会人のニーズを把握し、心を動かすようなプレゼンができるようになるのです。
また、高校訪問を行って、高校の進路指導教諭に対して専門学校を売り込むということも業務の一環に入っていますから、PRする力も身に付きます。
専門学校のパンフレット制作に携わっているうちに、出版・印刷会社との関係づくりができて、そのまま製作会社に転職した人もいるくらいです。
このような広報の知識やスキル、そして人脈を活かして、一般企業の広報に転職することもできます。
2.大学の教員(助教)に転職する
専門学校教員の中には、大学教員になる夢を捨てきれずに、日々研究活動を並行している人もいます。
そのような地道な努力と、大学の教員募集のタイミングがばっちり合えば、助教からにはなりますが、大学の教員になれる可能性もあります。
大学教員の中には、研究実績の他に資格を重視するところもありますから、専門学校在籍中に資格を取得して、それを武器に大学の助教になった人もいます。
ただ、大学教員は非常に希少な求人であり、ポスドクや現場での実績のある応募者もいますから、現実的に考えると、専門学校教員から大学教員になる道は非常に狭き道だといえます。
しかし、1度しかない人生ですから、まずは自分自身が一番つきたい仕事を諦めずに、転職活動をすることには、大きな意義があると思います。
3.指導内容に関する専門職現場に転職する
専門学校教員は、元々何かしらの専門的な知識や技術があって採用されている人がほとんどであり、中には現場で勤務していて、体調を崩して教員になったという人もいます。
たとえば介護福祉士として現場で勤務していたけれど、介護のしすぎで腰を痛めて現場では働けなくなった人が、介護福祉士養成専門学校の教員として働いていることもあります。
このように、元々専門的な知識・技術がある教員だからこそ、「現場に行く(戻る)」という選択肢があります。
現場で即戦力中の即戦力になれる中堅どころは、年齢にあまり関係なく採用される傾向にあります。
自動車系の専門学校なら整備士になる、調理系の専門学校なら料理人になるなど、教員になる前のキャリアを活かして転職することができるでしょう。
人生の選択肢は常にあなた自身が持っている
専門学校の教員勤務のあなたの人生を変えるために、まず一番注目すべきことは「現在の専門学校以外にも職場は沢山あることを知る」ということです。
案外、外部と交流がない専門学校業界人は井の中の蛙になることが多いです。
自分の会社以外のことを全く知らないというケースも非常に多いようで、勇気を出して一歩外に踏み出せば大きな海が広がっているということを、改めて考えてみてはどうでしょうか。
兎に角、どうしても今の悩みが解決できなければ「別に辞めればいい」「辞めたっていいんだ」「自分は自由に人生を選択できるんだ」と割り切ること。
周囲からの目を気にしたり、あなたの人生と無関係な上司のメンツを立てて、自分の人生を後回しにしてします思考こそが「今の職場を辞められなくなってしまう」ことの最大原因であり、悩みをより深くして人生を間違えてしまう事につながります。
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