
野村 龍一

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記事の目次
外部から見るイメージと実際に働いてみた内情が全く違う、インポートアパレルブランド業界。
現在はアパレル業界から身を引き、全く違う業界の異なる職種で働いています。
世間一般では華やかな業界と思われがちなアパレル業界、そしてアパレル業界の中でも更にイメージの良さそうな外資系ブランドの実態を、アパレル業界から身を引いた私の実体験を基にお話しさせていただきます。
アパレル業界の営業職は、いくつかのカテゴリーが存在します。
直営店を管理するリテール営業、卸店を管理するホールセール営業、またOEM営業などが挙げられます。私は、新卒で入社以来リテール営業として仕事をしてきました。(今回は私の実体験が基となるので、リテール営業中心の話になります)
リテール営業の主な業務は、店舗運営全般(売上管理・予算管理・店舗サポートなど)や取引先との折衝が中心となりますが、それだけでは終わりません。
売上対策のためのPOP-UP STORE 企画から準備・運営・撤収作業やイベント等の施策立案と実行、それに伴う販促活動(DM・POP・ペラなどの作成・ディスプレイ演出など)があります。
人事面においてはスタッフの採用・スタッフの配置変えまでリテール営業が考えます。その他には新規店舗の出店作業やクローズ店の退店作業、定期的な展示会運営・管理・アテンドなどもすべてがリテール営業の仕事となります。
中堅のドメスティックブランドに多い事ですが、私が新卒で入社した企業においても、上記の仕事に加え、ホールセール営業も兼務する他、マーチャンダイザーやディストリビューターまで兼務していました。このようにアパレル業界の営業の仕事は華やかな世界とはかけ離れた、裏方の仕事がメインで激務です。
インポートアパレル業界ならではの、就業中の不満、大変さ、辛さと悩み
辞めたい理由と悩み1:給与への不満 -インポートブランドの給与の実態-
一般的にドメスティックブランドよりも外資系インポートブランドの方が給与条件が良いと言われています。
アパレル業界で有名な転職会社である“クリーデンス”の調べによると、アパレル営業の平均年収は、20代後半で約300万円前半、30代前半で約300万後半、30代後半で450万程度となり、アパレル営業の生涯年収は平均で400万程度となっています。
前職でのあまりの仕事量に嫌気が刺し、職種の兼務等がなく、ドメスティックブランドよりも条件が良い、外資系企業へ転職する事を決めました。
転職活動をする中で、ある外資系インポートブランドからオファーをいただき条件交渉を行いました。
噂の通り、その企業から提示された年収は、売上に応じたボーナス込みで理論年収400万と高く、アパレル営業の生涯平均年収をもらえるという事でした。
私は当時30歳手前で平均よりも遥かに高い条件でしたので、喜んで転職したことを覚えています。
しかし実際は一度もボーナスが支給されたことはありませんでした。
“売り上げに応じたボーナス”というのが大きな問題でした。
アパレルはご存知の通り、“トレンド”に大きく左右される業界です。トレンドにあった商品構成であれば接客せずとも物が売れていきます。またSNS等の広がりによって有名人や人気のインスタグラマーが持っているという事だけでも売れ方が大きく変化します。
企画から生産まで国内で完結するドメスティックブランドであれば、トレンドに合わせ柔軟な物づくりが出来ますが、外資系インポートブランドは世界向けに作っている商品なので、そう簡単に国内向けの商品を作ることは出来ません。例え作れたとしても、仕上がった時にはもうトレンドは過ぎている場合がほとんどです。
外資系インポートブランドはトレンドに上手くはまっていれば、コンスタントに売上を作ることが出来ますが、一旦トレンドから外れてしまうともう全く売れません。
どこの外資系インポートブランドも大抵ボーナス制度はありますが、どこも売上に応じた支給と掲げており、売上が作れず支給できないケースが多いです。
私が入るまで支給されていたボーナスが入社したとたんにトレンドが去り、3年間で売上が一度も回復することなく終わりました。理論年収400万だったはずが30代に突入しても年収が300万円ちょっとという厳しい現実が待っていました。
30代でこれからの人生を考える時期に、今後またトレンドと商品がマッチし売れたとしても確実に売れなくなる周期がまた訪れるので、安定した給与を得る事は難しく、未来設計が立てられず、インポートブランドで今後やっていく自信がなくなりました。
辞めたい理由と悩み2:労働条件への不満-アパレル営業職にとって福利厚生はあってないもの―
ワークライフバランスを大事にしている欧米の多くの企業が取り入れている“フレックスタイム制”がありますが、やはり外資系インポートブランドでも“働き方改革”の一環として導入されています。
私が転職した外資系インポートブランドも当然のように導入していました。
面接の際には、採用担当者から自分のワークライフバランスを大事に出来る会社だと説明を受け、前職において終電で帰ることが出来れば良い方で、徹夜が当たり前だった日々を過ごしていた私にとって、なんて素晴らしい制度だろうと思いました。
私はその甘い汁にまんまと誘われて入社しましたが、実際にフレックスタイムを使用したのは3年間で10回あるかどうかでした。
残業した時間をコアタイムを除いた時間に割り当て、休むことが出来るのですが、残業時間は一方的に増え続け、貯まった残業時間は消化しきれずに消えていくだけでした。
いくら素晴らしい制度があったとしても、それが実際に使えなければ何の意味もありません。むしろ、欧米企業の外面だけを真似をして、社員のご機嫌取りをしているようで腹立たしく思いました。
インポートブランドの業界は狭いので、各ブランドに知り合いが多く、フレックスタイム制の事を聞いてみると、皆言う事は同じで、フレックスタイム制はあるが、使ったことはないと返ってくる。
こういった現実を知り、外資系インポートブランドの業界でワークライフバランスを取ることは難しいと判断し、これも私がこの業界から去る理由となった一つです。
辞めたい理由と悩み3:仕事内容への不満-休日出勤は当たり前、365日いつでも仕事-
外資系インポートブランドのリテール営業のメイン業務は店舗管理です。
売上管理から予算管理、店舗環境の整備、スタッフ採用からトレーニング、体調・精神ケアまで店舗で起きる事柄に関して、すべて営業が面倒をみて責任を取ります。
言ってしまえば、店舗の何でも屋なのです。
常にショップで起きている事柄にアンテナを貼り、何かあればすぐに駆け付けられるようスタンバイしていなければなりませんが店舗は路面店、百貨店、ファッションビルなど様々な場所で出店しており、それぞれの店舗で営業時間を営業日がまちまちです。そうなるとほぼ365日朝から晩までお店は開いているので休む暇がありません。
常にスタンバイ状態の営業は店舗が空いていれば常に仕事モードでいる事になります。
また担当する店舗が増えれば増えるほど、問題も増え、仕事の終わりが見えません。
外資系インポートブランドの場合、商品構成や店舗レイアウトなどは本国からの指示があり、それ通りに作らなければならないので、日本法人が求められる事は接客力です。それはイコール店舗スタッフを大事にするという事です。私の経験上では、ドメスティックブランドよりも店舗スタッフを大事に扱う傾向があると思います。
それはとても結構な事ですが、甘やかされていると勘違いしているスタッフが多く、より営業を何でも屋と思うスタッフが多くなります。何でもないこと・今言われてもどうしようもない事をオフィスの終業時間が過ぎていようが、週末だろうが休日だろうがお構いなしに連絡してきます。
休日に予定を入れていて、外出したところ電話が鳴り、お店に直行などというケースは日常茶飯事です。
これでは、長期連休が取れる事は夢のまた夢。
3年間在籍している中で、2連休以上の連休を取れたことはありません。
この先もつらい現実に耐えながら生きていかなけばならないのでしょうか?
いいえ、「インポートアパレルブランド営業マンの人生を変える解法」はきちんと存在していますので、それを今からご説明いたします。
あなたの「会社を辞めたくなる悩み」への対応策
1.部署異動 -営業以外の職種は意外にクリーンー
多忙で給与も低く、この悪循環から脱出する術の一つに同じ企業内で異動をすることが考えられます。
営業の他に外資系インポートブランドに良くある職種は、PRや商品部のマーチャンダイザーやディストリビューター、運営部の商品管理、人事総務・経理などがあります。
PR部や商品部は時期によって忙しさに変動があり、あまりお勧めできませんが、運営部の商品管理・人事総務・経理などの事務方の仕事がねらい目です。
外資系インポートブランドでは、職種がきっちりと分けられていることがほとんどです。
先に述べたように、ドメスティックブランドでは営業が他の職種を兼務する事も多々ありますが、外資系インポートブランドにおいては各部署が本国の担当者と密に連携を取るので、部外者である営業が自分の職域を越えて仕事をすることはまずありません。
他の職種への越権行為に当たるからです。
営業は店舗といういつ何時何が起きるか分からない生き物と付き合っているようなものなので、日々起きる問題に対して自分を犠牲にして仕事に取り組まなければなりませんが、他職種は職域がきっちりと線引きされている分、自分の仕事が終われば後は自由です。
営業には多忙手当なるものが支給される場合が多いので給与面で比べると下がる可能性がありますが、福利厚生の面で見た場合は、先に述べたような“フレックスタイム制”も自分のスケジュールにあわせて使用できますし、ほとんどの場合は定時で上がることができ、休みもしっかりと取ることが出来ます。
就業時間外でオフィスを見渡すとほとんどの場合、営業しか残っていません。
給与に不満がなければ、ワークライフバランスをしっかりと取れる職種に異動することは一つの手です。
2.外資系インポートブランドは転職こそがステップアップ
外資系インポートブランドでは、転職こそが自分のキャリアを形成するステップアップの方法です。一般的には転職回数が多いと、企業から嫌煙されるケースが多いですが、この業界においてはその考え当てはまりません。
見合った能力があれば良い条件を提示してくれます。この業界の多くの知り合いが転職を重ねて給与を上げています。
実例を挙げると私が外資系インポートブランドで働いていた時に、5つ上の先輩がいました。その方は新卒から外資系インポートブランドで仕事を始め、すでに5社経験している方でした。転職をすることで給与を上げ、私とさほど年齢が変わらないのにも関わらず、すでに私との年収差は200万もありました。
ドメスティックブランドから外資系インポートブランドへの転職だと、そもそもの仕事方法が違うので急に好条件を出してくれませんが、インポートブランド業界で転職を重ねる事は一つの手です。
3.大手ラグジュアリーブランドへの転職
ルイヴィトンに代表されるLVMHグループやグッチなどのケリンググループのように誰もが知っている大手ラグジュアリーブランドへ転職するのも一つの手です。
こういったグループ企業は有名なブランドを多く抱えていますし、一つのブランドの売上が低迷しても他で補填できる上、アパレル以外にもコスメやお酒など多角的に経営しています。例えアパレル部門が厳しくても、そう簡単に揺らぐ事はないでしょう。
また大手ラグジュアリーブランドには大抵の場合、莫大な資金を持った上顧客と太いパイプがあり安定的な売上確保が可能です。
定番品というのも強みの一つでしょう。このブランドといったら“コレ!!”という長年売れ続けている定番商品があるので、トレンドなどに左右される事もありません。
こういった企業にチャレンジすることも現状からの脱却の一つであると思います。
他業種や他社への転職…不安はよくわかります。
しかし、うまくインポートアパレルブランドの営業職勤務を抜け出して、人生の立て直しに成功した人の多くは、現在の職場以外への転職の道を選択した人々なのです。この件について、以下でより詳しく説明いたします。
インポートアパレルブランドの辞め方とタイミング
辞め方とタイミング1:コレクションシーズンを避ける
コレクションブランドであれば、基本的に年2回新作コレクションが発表されます。
このコレクション・展示会シーズンこそがアパレル営業が一番活躍すべき時です。
なぜならば取引先などをコレクションや展示会に招待し、今シーズンのテーマや売込み商品などを伝えていきます。
その結果の良し悪しで今後の売上に影響します。
もし取引先バイヤーの目に留まれば、取引先の媒体への掲載やショウウィンドウへの展示、イベントなどを優先的に回してくれるようになり、自社の製品を強く売込めるからです。
まずこの時期に退職の意向を出す事は許されないでしょう。
辞め方とタイミング2:役職に就く前に退職する
先に述べたように、外資系インポートブランドの営業は何でも屋であることが多いです。
管理職の立場に就くと、当然ながら責任は重くなり、これまでスタッフや取引先からのプレッシャーの他に役員や部下からのプレッシャーも増えます。
私の上司は、あまりにも多い周りからのプレッシャーにより、仕事中に突然発狂してしまいました。また家族がいるのですが、週末は必ずオフィスにいる状態で、余計なお世話ですが、家庭環境がとても心配になりました。
こうなってしまうと余裕も全くなくなり、転職するにも時間も作れず、文字通り雁字搦めの状態に陥ります。
辞め方とタイミング3:引継ぎはしっかりと。後腐れなく
もしまた同じ業界内で転職するならば、アパレル業界はとても狭いので噂がすぐに広まります。とりわけ外資系のインポートブランドは百貨店などで同じフロアに位置する事が多いので、職場が変わってもまた同じ取引先の担当者と再会するとういうケースをよく耳にします。
私も実際現職の店舗と前職の店舗が向き合っているという事があり、非常に気まずい思いをしました。
悪い噂が流れれば、今後の営業としての仕事に必ず悪影響を与えてしまいます。
インポートアパレルブランド営業の勤務経験が優遇される、より就労条件のよい「おすすめ転職先」の例
1.百貨店・ファッションビル等の小売業界に転職する-媚へつらう立場から、媚びへつらわれる立場へ―
基本的にアパレルメーカーは場所を取引先から借りている以上、頭が上がりません。
売上が良ければウィンウィンの状態ですが、売上が落ちるとすぐにフロアでも条件の悪い場所への移動や最悪の場合撤退に追い込まれます。売上が悪いときにはイベントや短期的な数字を作るためにPOP-UP STOREなど企画し、取引先のご機嫌を取ります。
本来は対等な立場であるはずが、売り上げ次第で下に見られるケースが非常に多いです。
特に現在アパレル業界は全体的に売上が低迷しているので、この構図を変える事はそう簡単ではありません。
こういった構図があるので、優位な立場に就くために、メーカー側から取引先側へ転職する人も少なくありません。
常に取引先とは連携して仕事をしているので、取引先の仕事内容を把握している場合が多く、他業種に行くよりも転職もし易い傾向にあるようです。
2.事務職に転職する
これはドメスティック・インポート限らずリテール営業であれば当てはまる事だと思いますが、日々売上管理や予算管理や資料作成を行っているので、アパレル営業は事務処理能力が優れています。
実際に、私は現在事務職に就きましたが、未経験の職種にも関わらず、問題なく仕事が出来ています。むしろ、こんなにも楽な仕事で良いのかと思うほどです。
事務職は今までの経験を活かせると共に、ワークライフバランスも良くなるのでお勧めです。
3.外資系コスメティック業界の営業職に転職する
自身転職先の視野に入れ、内定をもらった経緯があるので、良く分かる業界です。
基本的にアパレル業界のリテール営業とコスメティック業界のリテール営業の仕事は同じです。また転職活動をする中で、採用担当者から言われたことは、同じ業界にいる人間よりも他業種から新鮮な意見を持ってきてもらいたいという事を良く聞きました。その中でも、インポートブランド営業は仕事内容がほぼ同じなので、即戦力として期待でき、仕事もスムーズに出来る人が多いので、重宝しているという事でした。
コスメティック業界をお勧めする理由は、採用がスムーズという事だけではありません。
給与水準がアパレル業界よりもトレンドに左右され難いせいか高い傾向にあります。
実際に転職の際に提示された金額は30歳前半で500万ほどでした。
ネットなどで調べても、平均年収はアパレル業界よりも高い水準にあるようです。
人生の選択肢は常にあなた自身が持っている
インポートアパレルブランド職勤務のあなたの人生を変えるために、まず一番注目すべきことは「今の会社以外にも職場は沢山あることを知る」ということです。
案外、外部と交流がないアパレル業界人は井の中の蛙になることが多いです。
自分の会社以外のことを全く知らないというケースも非常に多いようで、勇気を出して一歩外に踏み出せば大きな海が広がっているということを、改めて考えてみてはどうでしょうか。
兎に角、どうしても今の悩みが解決できなければ「別に辞めればいい」「辞めたっていいんだ」「自分は自由に人生を選択できるんだ」と割り切ること。
周囲からの目を気にしたり、あなたの人生と無関係な上司のメンツを立てて、自分の人生を後回しにしてします思考こそが「今の職場を辞められなくなってしまう」ことの最大原因であり、悩みをより深くして人生を間違えてしまう事につながります。
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