
野村 龍一

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記事の目次
人気の公益団体は20年前の大手民間企業のような体質
「人気の官公庁、公益団体での事務のオシゴト!」「安定抜群!・風通しがよく働きやすい職場」などの大見出しを、派遣会社や転職サイトでよく見かけることがあります。
職種によるかもしれませんが、確かに仕事の量は民間企業よりも数段少なく、残業代などもきちんと支払われ、有給休暇もとりやすい環境です。いわゆる「ブラック企業」体質ではないのは間違いないでしょう。
「納税者への行政サービス」として、多額の税金で、さまざまな事業のが運営されています。基本的な行政サービスに加え、地域や物産のPR、空き室活用事業、最近では東京オリンピックに向けてのスポーツ振興事業や、「外国人おもてなし」の流行を受けて民泊促進事業が実施されています。
さらに人口減少が深刻な地域では、移住促進事業の一環として、婚活事業までもが行政主導で行われている地域もあります。どの事業にもたくさんの税金が投入されていますが、中には、「何のためにこの事業を実施しているのか?」「この事業によってどんな結果を求めているのか?」などのビジョンが明確でないものや、「本当に納税者の需要を満たしているのか?」と、存在そのものが疑問視され、明らかに見直しが必要だと思われる事業も、数多く存在しています。
民間企業と大きく違う点は、年間の予算や事業計画は、前年度に関係機関へ申請を出したうえで決定される仕組みで、申請が通った予算内で運営することが大前提となっている点です。
とにかく「予算ありき」で、「年度予算内を絶対にはみ出さないこと」「余った予算は無理をしてでも使い切らなければならない」という考えが根強く浸透しています。
民間企業では、ひとつの事業が失敗すると会社の存続が危機にさらされることがあるため、実施に至るまでにとても慎重になりますが、公益団体では、そういった危機感がないことから、費用対効果に対する職員の認識レベルについて、問題視する声もしばしば聴かれます。
既存の事業に修正を加えるにも限度があるなど、融通がきかないことや臨機応変さに欠ける一面も往々にしてあります。何か新しい事業を計画して実施できる環境にある団体は非常に少ないのではないでしょうか。
民間企業出身者にとっては「これでいいのかな・・」と疑問を持つ人も多いようですが、一方で「プレッシャーを感じずに仕事をしたい人」「割り切って仕事ができる人」「上司に従順な人」「ルーティンワークが好きな人」には文句のつけようのない仕事といえます。
逆に「キャリアアップやスキルアップを求める人」「完全成果報酬派で結果を出してきた人」「常に新しいことを模索するチャレンジ精神旺盛な人」には不向きな仕事かもしれません。
公益法人の業界ならではの、就業中の不満、大変さ、辛さと悩み
辞めたい理由と悩み1:税金の支出に対する敬意はわかります…でもいつもデスクは紙だらけ
既存の事業の進捗や、終了後の報告、外出先での打ち合わせ記録、見積書の徴取、請求書の発行、物品の購入(ノート1冊でも)など、すべて紙面による決裁が必要です。
それぞれの決裁時には、誰が見ても事業の内容がわかるように、こと細かな資料を紙面で準備しなければなりません。なぜなら、使われる経費はすべて「税金」であるからです。民間企業の営業マンのように、個人の裁量で経費を使う権限は誰も持っていないということを示しています。
何年も継続しているルーティン事業や案件も、すべて同じ決裁方法です。基本的に簡略化も認められないため、ひたすら同じ内容の決裁書を積み上げていくことになります。この「決裁」にあたる一連の内部手続きを、公益団体では「起案」と呼びます。(現在、土地売却の不当値引き問題で、国会でも「起案」の書き換えが問題になっていますが・・・まさにそれです。)
地域によっては、独自システムでできる「電子決裁」を取り入れているところもあるようですが、まだまだ「紙面決裁」が多数を占めているのが現実です。
辞めたい理由と悩み2:紙決裁を増やすために業務時間を割かなければならない
請求書の処理(支払い)には、金額の大小に関わらず、2重決裁構造になっています。
部署内で「支払い要請」の決裁を取ったあとに、経理・事務部署で「支払い実施」の決裁が通って初めて現金支払いが可能となります。
「税金を1円でも無駄遣いをしない」ために、職員たちは1円の10倍以上ともいえる労力と時間を使って、決裁のための書類をそろえています。
また、決裁書類を捨てる年月は基本、3年~5年とされていますが、実際には20年以上前の書類も、普通に残されています。「どこまで紙が増えるのか・・・データ化するという発想を持っている人はこの中にはいないのか?!」と、心の中ではだれもが感じているはずです。
しかしながら「団体発祥からの歴史」ともいえる「紙面による記録」はとても重宝される傾向にあり、それをさらに積み上げるために職員たちは日々、自分たちの業務以外に「紙決裁」に必要な書類準備に追われる運命にあります。
辞めたい理由と悩み3:それぞれ雇用形態の違う職員が同じ仕事をしなければならない
公益団体で働いている人達は、関係機関のさまざまな部署や、組織からの「出向」という形で就業する職員のほか、「プロパー」と呼ばれ、民間企業の正社員に該当する正規雇用の職員、そのほかに雇用期限付きの「臨時職員」「契約職員」「有期アルバイト」など、それぞれ違った雇用条件の人たちが共に働いています。
正規雇用の職員は年齢や経験に応じて昇給制度があり、賞与なども支給されますが、それ以外の職員は、福利厚生などは変わらないものの、昇給制度や賞与、有給休暇の日数、退職金などは一切ないなど、労働待遇に大差があります。それにも関わらず業務範囲について、はっきりした境界線がありません。「有期雇用・臨時雇用」という不安定な身分においても業務の基盤を支えなければなりません。
また、出向職員は、2年~3年を目安に異動になることが通例となっているため、正規雇用の職員や、アルバイトを含め継続的に勤務している職員が、出向者の入れ替わりに伴う業務のフォローを行わざるをえないという、目に見えない負担もあります。
辞めたい理由と悩み4:個人の能力が評価されない昇給制度
仮に、優秀なバックグラウンドを持った非正規雇用の職員が、どんなに仕事をして結果を出したとしても、それは正職員をはじめ上司、執行部の手柄にしかなりません。ポジションが変わらない限り、仕事量や成績に見合った報酬や待遇が期待できないのが現状です。
一方で、たまたま「正規採用」の募集時期に採用された人はとてもラッキーです。年齢や経験、特別なスキルを持ち合わせていなくても、手厚い待遇を受けることができます。勤続年数やスキルに関係なく、ポジションは年々上がっていきます。
団体によってはこれまで貢献してきた「契約職員」だった人が「正職員」に抜擢されることもまれにありますが、一般的には、団体のカラーに染まりやすく(もしくはすでに染まっている)、上からの指示に従順な若い人が抜擢される傾向にあります。この点でいえば20代~30代前半までの非正規雇用の人にとっては、チャンスが巡ってくる可能性があるといえます。
執行部のポジションは、ほとんどが定年退職をした関係機関や組織のOBの方々です。もちろん、優秀な方はたくさんいらっしゃいます。一方で、「パソコン操作もままならない人」や「何もしない人」たちも少なからずいます。どんな上司とも上手に接点を持ち、自分を優位な立場に変えていける器用さや柔軟性を持ち合わせている人は、とても評価されます。
この先もつらい現実に耐えながら生きていかなけばならないのでしょうか?
いいえ、「公益法人勤務の方の人生を変える解法」はきちんと存在していますので、それを今からご説明いたします。
あなたの「会社を辞めたくなる悩み」への対応策
1.上司との接点を固め、正規採用を目指す
どうしても昇給を目指したいのであれば、この手以外にありません。尊敬できる上司なら我慢できるかもしれませんね。現実は社会がよくも悪くも変貌する中、雇用の危機にも無縁で、ぬくぬくと長いものにまかれてきた人たちも中にはいます。
人一倍苦労をしてきた自負のあるあなたに耐えられるかどうかわかりませんが、試してみてはいかがでしょうか?お茶を入れる、デスクを拭く、上司の世間話に耳を傾ける、パソコンの操作を教えてあげる、とにかく上司の手となり足となることです。
2.正規雇用でなくても5年以上居座り続け、無期雇用化を申し出る
政府の推進する「働き方改革」の一環で、5年以上勤続すれば、双方同意のうえで「無期雇用」の身分に転身できます。少なくとも1年もしくは数年更新の雇用身分からは解放されます。しっかりした生活基盤がある、将来に金銭的な特別な不安がないことに加え、担当している業務にある程度のやりがいを感じて取り組めているのであれば、「安定」のみを求めるという点でおすすめです。ただし、正規雇用でない限り、待遇は今までと同じです。
3.業務分担の変更を申し出る
業務分担の内容を、自分の興味がある業務や、時短勤務が期待できるものに変えてもらうことを相談してみましょう。民間企業とは違い、待遇面などは年間予算の関係があり、団体側にも改善の希望に応えたくてもすぐに応えられない特有の事情があります。あなたが本当に必要とされているのなら、物理的にどうしても不可能なこと以外は、できる限り希望に添えるように対応してくれるかもしれません。とにかく頭を下げてお願いしてみると、変わるかもしれません。
4.とにかく残業して一生懸命さをアピール&稼ぐ
「残業」というと、「働き方改革」が推奨されている今、タブーのようにも感じさせられますが、とにかく20年前の体質なので、「残業している」=「仕事を一生懸命頑張っている」という風潮は今でも根強く残っています。もしかすると見ていてくれる人がいるかもしれません。
民間企業では残業代は全額支払われないことも往々にしてあるようですが、公益団体であればその心配はありません。時間外労働が苦にならない人は、残業代でしっかり稼ぐと同時に、仕事の頑張りへの評価につなげていきましょう。
5.今の職場を辞めて、別の企業や他業界に転職する
どうしても今のあなたを取り巻く環境がかわらないようならば、思い切って転職をして別の企業や他業界に移ったほうが良いでしょう。
人生は有限であり、今の職場のままクヨクヨした日々を過ごしていても、ただ精神衛生が蝕まれていくだけにすぎません。もっとも適切かつスピーディーな回天の法則とは、職場を変更することに他ならないといえるでしょう。
他業種や他社への転職…不安はよくわかります。
しかし、うまく公益法人勤務を抜け出して、人生の立て直しに成功した人の多くは、現在の職場以外への転職の道を選択した人々なのです。
この件について、以下でより詳しく説明いたします。
公益法人の辞め方とタイミング
辞め方とタイミング1:絶対に公益法人の悪口や、他の職員の悪口を言わない
どんな理由があるにせよ、悪口はやっぱりかっこ悪いですよね・・たとえ待遇に不満があったとしても感情的になって一方的に自分の不満をぶつけてしまうと、有給休暇を消化できないままの早期退社など、思わぬ損をしてしまうことがあります。
まずは冷静になって、退職に至った理由を落ち着いた口調で丁寧に説明しましょう。その中にあふれる不満や、処遇改善を相手に想像させるような話し方が理想的です。相手の立場に立って、切り出し方には十分に注意を払いましょう。
「将来を考えてライフプランを見直したところ、今の収入では定年退職後に生活が苦しくなることがわかりました・・」
「自分のスキルアップのために○○のような仕事をしたいと思いました。」
など、相手が「なるほど」と思えるような退職理由を考えましょう。100%でなくても、あなたの希望に少しでもこたえられるように考えてくれるかもしれません。
辞め方とタイミング2:今後の働き方をゆっくり考え、次の転職先を決めてから退職の意向を伝える
民間企業とは違い、比較的有給休暇を取りやすいことが、公益団体のメリットといえます。まだ転職の意向が固まっていない場合は、転職サイトや転職支援、派遣会社などにひとまず登録し、自分の意向にあった求人が見つかるまで働きながら待つことも選択肢のひとつです。
すぐに退職したい場合は「つなぎ」としての勤務をしながら、今後の働き方を無料で相談できる「キャリア相談」のサービス利用するなどもお勧めです。
第三者(キャリアプランナー)に対して、これからどういう働き方をしたいのかを、ひとつひとつ説明することで、今後どんな働き方をしたいのかを見出すことができるかもしれません。
休みやすい環境をうまく活用して、自分のキャリアプランを整理し、焦らずに転職先を探しましょう。
辞め方とタイミング3:引継ぎ、後片付けなどをしっかりして円満退職
次の転職先が、どこであったとしても、在職していた会社とも協力関係になる可能性もあれば、お客様になる可能性も否定できません。
後任の人が決まるタイミングと引き継ぎの期間も考慮する、勤続年数が長い場合は3か月前には退職の意向を伝え、周囲に迷惑をかけないように退職準備を進めましょう。
時期は「人事異動の時期」とされる年度末(3月末)がおすすめです。期間中にしっかりと片づけ&引継ぎを終え、キリのいいタイミングで円満退職できるようにしましょう。
公益法人の勤務経験が優遇される、より就労条件のよい「おすすめ転職先」の例
1.大学や高校など、教育機関の職員に転職する
「残業は少な目がいい」「住まいの近くで働いてプライベートの時間を確保したい」と考えるあなたには、学校事務(大学や、私立高校)での事務がおすすめです。大学には学生対応の庶務などの他、大学内の国際交流センターでの運営事務、留学生の相談に応じる事務など、語学を生かせる職種もあります。
地域の関係機関との連携業務の企画などに関わることができれば、経験を生かしてやりがいを見出だせる可能性もあります。特に2月~3月には、正社員を前提とした求人も掲載されることがあるので、探してみましょう。
2.自治体や行政機関で運営している施設に転職し、正社員を目指す
図書館や公民館、博物館など、税金で運営されている施設の求人もお勧めです。勤務時間も比較的少なく、プライベートも充実させることができる環境です。
また、公益団体での勤務経験は体制が似ていることから、意外と評価されることもあります。「正社員前提」の求人に応募して、正社員を目指しましょう。20代~30代の方でしたら、より一層採用確率が高まります。
職種にもよりますが、一般的に40歳以上になると正職員前提の求人は難しくなります。このポジションには特別なスキルを持たない若い「イエスマン」が好まれる傾向にあります。
3.NPO法人に転職する
先進国である日本は、さまざまな支援を世界中から要請されています。引きこもりやDV、母子家庭サポートや自殺防止など国内特有の問題を支援している団体に加え、発展途上国や紛争地域、戦地からの難民支援など、非営利団体による支援体制は、ここ数年でかなり需要が増してきているといえます。
職種によってはハードなものもありますが、やりがいを求めるあなたにとっては、世界や日本が直面する問題に対してダイレクトに貢献できる仕事でもあります。どの分野での支援をしたいのかを考え、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?
4.民間企業の一般事務職に転職する
「お給料は安くてもいいから、安定とワークバランスを大切しつつも何か新しいことに挑戦してみたい」と思っているあなたには、低賃金ではありながらも残業がなく、休みを取りやすい「一般事務職」に転職し、正社員を目指すことを考えてみてはいかがでしょうか。仕事をつづけながらWワークでスキルアップをはかり、副収入を得られるように頑張ってみることができる環境を作ることも選択肢のひとつです。
人生の選択肢は常にあなた自身が持っている
公益法人勤務のあなたの人生を変えるために、まず一番注目すべきことは「今の職場以外にも職場は沢山あることを知る」ということです。
案外、外部と交流がない公益法人の業界人は井の中の蛙になることが多いです。
自分の会社以外のことを全く知らないというケースも非常に多いようで、勇気を出して一歩外に踏み出せば大きな海が広がっているということを、改めて考えてみてはどうでしょうか。
兎に角、どうしても今の悩みが解決できなければ「別に辞めればいい」「辞めたっていいんだ」「自分は自由に人生を選択できるんだ」と割り切ること。
周囲からの目を気にしたり、あなたの人生と無関係な上司のメンツを立てて、自分の人生を後回しにしてします思考こそが「今の職場を辞められなくなってしまう」ことの最大原因であり、悩みをより深くして人生を間違えてしまう事につながります。
転職コーディネーターに無料相談することから始める
自分自身でまず何をしてよいかわからないならば、人材紹介会社に登録するのも手。
転職コーディネーター経由で他の業界、企業の内情を知ることができますし、冷静な第三者の目で、あなたのスキルと経験を活かせる新しい職場を用意してくれます。
また、辞めづらい今の職場で、(転職先を紹介してもらった後に)スムーズに次の職場に移動するための方法やタイミングなどもしっかり教えてくれますよ。
いきなり仕事を辞めたりはせず、まずはじっくり転職エージェントと無料のアポイントを取って、今後の動き方を相談しつつ、あなたの希望に沿った新天地候補をじっくりと紹介してもらうべきでしょう。