中小の専門商社を辞めたい人へ=つらい職場を上手に辞める方法

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北野筆太

北野筆太

ブラック企業の取材などを主なテーマにしているライター。実際の転職経験者にインタビューをすることで、労働者が煮え湯を飲まされるその業界ならではの特殊事情やゆがみを探り当て、「就業する前に(転職する前に)知ってほしい体験談記事」を日々執筆中。




記事の目次

商社マンは日本ビジネス界のヒーロー。世界の猛者を相手に一歩も引かずに戦い続ける激務の現場とは。

竹沢直久さん(仮名、30歳)は、つい先日、日本の中古車をアジアやアフリカなどに輸出する専門商社を退職しました。退職理由について尋ねると、次のように語ってくれました。

「私は三流大学出身なので、学生時代の就活では7大総合商社のすべてに落ちました。でも本物のビジネスの世界では、有名大学出の総合商社マンに圧勝し続けました。『奴らに負けるか!』でがむしゃらに働いてきて、気が付いたら節目の30歳に到達していました。そのことを意識したら、急にやる気をなくしたんですよね」

竹沢さんが「コンプレックスを持ち続けた」という7大総合商社とは、三菱商事、住友商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、豊田通商、双日です。石油や液化天然ガスといった資源から、洋服やコンテンツなどまで、「カネで買えるもの」はなんでも扱い、兆円規模のビジネスを展開しています。

一方で、竹沢さんが勤めていた商社は、社長以下20名の小規模な会社です。こうした中小の専門商社は国内に60社程度あるとされ、そのほとんどが「中古車だけ」や「コーヒーだけ」といった特定の分野に特化して、それで「専門商社」と呼ばれています。

ただ竹沢さんは「世界を股にかける日本の商社マンという意味では、大手も中小も変わりない」と自分を鼓舞してきました。世界中に人脈を広げ、そこから商売に有益な情報を引き出し、その人脈と情報を武器に商品とサービスを安く買い、よそで高く売って利益を稼ぐ、こうしたタフな仕事では最終的には「個の力」がモノを言うということを、竹沢さんは自らの行動で示してきました。

コンプレックスに押しつぶされそうになりながら「仕事で見返すしかない」と立ち上がる――これを何度も繰り返してきた竹沢さんでしたが、この世界から退場することを余儀なくされました。

もし、あなたが中小の専門商社マンで「もう出張地獄に耐えられない」とか「家族との時間を作りたい」と考えているとしたら、この記事は4分間で読み終えることができるので、完読していただくことをおすすめします。

「あなたがいま考えるべきこと」がきっと見つかるはずです。

中小の専門商社マンたちは、仕事が順調になればなるほど悲哀が強まる。「本当に自分は勝ち組なのか」と自問する日々。

辞めたい理由と悩み1:中古車を買ってくれるバイヤー探して世界の果てまでも!アジアや中東を放浪した経験が役に立つ。

世の中にはカーマニアと呼ばれる自動車愛好家が存在しますが、竹沢さんは過去も現在も「自動車なんて走ればなんでもいい」としか感じたことがありません。なので中古車輸出の専門商社に入社した当初は、「MT、左ハンドル、SUV、ディーゼル、ハイオク」といった基礎用語すら知りませんでした。

しかし大学を1年間留年してアジア・中東・アフリカを放浪した経験は、すぐに仕事に役立ちました。竹沢さんのクルマの知識のなさに呆れかえった上司たちも、竹沢さんの地政学的な知識には舌を巻きました。

竹沢さんはわずか入社半年で海外出張を命じられたのですが、しかも単独行動だったのですが、見事現地のバイヤーと接触し取り引きの足場固めをしてきたのです。

なにしろ小さな会社でしたので、竹沢さんはすべてを1人でこなさなければなりません。上司はただ、「そろそろバングラデシュを開拓しなきゃなあ」とつぶやくだけです。しかし上司は2日後には「バングラデシュの資料はそろった?」と竹沢さんに尋ねるのです。

「この上司の無茶振りには本当に泣かされました。こちらもさすがに切れて、その上司に『指示するだけじゃなくて、少しは手伝ってくださいよ』って言ったことがあったんですが、ものの3時間で資料を作っちゃうんです。翌日の昼には、現地の商工会議所の担当者のEメールアドレスやフェイスブックをゲットしていました。『ああ、これくらいやらなきゃ仕事をしたって言っちゃいけないんだ』って思いましたね」

海外に中古車を輸出するときに、まずやらなければならないのは現地の商工会議所へのアプローチです。竹沢さんが売りたいクルマを買ってくれるバイヤーを紹介してもらうためです。

日本から電話やメールで問い合わせるだけでバイヤーとコンタクトが取れることがありますが、商工会議所の会報に竹沢さんの会社のPR記事を掲載してもらって、その記事を見た人からの連絡を待つこともあります。

竹沢さんの「テリトリー」は、アラブ首長国連邦、ミャンマー、パキスタン、バングラデシュ、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、南アフリカ、ロシアというラインナップでした。

これだけの国を担当するまでになるには、並大抵の努力では足りません。国によっては右ハンドル車を受け入れてくれないこともありますし、オートマ車がまったく売れない国もあります。日本ではボディカラーは白と銀が人気ですが、いずれの色も不人気な国もあります。こうした細かい情報を入手しておかないと、大損してしまいます。

竹沢さんは次のように振り返ります。

「ある国ではなかなかまともなバイヤーが見つかりませんでした。それでもようやく、身元が確かな人を見付けて、なんとかクルマを輸出して代金を回収できたのですが、喜んだのも束の間、次の取り引きで、もう大幅値下げを要求してくるのです。

『日本では中古車が有り余っているから、走れるクルマを次々スクラップにしているんだろ。だからスクラップ並みの金額に負けろ』って平気に言ってきますからね。

ビジネス慣行や信頼の醸成なんて、彼らの頭にはまったくありません」

そこで竹沢さんは、1つの国で取り引きが成立すると、必ず2人目3人目のバイヤーを探すようにしていました。こうすることで「あなたがこの値段で買わないなら、別の人に売るからいいよ」という交渉ができるのです。

竹沢さんがここまで価格にこだわるのは、自社の利益のためだけではなく、日本国内の中古車販売業者と「うまみ」を分かち合いたいからでした。

「20年ほど前は、中古車の輸出といえばボロボロのクルマをロシアや砂漠の国に売るビジネスでした。1台の仕入れ値は、数万円とかせいぜい数十万円台でした。

しかし最近は、貧しいといわれる国にも富裕層が誕生していて、数万円のお値打ち車は逆に売れなくなっています。高級SUVで、なおかつ程度の良いクルマが売れます。

国内の中古車屋さんは本当は、高級SUVを日本で売りたいんですが、でもいまの日本人にそんな余裕はありませんよね。それで泣く泣く輸出を検討してくれるんです。

私は、そういう中古車屋さんに対し『日本で売れないなら海外で売りさばくしかないでしょ。だから安く売りなさい』という商売はしたくないんですよね。『海外ビジネスができることの強み』で、中古車屋さんをいじめたくないんです。

そういうビジネスを心掛けてきた結果、中古車屋さんからも信頼されるようになりました」

専門商社マンのあなたも、扱う商材は異なれど、竹沢さんの「矜持(きょうじ)」が理解できるのではないでしょうか。

「売りつける」そして「買い叩く」ビジネスモデルは長続きしません。相手国が途上国であれば、あなたの商売によってその国が潤うことが、あなたの喜びのはずです。その結果、あなたが取り引きしている国内企業が利益を生めば、「あなた-相手国-国内企業」はWIN-WIN-WINの関係を築くことができます。

これこそ、世界に感謝される日本のビジネスです。

あたなも竹沢さんと同じように、さまざまな困難を乗り越えて「成功の方程式」を作りあげてきたことでしょう。あなたのような「株式会社ニッポン」の代表選手が、なぜ疲弊しきっているのでしょうか。もう少し竹沢さんの話に耳を傾けてみてください。

2016年、中古車輸出仕向け国ベスト10
順位 国名 地域 輸出台数(台) 前年比
1 アラブ首長国連邦 アジア 151,001 110.9%
2 ミャンマー アジア 124,212 88.0%
3 ニュージーランド 大洋州 122,329 103.3%
4 チリ 南アメリカ 74,069 114.6%
5 パキスタン アジア 56,952 115.1%
6 ロシア ヨーロッパ 48,244 98.2%
7 南アフリカ共和国 アフリカ 48,100 103.4%
8 ケニア アフリカ 57,130 73.8%
9 タンザニア アフリカ 39,408 92.2%
10 グルジア アジア 37,769 127.9%

資料「2016年中古車輸出統計」(Goonet自動車流通)

中古車輸出統計データ - グーネット自動車流通
中古車輸出情報が満載!月別で中古車の輸出情報を掲載しているので、一目で中古車輸出市場の今がまるわかり!

辞めたい理由と悩み2:大手総合商社の給料は「正直うらやましい」。格差を感じて挫折しそうになったことも。

竹沢さんを悩ませたのは、業務内容の割に給料が安いことでした。入社年の年収は350万円と「割と良い方」と感じていましたが、その後、文字通り世界中を飛び回って中古車を売りまくっていったのですが、入社5年後の年収は380万円でした。

「自分でこういうことを言っちゃうと格好悪いんですが、私はこの業界では名の知れた存在でした。カラチ空港(パキスタン)でも、ドバイ空港(ドバイ首長国)でも、ビジネススーツを着た日本人に会えば、『竹沢さん』と声がかかるほどです。

彼らが私に声をかけるのは、その国の情報を知りたいからなんですよね。まあ、意地悪する必要もありませんから、私の商売に影響しない情報はどんどん教えてあげました。

『彼ら』とは、超有名総合商社の人たちや外務省の人です。彼らはとても律義で、私の情報が有益だと、東京でごちそうしてくれるんです。私の給料ではとても行けないような店を、次々はしごしていくんですよ。

あるとき、総合商社の1人に年収を聞いたら、当時25歳で800万円だっていうんです。その人は私のことを『にいさん、にいさん』って呼ぶんですが、年上でなおかつ海外経験もはるかに上回る私の年収は、その半分にも届かないんです」

7大総合商社であれば、30代で年収1000万円に到達することは珍しくありません。しかも彼ら「超エリート」は、チームで動くためサポート体制もしっかりしています。貿易相手国での交渉も、会社の経費で接待することも、政府関係者の援助を受けることも可能です。竹沢さんのような一匹狼は、大手にはいません。

竹沢さんにはいつも「自分が早稲田か慶応か上智を出て総合商社に入っていたら、この人たちをはるかに上回る営業成績を叩き出せていたはずだ」と思っていました。

あなたも一匹狼なら、この「悲哀」を何度も感じたことでしょう。商社マンのフィールドは、「学歴も看板も関係ない、実力だけの世界」ですが、給料や処遇の面では、中小零細企業とメガカンパニーでは雲泥の差があります。

あなたはこの「冷遇」を一生我慢しますか、それとも次の道を模索しますか。

竹沢さんは後者を選択したのです。

辞めたい理由と悩み3:「仕事と私生活の両立なんて無理」と考えているあなた、本当に大切なものはなんですか?

竹沢さんが「中古車輸出の専門商社を辞めた本当の理由」は、家庭崩壊です。竹沢さんは24歳のときに結婚し、すぐに女の子が生まれました。しかし竹沢さんが娘に初めて会ったのは、生後1カ月を経過してからでした。そのころはバングラデシュに長期出張中だったのです。

竹沢さんの奥さんが離婚を決意したのは、竹沢さんが担当する国に中東のI国が加わることになったからです。そのころ、同国の政情不安がひと段落し、日本の商社マンたちが再び拠点を設け始めたのです。竹沢さんの会社でも「I国にもう一度進出しよう」と決まり、竹沢さんに白羽の矢が立ったのでした。

奥さんは「絶対に死んじゃうから、会社に断って」と泣いて頼みました。しかし竹沢さんは、「大袈裟だなあ」と言って取り合わなかったのです。

初回のI国出張から帰国すると、自宅には妻と子供がいませんでした。協議を重ねましたが、竹沢さんが「いまの会社も、海外出張もやめない」と言い続けたため、離婚が決まりました。

「この業界にはバツイチが多いですね」と竹沢さんは明かします。「仕事のストレスがハンパないから、家庭ではなにもしたくないんです。家族に求めることは『俺を癒して』です。でも妻や子供は、大好きなパパと遊びたいわけです。このギャップが埋まらないと離婚するしかないですよね。

それと、妻に不倫をされて離婚するケースもよく聞きますよ。でも、不倫された側は、意外に怒っていないんですよね。私の知り合いも『とうとううちも不倫されちゃったよ』って笑っていました。商社マンたちは、家族に対して絶えず罪悪感を抱きながら働いているんですよ」

あなたがもし「ワークライフバランス」という言葉に白々しさを感じるようなら、注意してください。そういう人は「仕事と私生活のバランスなんて取れるわけがない」と信じ切ってしまっていますが、間違っているのはあなたの方です。

私生活を犠牲にしてまで仕事に尽くす必要はありません。あなたが最も大切にしなければならないことは、その商品を海外に持っていくことではなく、愛する人の笑顔です。

では、中小の専門商社に勤めるあなたはどうすればよいのでしょうか?
この先もつらい現実に耐えながら生きていかなけばならないのでしょうか?
いいえ、専門商社マンの人生を変える解法」はきちんと存在していますので、それを今からご説明いたします。

あなたの「会社を辞めたくなる悩み」への対応策

1.ビジネスマンの夢…独立開業を実行に移す時は今。

大手総合商社マンと、中小の専門商社マンの違いは、仕事の取扱高の規模や給料の多寡だけではありません。大手の商社マンはチームで動くのに対し、中小の商社マンは単独行動が多いという特徴があります。

単独行動とは、商品の仕入れから購入者の開拓、輸出や輸入の手続きや代金の回収まで、ひとりで行っている、ということです。

なので中小の専門商社マンのあなたは、独立して貿易会社を立ち上げても十分やっていけます。というのも、あなたほどのキャリアがあれば、現在のサラリーマンの身分で行っている仕事と、自分の貿易会社で社長として取り組む仕事は、ほぼ同じだからです。

独立するメリットはというと、収入です。「釈迦に説法」かもしれませんが、貿易会社は「モノ作り」も「商品の陳列」も要りません。魅力あるモノとサービスを、より高く売るために世界中飛び回る、これが商社の仕事です。

設備投資や在庫置き場を持たない貿易ビジネスは参入障壁が低いのです。

独立すれば、あなた自身が輸出入を行わず、国内メーカーの輸出コンサルタントという仕事もゲットできます。以下の表は、日本貿易振興機構(ジェトロ)の業務です。あなたなら、この中に「自分もできる」仕事が見付かるのではないでしょうか。

ジェトロが提供している主なサービス
輸出サポート ・海外の取引先を探す

・貿易実務

・海外での商談会の運営

海外企業主催の現地商談会への参加 ・バイヤーとの接触支援

・商品PR

・マーケティング

海外戦略の策定 ・現地の消費者調査

・商談の仲介

資料「貴社製品の輸出を支援します」(日本貿易振興機構)

輸出支援 | ジェトロのサービス - ジェトロ

2.士業の資格ホルダーとなり自分の事務所を構える

もしあなたが、「海外出張はもう嫌だ」感じているのであれば、士業への転身をおすすめします。きちんとしたビジネススキルが身に付いているあなたであれば、資格さえあれば鬼に金棒です。

士業には、弁護士や公認会計士といった「有名どころ」もありますが、この2つは超難関で有名なので、いまから始めることは避けた方が無難です。

あなたにおすすめしたい資格は、社会保険労務士と中小企業診断士です。この2つの資格も決して簡単ではありませんが、40代50代でも1年ほど集中して勉強して目標を成し遂げた人もいます。

社会保険労務士も中諸企業診断士も、中小零細企業を支援することがメイン業務になります。中小企業の苦しさとつらさを知っているあなたなら、適切なアドバイスができるでしょう。

3.専門商社マンを辞めて他業界に転職する

「独立開業はリスクが大きすぎる」「いまさら受験勉強はしんどい」という方は、商社の世界から離れてみてはいかがでしょうか。

あなたは大きく、2つの大きなビジネススキルがあります。

①海外事情に精通している

②外国人との交渉に長けている

このスキルはいずれも日本人ビジネスパーソンが苦手としています。海外ニュースや英字新聞に触れているだけでは、海外事情に精通しているとはいえません。しかしあなたなら、テレビや新聞が伝える「その国のこと」が、ほんの一面にすぎないことを見破っています。そういう知識しか、ビジネスでは役に立ちません。

だからあなたを求める企業がたくさんあるのです。

一般の人は、語学が堪能であれば外国人と「交渉」できると考えていますが、しかしあなたが乗り越えてきた「本物の交渉」は、そんな生ぬるい内容ではないはずです。

相手の利益を考量しながら、自分の利益を最大化しなければならないのです。戦略立案、情報の有効活用、相手の性格判断、為替などの経済動向、地政学的検討、こうしたことをすべて頭に入れた上で外国語で交渉するなどという芸当は、百戦錬磨の商社マン、つまりあなたたちにしかできません。

「国内の多くの企業が、あなたの履歴書を心待ちにしている」この言葉は決して大袈裟ではないのです。

他業種への転職…不安はよくわかります。

しかし、まく専門商社勤務を抜け出して、人生の立て直しに成功した人の多くは、商社以外への道を選択した人々なのです
この件について、以下でより詳しく説明いたします。

中小の専門商社マンの辞め方とタイミング

1:一匹狼たちの仕事はおいそれと引き継げない。綿密な「退職計画」を立ててあげよう。

一匹狼のように行動している中小専門商社マンは、転職を決意してもすぐには辞められないでしょう。考えてもみてください、あなたの仕事は、ほかの誰が引き継げますか。社長でしょうか、上司でしょうか。あなたはいま「あの人たちには無理」と思ったのではないでしょうか。

あなたは会社を去ることを決心しましたが、あなたをここまで育ててくれたのは、紛れもなく会社です。もしかしたらあなたは「いやそうじゃない。1人で調べ、1人で動き、1人で悩み、1人で解決してきた」と主張するかもしれませんが、しかしあなたに「この商品をあの国で売ってみないか」と提案したのは、会社であり上司です。

さらに「1人でやった」からこそ、あなたは鍛えられたわけです。「1人体制」は会社の方針です。だからここにも「会社にお世話になった」という要素が含まれているのです。

それにあなたは「この世界は意外に狭い」ということご存じのはずです。ならば、やはり退職するときは、極力その会社に迷惑にならないようにするのがよいのです。

希望退職日の3カ月前には、上司に退職の意向を伝えましょう。そして同時に、後任者の選定を上司に依頼してください。さらに「3カ月も前に退職願を出すのは、会社に迷惑をかけたくないから」ということも伝えてください。

労働基準法では、労働者は2週間前に退職の意向を伝えれば、辞めることができます。しかしあなたがわずか2週間で去ってしまっては、会社や上司はとても困るでしょう。かといって3カ月もあっという間にすぎてしまいますので、それで会社に釘を刺しておくことも忘れないでください。

上司がすぐに後任者を選ばなかった場合、あなたは淡々と「引き継ぎメモ」の作成に取りかかってください。引き継ぎメモは、上司の許可をもらった上で、クラウド上に作るとよいでしょう。上司の許可をもらうのは、セキュリティ上の問題があるからです。

クラウド上であれば、社長も閲覧することができます。社長が、あなたが作った引き継ぎメモを評価してくれれば、送別会を開いてくれるかもしれません。「そういう辞め方」をしてください。

あなたほどの能力がある人には、穏便に辞めることをおすすめします。退職直後にその会社と取り引きをできるくらいにしておくことが理想的です。

なぜなら「この世界は狭い」からです。

2:「顧客を取られたくない」なんて小さなことを考えず人脈もしっかり引き継ごう。

退職の意向を社長や上司に伝えたら、引き継ぎ作業に没頭することになるのですが、その際注意してほしいのは、あなたの人脈をしっかりその会社に残していく、ということです。

筆者は、あなたがあなたの人脈を自分の努力だけで作り上げたことを知っています。休日を返上して面談したり、自腹を切って飲み食いさせたりして、顧客の信頼を勝ち得たのでしょう。だから「この人脈を辞める会社の人間に教えたくない」と思うのはもっともです。

しかし「顧客の立場」で考えてみてください。顧客はあなたの力に惚れてあなたとビジネスともにしましたが、あなたの退職後もそのビジネスを継続しなければならないのです。あなたはすべての顧客のビジネスを、転職先や独立後に継続することができるでしょうか。筆者は、すべては無理、と考えます。というのも、転職後であれば転職先企業の業務を優先しなければなりませんし、独立後であれば1つの案件をさばくのにも時間がかかるでしょう。

つまりあなたが人脈を引き継がないと、顧客のビジネスが中断してしまうのです。むしろあなたは、顧客に向かって、「私より優秀な人間がこの仕事を引き継ぎますから安心してください」ぐらい言ってもいいのです。

あなたの退職後に、その顧客から「やっぱりあなたにお願いしたい」と連絡が入ったら、その顧客との関係はさらに密接なものになるでしょう。

中小専門商社の勤務経験が優遇される、より就労条件のよい「おすすめ転職先」の例

1.メーカーの海外工場開設担当に転職

中小の専門商社マンのあなたに最初におすすめしたい転職先は、日本メーカーの海外工場を開設する部門への転職です。

自動車、自動車部品、家電、家具、インテリア、雑貨、携帯電話…ありとあらゆる製品は、海外の工場で作らなければなりません。

「ねばならない」とは、海外で作らないと、日本のモノ作りは消えてしまうという意味です。

アメリカのトランプ新大統領は、各メーカーに対しアメリカ国内での製造を促していますが、その強引な手法に強い批判の声が上がっています。なぜなら、アメリカで製造することには「多くの無理」が存在するからです。

その「多くの無理」は、アメリカだけが抱えているのではなく、先進国ならほとんどが課題として持っています。日本メーカーにも、国内回帰を目指す動きがみられましたが、それは「円安がしばらく続きそう」との観測が流れたためです。しかし、為替相場は日々動きますし、それこそトランプ大統領が「ドル安にするぞ!」と言い始めたら、かなり厳しい円高局面になり、そうなると日本メーカーの海外進出は再び加速すると考えられます。

よって、国内工場を新設している国内メーカーでも、海外進出は取りやめていないところがほとんどです。国内工場では付加価値が高いものを作り、汎用品は海外工場で作る、これがメーカーの基本戦略といえます。皮肉なことですが、日本のモノ作りを「無理をしない」で継続させるには、海外生産が欠かせないのです。

しかし、日本メーカーが海外に工場を作るには、様々な困難があります。中小企業庁が「海外進出した中小企業」についてまとめた資料には、工作機械メーカーなどの名古屋の中小企業が数社集まってタイに小規模な工業団地を作った事例が紹介されています。

この工作機械メーカーは2008年のリーマンショックで大打撃を受けました。「事業を継続するかどうか悩んだほど」業績が落ち込みましたが、その起死回生策として金型メーカーや熱処理会社と共同でタイに現地法人を立ち上げて工場を作ったのでした。

この戦略は見事にはまりました。参加した企業の得意分野が異なるため、相乗効果が生まれました。さらに工場設備を共同で使うことができ、コストダウンにもつながりました。

この工業団地が軌道に乗ると、タイへの進出を考えている企業を支援するコンサルティング会社を立ち上げ、するとその顧客が「本業」の顧客になり、生産性が上がったのです。

タイ進出を成功に導いた6つの要因
①中小企業数社が協力した ④リスクを減らすためにマーケティングを徹底した
②お互いに相乗効果が出やすい業種が集まった(工作機械、金型、熱処理など) ⑤のちにタイ進出企業を後押しするコンサルティング会社も設立
③②のお蔭で設備を共同で使用でき、コストダウンにつながった ⑥コンサルティングサービスを提供した日本企業が顧客になり、本業の仕事が増えた

資料「海外展開、成功と失敗の要因を探る」(中小企業庁)

http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H26/PDF/09Hakusyo_part3_chap4_web.pdf

いかがでしょうか。あなたはこのエピソードを読みながら、あらゆる場面がイメージできたのではないでしょうか。あなたがこうした企業に入れば、あらゆるトラブル、あらゆる課題、あらゆる衝突を事前に察知して、解決策を前倒しで提案できるでしょう。

2.ビジネス英会話教室の講師に転職

次にあなたにおすすめしたい転職先は、ビジネス英会話教室の講師です。ポイントは、学生や主婦が通う一般の英会話教室ではなく、ビジネス英語に特化した教室であることです。

「英語をきちんと習ったわけじゃない」方も、「TOEIC500点以下」の方も、まったく気にしないでください。

ビジネスパーソンたちが身に付けたいのは、正しい文法でもハンバーガーショップでの注文方法でもありません。

ビジネスパーソンが苦手なのは、

・英語でどうやって交渉するか
・外国の資料をどうやって集めるか
・海外での行政手続きの仕方

などです。

そうです、あなたがこれまで携わってきた仕事そのものなのです。

語学ビジネスには、次のような分野があります。

・成人向け外国語教室 ・子供向け外国語教室 ・学校向け講師派遣
・書籍・教材市場 ・語学学習ソフト開発 ・E-learning
・語学試験 ・翻訳・通訳など その他

これらを合わせた語学ビジネスの市場規模は8272億円(2015年)に及び、いまもなお成長を続けています。

ビジネス英語を必要としているのは製造業だけでなく、特許と知財の分野、医療機器や医薬の分野、さらにITや金融、法務といった業種も「英語人材」の育成を急いでいます。

繰り返しになりますが、「英語ができる人」が「英語人材」ではありません。「英語でビジネスができる人」でも「英語人材」としては弱いでしょう。

企業が真に求める「英語人材」とは「英語でビジネスに勝てる人」であり、まさにあなたのことなのです。

資料「語学ビジネス市場に関する調査(2016年)」(矢野経済研究所)

https://www.yano.co.jp/press/pdf/1561.pdf

3.就活アドバイザー、転職コンサルタントに転職

世界の舞台でビジネスを展開してきたあなたの話は、きっと就活中の大学生に届くはずです。そこで中小の専門商社マンのあなたに紹介したい3つ目の転職先は、就活アドバイザーです。

「日本企業にはグローバルな人材が欠かせない」と叫ばれて久しいですが、一向に充足する気配がありません。上場企業に入った新人エリートたちは国内勤務の無難な仕事を求める傾向が強く、中小企業の若手社員は海外に出る機会が巡ってきません。

これではいつまでたってもグローバル人材は育ちません。

そこであなたが、これまでに築き上げた人生観、ビジネス展望、仕事哲学を就活生に説き、学生たちに「海外で勝負したい!」と思わせてほしいのです。

ちなみに「DODA」を運営している株式会社ベネッセi-キャリアには「DODA新卒エージェント」という仕事があり、その内容は以下の通りです。

DODA新卒エージェントの仕事
就職活動支援 エントリーシートの添削、面接対策、内定確保までの伴走
代理人として企業と交渉 求人を探したり、面接日の設定も
カウンセリング 「やりたい」ことの気付き、就活スケジュールの調整、セミナー対策、選考後の落選理由の告知

資料「DODAホームページ」

就活に、プロの視点を。就活にはDODA新卒エージェント(株式会社ベネッセ i-キャリア)
【完全無料】就活で誰かに相談したいと思ったらDODA新卒エージェント ベネッセ i-キャリア(アイキャリア)のDODA新卒エージェントは内定獲得に向けあなたをサポートします。

一般の就活アドバイザーは、ともすると内定ゲットだけに主眼を置きがちですが、あなたなら、強いビジネスパーソンの育成を視野に入れた助言ができます。

「就職がゴールじゃない。成果こそビジネスパーソンの命」ということを教えてあげてください。

人生の選択肢は常にあなた自身が持っている

中小の専門商社勤務のあなたの人生を変えるために、まず一番注目すべきことは「専門商社以外の職場もあることを知る」ということです。
案外、外部と交流がない商社業界人は井の中の蛙になることが多いです。
自分の会社以外のことを全く知らないというケースも非常に多いようで、勇気を出して一歩外に踏み出せば大きな海が広がっているということを、改めて考えてみてはどうでしょうか。

兎に角、どうしても今の悩みが解決できなければ「別に辞めればいい」「辞めたっていいんだ」「自分は自由に人生を選択できるんだ」と割り切ること。

周囲からの目を気にしたり、あなたの人生と無関係な上司のメンツを立てて、自分の人生を後回しにしてします思考こそが「今の職場を辞められなくなってしまう」ことの最大原因であり、悩みをより深くして人生を間違えてしまう事につながります。

転職コーディネーターに無料相談することから始める

自分自身でまず何をしてよいかわからないならば、人材紹介会社に登録するのも手。
転職コーディネーター経由で他の業界、企業の内情を知ることができますし、冷静な第三者の目で、あなたのスキルと経験を活かせる新しい職場を用意してくれます。

また、辞めづらい今の職場で、(転職先を紹介してもらった後に)スムーズに次の職場に移動するための方法やタイミングなどもしっかり教えてくれますよ。

いきなり仕事を辞めたりはせず、まずはじっくり転職エージェントと無料のアポイントを取って、今後の動き方を相談しつつ、あなたの希望に沿った新天地候補をじっくりと紹介してもらうべきでしょう。

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