居酒屋チェーンの正社員辞めたい人へ=つらい職場を上手に辞める方法

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北野筆太

北野筆太

ブラック企業の取材などを主なテーマにしているライター。実際の転職経験者にインタビューをすることで、労働者が煮え湯を飲まされるその業界ならではの特殊事情やゆがみを探り当て、「就業する前に(転職する前に)知ってほしい体験談記事」を日々執筆中。

外食業界、飲食店に元気がありません。ファミリーレストランを始め、24時間営業だった店舗は次々と営業時間を短縮し、ネットでの内部告発やワタミグループによる従業員過労死問題などにより、薄給長時間労働のブラック企業の代表格としてイメージは下がる一方です。

今回は新卒で某居酒屋チェーン店舗で懸命に働く20代の女性にインタビューを行いました。




記事の目次

外食業界、飲食店に元気がない。業界に活気がないから働く人にしわ寄せがくる。今、居酒屋チェーンは更に惨い。

「正社員といっても、仕事の内容はバイトと同じでした。しかも、時給換算すると、バイトの1.1倍しかもらっていないのに、バイトの3倍働かされました」

ため息交じりにそう語るのは、伊藤ささこさん(仮名、23歳)です。飲食店経営を学ぶ専門学校を出て居酒屋チェーンの正社員として社会人デビューしましたが、3年でギブアップしてしまいました。

いまは別の居酒屋チェーンのホールのバイトをしていて、皮肉にも給料の手取り額は正社員時代を上回ります。

ささこさんは「最近なんとなくこの業界の仕組みが分かってきました」と話します。ささこさんが、自分の体験やかつての上司たちの話から分析した「日本の居酒屋チェーン業界」は次のようなものです。

  1. ヒラ正社員は会社とバイトの奴隷
  2. 客から「ひとつ下の飲食店」とみなされている
  3. システマチックすぎてもダメ、臨機応変がすぎてもダメ
  4. 安くてもダメ、高くてもダメ、中途半端はもっとダメ(どうしたらいいんだ!)

まず1の「奴隷」という表現ですが、会社の指示に従うのはサラリーパーソンの宿命ですので「会社の奴隷」はなんとなく理解できます。

しかし、いくらささこさんがヒラ社員だったとはいえ、バイトよりは上の地位のはずです。ところがささこさんは、居酒屋チェーンの本部から『バイトを3人辞めさせたらお前がクビだからな』と言われていたのです。バイトが店のオペレーションのカギを握っているので、バイトの地位の方がヒラ正社員より高くなることが珍しくないそうです。

2については、「これが一番嫌だったかも」とささこさんは言いました。ささこさんは次のように言いました。

「レストランでは無礼な振る舞いをしないような人が、居酒屋では豹変します。

ファミレスやファストフードだったらお腹を満たしたらすぐに店を出るのに、居酒屋チェーンではぐだぐだと長居します。居酒屋チェーンは、サラリーパーソンや学生の溜まり場と化しています」

3と4は、実は経済ウォッチャーも似たような見方をしています。つまり経営のプロたちも、居酒屋チェーンはビジネスモデルとして制度疲労を起こしている、と考えているのです。この点はのちほど詳しくみてみます。

あなたも外食業界、飲食店の店員なら、この業界の現状と行く末が気になるのではないでしょうか。

将来性が薄いと判断して転身を図った方がいいのか、それとも「居酒屋は日本の文化、そう簡単にはなくならない」と信じてこの道を究めるのか。

この記事は、その判断に大いに役立つことでしょう。

ヒラ社員のストレスの源は1.酔客の無軌道な行動2.理不尽な店長3.わがままなバイトの3つである。

辞めたい理由と悩み1:お手洗いで「もどす」のなら許せる。座席で吐くな!酔って店員に酒をかける客も。

「人は、居酒屋チェーンに来ると卑怯になる」これが伊藤ささこさんの「お客観」です。個人が経営するこだわりが詰まった老舗居酒屋と、大衆を相手にした安さを売りにした居酒屋チェーンは、同じ「いざかや」という名称ですが、ささこさんにはまるで別物に映っています。

ささこさんは「便所で吐く人はまだ許せます」と話します。ささこさんが憤るのは、飲み放題コースで無茶苦茶飲みまくり、座席で吐く客です。ささこさんは、そういう客は、飲み始めから見極められるようになりました。

まず、5人以下のグループでも、11人以上の団体でも、そういう非常識な行動は見られないそうです。座席での嘔吐、大声での店員への暴言、そしてマジ喧嘩をするのは、6~10人で店に訪れる客が多いのです。

「お客様がもどしたモノを掃除をするのも、喧嘩の間に入るのも、最も下の正社員であった私の役目です。お酒をかけられたこともあります」

初めて客から酒を浴びせられたとき、ささこさんは悔し涙を流しました。しかしそれが続くと次第に慣れてきて、ある日やはり酒をかけられたとき「ラッキー」と思った自分がいました。

なぜなら、店員がそこまでの侮辱を受けると、ようやく店長が動いてくれるからです。酒をかけられると、トラブルが早く収束するのです。

あなたも、夜の商売で売上を伸ばすには、酔客を自分の手の平の上で転がさなければならないことはご存知のはずです。暴れさせてはいけませんが、かといって抑制しすぎては2度と店に来てもらえなくなります。

夜のマチを歩く人たちは、日頃のうっぷんを晴らしに来ているのです。

あなたには、彼ら彼女たちのストレスを上手に発散させつつ、しかし自由奔放に振る舞わせない「手綱裁き(たづなさばき)」が求められているのです。

居酒屋大手の売上高
社名 店名 売上
1位 コロワイド 甘太郎、北海道 1,775億円
2位 ワタミ 和民 1,553億円
3位 モンテローザ 白木屋、笑笑、魚民 1,455億円
4位 大庄 庄や、やるき茶屋 731億円
資料「居酒屋業界地図」(日経業界地図2016年版)

辞めたい理由と悩み2:忙しいと無性にイラつく、暇だと意味のない無茶ぶりをしてくる、これがダメ居酒屋店長の実態。

酔客の次に伊藤ささこさんを苦しめたのは、店長でした。彼は33歳の課長職で、社内ではそれなりの地位にある人物でした。

ささこさんは当初、店長のことを「苦手だなあ」と感じつつも「夜の商売だからこれくらい厳しくされても仕方がないか」とあきらめていました。

しかし、ささこさんの社内での人脈が広がってくると、その店長は「彼の下で働く社員は必ず潰される」という異名を持っていることが分かりました。

その店で正社員なのは、店長とささこさんだけでした。ほかのスタッフは、ホールも厨房も、アルバイトまたは契約社員だったのです。

店長の性格を一言で言い表わすと「気分屋」でした。忘年会シーズンや歓送迎会シーズンの超繁忙期に突入すると途端に機嫌が悪くなり、バックヤードにおいて、ささこさんを怒鳴り散らします。

では、暇なときは機嫌が良いかというとそんなことはなく、売上が落ち込むと自分の査定に響くので、ささこさんに突然「ビラまきに行ってこい」と、場当たり的な指示を出すのでした。

バイトを辞めさせると店長にもペナルティが課せられるので、店長がバイトにイラついても、その不満は正社員であるささこさんに向かいます。

また、調理師の機嫌を損ねると、露骨に盛り付けが雑になったり、わざと料理出しを遅らせたりするので、厨房へのいらいらもささこさんに向かいます。

店長が感情を爆発させても辞めない唯一の人物であるささこさんは、店内の唯一の被害者でもあったのです。

居酒屋チェーンスタッフのあなたも、社会人である以上は「上司の不機嫌を受け止めるのも給料のうち」と覚悟しているはずです。

しかし、飲食店の店長クラスは理不尽な人が多いように感じているのではないでしょうか。あるファミリーレストランは、「懇切丁寧な新人教育」を行っているということで、テレビ番組の取材を受けました。こうしたことがニュースになるくらい、飲食業での社員教育や管理職指導は遅れているのです。

あなたは自分で成長していかなければならないのです、店長からの攻撃を受けながら。

「居酒屋を除く飲食店」の市場規模はピーク時の1997年に戻ったが「居酒屋」にはお客は戻ってきていない
居酒屋と、居酒屋を除く飲食店の市場規模(単位:億円)
1997年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 1997年比
居酒屋 14,305 9,928 9,780 10,187 10,380 10,672 -25.4%
居酒屋を除く飲食店 134.406 122,230 124,683 129,088 132,204 134,965 +0.4%

資料「外食産業市場規模推移」(職の安全・安心財団)http://www.anan-zaidan.or.jp/data/index.html

辞めたい理由と悩み3:人手不足が居酒屋最大の弱みなのはバイト自身もよく知っている…伊藤さんの苦悩は尽きない。

伊藤ささこさんの居酒屋チェーン正社員時代の3大悩みのうち、酔客と店長について紹介しました。

3つめのストレスはバイトたちでした。ささこさんは「彼らにはほとほと疲れ果てました」と振り返ります。

バイトの勤務シフトの作成は、同じ会社の他店では店長の仕事でしたが、そこでは新人正社員のささこさんがやらされていました。

なのでささこさんは、バイトたちのわがままを一手に引き受けて苦悶していたのです。

ささこさんの言葉には少々過激なワードが使われているのですが、居酒屋チェーンのリアルを伝えるためそのまま引用します。

「高校生バイトは素直だが気が利かない、大学生バイトは賢いがずるい、主婦バイトは根性がなくすぐ泣く、中年男性で居酒屋チェーンでバイトしているような人は、バカでもないしずるくもないし根性もそこそこあるが、すべてにおいて中途半端で一番使いづらい。

そしてアジア人のバイトが『日本人より懸命に働く』のは昔の話で、いまの彼らは1円でも高い時給を求めて店を渡り歩くので、辞めるときは一瞬です。彼らは日本に来る前に、日本の居酒屋が人手不足であることを知っているから、こちらの足元を見て言いたいことを言い放題なんです」

ささこさんがこのように苦い体験を強いられてきたのは、居酒屋チェーン業界が抱える大きな課題と無縁ではないでしょう。この業界はいま岐路に立たされていて、ささこさんのような新人社員をケアしている余裕がないのです。

居酒屋が長年かけて築きあげてきた庶民の飲み屋としての地位が、ファミリーレストランに奪われつつあるのです。いわゆる「ちょい飲み」の登場です。

ちょっと1、2杯飲んで帰りたい人は、居酒屋に行ってしまうと長居してしまうので「ファミレスで済ましてしまおう」という心理が働くのです。ファミレス側もそのニーズを把握していて、アルコールやおつまみのメニューを充実させ、客の取り込みに成功しています。

こうしたトレンドは既に数字に表れていて、「飲食する機会」は居酒屋では減少傾向にありますが、ファミレスは逆に増加しているのです。

2013年の「飲食する機会」を2009年と比較した増減率
全メニュー アルコール
居酒屋 -11.2% -13.3%
ファミリーレストラン +7.9% +1.5%

資料「外食・アルコール市場」(エヌピーディー・ジャパン株式会社)

外食・アルコール市場 ~伸びる“ちょい飲み”需要のドライバーは?~ - エヌピーディー・ジャパン / NPD Japan

では、「ちょい飲み」客を奪われている居酒屋チェーンが「がっつり飲み」客を取り込めているかというと、ここにも不安材料があります。サラリーパーソンの1回の飲み代は、2009年には5000円を超えていましたが、2014年は4000円を大幅に割り込んでしまっているのです。

サラリーパーソンの1回の飲み代は減少傾向にある
2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2009年比
5,170円 4,190円 3,540円 2,860円 3,474円 3,483円 -32.6%
資料「2014年 サラリーマンのお小遣い調査結果」(新生銀行)

あなたが店内で店長や先輩社員につらく当たられるのは、店長や先輩社員が社内でつらい立場にあるからです。そして店長や先輩社員をいじめている社長や経営陣も、売上不振に悩んでいるのです。

あなたの悩みは、負の連鎖の底に沈む者の悩みなのです。

では、居酒屋チェーンに勤めるあなたはどうすればよいのでしょうか?
この先もつらい現実に耐えながら生きていかなけばならないのでしょうか?
いいえ、居酒屋チェーン店員の人生を変える解法」はきちんと存在していますので、それを今からご説明いたします。

あなたの「会社を辞めたくなる悩み」への対応策

1.業界に骨をうずめる覚悟で腹をくくり、隣接エリア最強の店長と店舗を目指す!

さて、先ほど「居酒屋チェーンは岐路に立たされている」と紹介しましたが、しかしこの業界はしぶといことでも有名です。突然、大ヒットを飛ばす会社が出てくるのです。ドリームが詰まっている業界ともいえます。

ならば、この業界で骨をうずめる覚悟で立身出世の成功をもぎ取るのも選択肢の1つです。

そこで「いま勤めている居酒屋チェーンは辞めたい」が「この業界には未練がある」という人は、近隣エリアのなかでも最も目立ち、高い営業成績を誇る最強の店長を目指してみてはいかがでしょうか。

かつて多くのサラリーパーソンは、モーレツに管理職を目指していました。ところが現代の働く人たちは、露骨な上昇志向を見せません。「一生懸命働いても見返りが小さい」と見切っているからでしょう。

しかし、本当に見返りは小さいのでしょうか。

あなたは、居酒屋チェーンの店長の裁量権はそれほど大きくない、と感じているかもしれませんが、それは本当でしょうか。そうならばなぜ、店によって売上が大きく違うのでしょうか。また、なぜ、店長が変わったら急に売上が上がったり下がったりするのでしょうか。

居酒屋チェーンの店長は、ある意味「社長」なのです。店の特色を決めるのは「会社が作成したマニュアルが50%、店長のキャラクターが50%」といったイメージを持ってください。

優れた店長は、バイトの勤務シフト作りが絶妙です。スタッフたちを「スキル別」「得意業務別」「相性別」に把握し、さらにバイトたちの要望を可能な限り受け入れて、「その日のスタッフ」を決めています。だからスタッフたちは、効率的かつ楽しく働くことができるのです。快活に働いているスタッフがいる居酒屋が儲からないはずがありません。

いち社員が店長を目指すには、人を管理するスキルを磨く必要があります。そしてそのスキルは、いまの会社に残る場合でも、他社の居酒屋チェーンに移っても、または、まったく別の業種に転職しても活かすことができます。

一生無駄にならないスキルといえるでしょう。

さらに店長になるには、売上管理や食材管理、店内の清潔管理など、ありとあらゆる管理スキルが求められます。

これが「店長は社長である」という意味です。優秀な店長は、本社の指示取りに動いているようでいて、実は独自性をいかんなく発揮しているのです。

どうせこの業界に骨をうずめるのならば、ただ単に会社の命令で動くだけのイチ社員ではなく、自分自身の考えで動ける主体性をもったヤリ手店長を、あなたも目指すべきではないでしょうか。

2.業界内外で注目を浴びる資格を取りまくり、メディアに自分自身を露出させて集客する

居酒屋チェーンの正社員のあなたは、昔から飲食業に興味があったのではないでしょうか。「辞めたい」と思ったときは、初心に返るチャンスです。あなたはどんな飲食店に勤めたかったのでしょうか。

少なくとも「冷凍食品を少し加工しただけの料理」や「セントラルキッチンで作られたものを盛り付けるだけのメニュー」を提供したくてこの飲食業に入ったわけではないはずです。

そこで、例えば日本野菜ソムリエ協会が認定する「野菜ソムリエ」「きき酒師」「お米マイスター」といったような、自社店舗のメニューやコンセプトと親和性が高く、尚且つ、メディアで注目を浴びやすい資格に挑戦してはいかがでしょうか。

飲食店舗を紹介している多くのメディアでは、店員が取得している「飲食にまつわる一風変わった資格」を紹介しつつ、その人物にクローズアップすることで取材をしているのは、なんとなく肌感覚でおわかりになるのではないでしょうか。

また、そういったメディアに頻繁に登場する店員がいる居酒屋店舗は、取材をきっかけに多数のお客様が来店するという、メディア集客効果を享受することができます。当然、会社の覚えもよいため、あなた自身の社内評価が1段も2段も高くなることは言うまでもありません。

例えばよく耳にする野菜ソムリエ資格は、単に「野菜にすごく詳しい人」ではありません。食文化に精通している人であり、食に関する情報の発信者であり、健康を届ける人であり、そして新しい食を作る人でもあるのです。

「野菜ソムリエコース」の受講料は約15万円、その上の資格である「野菜ソムリエプロコース」の受講料は約32万円です。決して安い資格とはいえませんが、野菜をメニューとして取り扱う飲食業のプロフェッショナルとしてグレードはぐっと上がります。

あなたには是非、「マニュアル通りの仕事」の次を目指していただきたく、資格はその一歩になります。野菜ソムリエだけでなく、ワインソムリエや調理師免許など、あなたをグレードアップさせる飲食関連資格は年々増加傾向ですので、チャンスとトレンドを逃さないようにしましょう。

飲食業の人としてグレードアップできる主な資格
野菜ソムリエ ソムリエ(ワイン) 調理師 調味料マイスター
食品衛生責任者 きき酒師 栄養士 デザートクリエイター
菓子製造技能士 カレーマイスター パン製造技能士 フードコーディネーター

3.居酒屋チェーンの正社員を辞めて他業界に転職する

もしあなたが「大量消費」と「安さ勝負の商売」に限界を感じているなら、それは「本当に居酒屋チェーンを辞めたい」という自分の心のサインです。

そういうあなたは、上を目指したり資格を取得したりすることはひとまず置いておき、転職の準備に着手しましょう。

しかし、あわてないでください。じっくり戦略を練りましょう。

まずは、「居酒屋チェーンとは別の飲食関連」を目指すのか、「飲食とはまったく異なる業種」に進むのか決めてください。

その決定は、後で変えてもOKですが、とりあえずいまは、どちらかに絞ってください。そうでないと、転職活動がちぐはぐになって、就職後に「何のための転職だったか?」となってしまいます。

居酒屋チェーンで正社員として活躍してきたあなたの実績があれば、「居酒屋チェーンとは別の飲食関連」であろうと「飲食とはまったく異なる業種」であろうと、新天地で活躍できることには変わりありません。

ハードな居酒屋チェーンでの業務をこなしてきたあなたなら、どこに行っても応用力を働かせることができるでしょう。

他業種への転職…不安はよくわかります。

しかし、まく居酒屋チェーン店勤務を抜け出して、人生の立て直しに成功した人の多くは、居酒屋以外への道を選択した人々なのです
この件について、以下でより詳しく説明いたします。

居酒屋チェーン正社員の辞め方とタイミング

1:勤務シフトすら作れない店長。なんで部下が上司に仕事を引き継がなければならないの!?

居酒屋チェーンの正社員だった伊藤ささこさん(仮名、23歳)は、新卒で働き始めてわずか3年働いただけでしたが、退職を願い出たとき、本部は猛烈な引き留めにかかりました。

一般のサラリーパーソンなら「そんな若手を強引に引き留めても仕方ないのになあ」と感じるかもしれませんが、居酒屋で働いた経験があるあなたなら「いや、3年『も』キャリアがある正社員なら、簡単に辞めさせてもらえない」ことを知っているはずです。

ささこさんも、退職の表明から実際の退職日まで苦労させられました。

最初の関門は気分屋の店長でした。ささこさんが最初に「退職しようと思っています」と告げた人です。店長は当初「ふーん、そうなんだ。辞めたきゃ辞めればいいでしょ」と突き放した態度に出ました。ささこさんはカチンときましたが、これで遠慮なく就活ができると喜びました。

しかし、店長の態度は翌日に豹変しました。「イトーちゃーん、辞めるなんて言わないでよお」と、ささこさんにすり寄ってきたのです。ささこさんは「やっぱりそうだろうな」と思いました。

というのは、この店長はバイトや契約社員たちのことをまったく知らなかったからです。勤務シフトを組めないだけではありません、相性が悪い2人を同じ時間に働かせると、途端に店の雰囲気が悪くなり店のパフォーマンスが下がり、如実に売上が落ちます。

厨房の調理師たちは、スキルがばらばらで、「出来る者」同士を同じ日に入れてしまうと、別の日が「出来ない者だけの日」になってしまいます。

鶏のから揚げやポテトフライには高いスキルは不要ですが、「大判カレイ」の煮つけの最終工程や、炭火で仕上げなければならない「プレミアム焼き鳥」をマニュアル通りに仕上げるには、それなりの技術が必要です。

なので「出来ない者だけの日」だと、調理師たちは平気に「今日はできる人がいないよ」とホール担当が持ってきたオーダーを断ってしまうのでした。

そこからが大変でした。ささこさんは通常業務をこなしながら、スタッフ全員の性格や希望をメモにまとめた「引き継ぎ帳」を作成しました。作業は深夜にまで及びました。

それを受け取った店長は「イトーちゃーん、助かるわあ」と、やはり甘い口調で言うのでした。

まだあります。

ささこさんは「もしや」と思い、店長に「外注業者さんの担当者名はご存じですか?」と尋ねました。この店の人気料理のほとんどは、居酒屋チェーン本部が運営するセントラルキッチンで作り各店舗に運ばれるのですが、人気料理以外の汎用性が高いメニューについては、外注業者から購入していたのです。

汎用メニューとはいえ、売上の5割を稼ぎ出しているドル箱です。ささこさんは外注業者の担当者とコミュニケーションを重ねることで、よその居酒屋で人気が出ていて品薄状態のメニューでも、きちんと回してもらっていました。

そこでささこさんは店長に「外注業者さんを大切にしないと、必要な商品が届きませんよ」と脅しました。このときも店長は「俺に指図するな」という目つきで立ち去りましたが、翌日また「イトーちゃーん、外注業者さんを紹介してぇー」と近づいてきました。

あなたがもし店のオペレーションを実質1人で行っていたとしたら、店長や上司は、あなたを必死で会社につなぎとめようとするでしょう。

働く人は退職届を出してから2週間で退職できる「権利」を持っていますが、さまざまなしがらみを1つひとつ切っていかないと、とてもそんな短期間で辞めることはできないでしょう。

2:自分を支えてくれたバイトに迷惑をかけられない。そんな仕事魂がサービス残業に走らせる。

ささこさんは、退職までの道のりについて「入社3年目の社員が、店長に仕事を引き継ぐのに、どうしてここまでやってやらないといけなんでしょうか」と言いました。

バイトたちのシフト勤務表の作り方や、外注業者との顔つなぎの他にも、ささこさんが店長を「指導」することはたくさんありました。

ささこさんは「こいつ、本当になんも仕事してねーなって思いました」と憤る一方で、「これは店長の作戦では」と疑うようになりました。ささこさんの読みは、こうです。

  • 店長は、ささこさんがやってきた細かくて複雑な仕事を引き継ぎたくないと思っている
  • だから、引き継ぎをだらだらやって、ささこさんが辞められないように仕向けている
  • というのも、本部はいずれ、ささこさんの後任社員を送ってくれるだろう
  • その後任社員が、ささこさんから直接仕事を引き受ければよいのだ

そこで、ささこさんは、本部に「もう3週間も引き継ぎ業務をしていますが、店長は一向に仕事を覚えてくれません。2週間後に必ず退職します」と直訴しました。

それから店長は一切ささこさんと口をききませんでした。「きっと本部から説教をくらったんだと思いますよ」とささこさんは笑って言いました。

しかし、本部にそこまで強気な態度に出た以上、ささこさんは「何があってもバイトさんたちに迷惑をかけてはいけない」と心に誓いました。

ささこさんは、高校生、大学生、主婦、中年、外国人のすべてのバイトに、「あなたが気を付けること」を伝えました。それは、「そこまで言ってしまったら辞めてしまうかもしれないから言えなかったこと」であり、厳しい内容も含まれていました。

しかし一部のバイトたちは、その指摘を喜びました。そして、ささこさんの最終出勤日に仕事に出ていたバイトや調理師たちは、閉店後にささやかなプレゼントをささこさんに渡しました。

ささこさんは「やってきたことは間違ってなかったんだ」と確信しました。

もちろんその輪の中には店長はいませんでしたが。

しかし、ささこさんがスタッフたちにこれだけ慕われたのは当然といえば当然です。ささこさんには有給休暇が20日残っていましたが、結局1日も使わずに辞めてしまいました。しかも、引き継ぎに要した時間外労働の対価ももらっていません、完全なサービス残業です。

ささこさんは「どうして辞める会社にこんなに尽くさなければならないのか」と途中何度も思いましたが、「店長に勝つためだ」と自らを鼓舞して仕事を貫き通したのでした。

居酒屋チェーン店の勤務経験が優遇される、より就労条件のよい「おすすめ転職先」の例

1.激務の居酒屋ホール業務ではなく、調理スタッフとして転身を図ってみる

居酒屋チェーンのスタッフ経験がある人におすすめしたい転職先は、めまぐるしく客が押し寄せるような居酒屋ではなく、比較的ゆったりと接客や調理がすることができるレストランやカフェでの調理人に転職することです。

特に、人員的に替えがききやすいホールスタッフよりも、調理も兼任できるスタッフ、もしくは調理専門で勤務することができる求人がおすすめです。

多くの人が勘違いしていることなのですが、調理の仕事に就くために、調理師免許は要りません。もちろん調理師免許はあった方が有利ですが、法律上、免許がなくても調理はできます。

あなたに厨房の仕事をおすすめするのは、ホールの仕事や店のオペレーションを身に付けた人が厨房の世界を知れば、飲食の業務はほぼコンプリートできるからです。ホール事情もよく知っている調理師が誕生するというわけですね。

しかも、世の中の大半を占める多く飲食店の厨房の仕事は、1流ホテルや超高級料亭のような複雑な調理技術や、有名スイーツ店の留学経験があるパティシエたちのようなスキルを必要とはしていません。本部が運営するセントラルキッチンが8~9割以上作った料理を仕上げるだけでも成り立っている飲食業の方が、圧倒的に多数です。

なぜなら、多くの中級レベル飲食店の調理は「少し練習すれば誰にでもできる」ことが前提だからです。そうでなければ複数店舗を展開していくことは経営上できないからです。

あなたは「厨房は別世界」「料理人は宇宙人」と感じていませんか。多くのレストランやカフェにおいて、それは大きな誤解です。

例えば、転職・求人サイトDODAの「飲食求人」をのぞくと、こんな表記があります。

募集する職種 条件
A社 料理長候補 未経験者歓迎
B社 地魚居酒屋の調理長補佐 外食ホール経験者
C社 調理スタッフ 経験者優遇だが未経験者も応募可
D社 和牛しゃぶしゃぶとこだわりの日本酒を提供する店の調理業務 調理経験歓迎
資料「飲食の転職・求人検索結果」(DODA)

A社は料理長候補を募集しているにも関わらず、調理経験不問です。B社も、魚料理をメインに打ち出しているにもかかわらず、必要な経験はホール業務です。

C社の求人は、店側の「苦悩」が透けて見えます。本当は経験者を採用したいのですが、採用できなかったときの「保険」として、未経験者を採用して育成することを覚悟しているのです。D社もメニューに強いこだわりがあるのに、調理経験は「歓迎」にとどめています。

こうした求人票から分かることは、飲食店の経営者は「やる気さえあれば誰でも調理スキルを身に付けられる」と考えている、ということです。

「居酒屋チェーンは辞めたい」と思っていても、飲食業の仕事を極めたいあなたは、この機会に調理の世界に飛び込んでみてください。きっと将来の糧になるでしょう。

2.数で勝負の激安居酒屋から、質で勝負のゆったりした高級レストランのホールスタッフに転身する

料理や飲食の仕事がしたかったあなたが、居酒屋チェーンのスタッフを辞めたいと思うようになってしまったのは、「ひたすら激務の居酒屋チェーンの経営モデル肌に合わない」からかもしれません。つまり、飲食の別業態なら水を得た魚のように活躍できるかもしれません。

そこで、あなたには、よりゆったりとお客様に応対することができる高級レストランへの転職をおすすめします。

高級レストランへの転職に「なるほどその道があったか」と思えない方は、「私で務まるのかしら」と考えてしまったのではないでしょうか。

その気持ちは、十部に理解できますが次の表をご覧ください。

高級レストランに勤務する前に悩むこと
a フレンチだけでなくイタリアンでも高級店はルールが厳しそう。自分は耐えられる?
b 高級レストランで食事をするにはマナーが求められる。ということは、働く人もマナーを身に付けていなければならない?
c 高級店に来る人はセレブやVIPたち。私がもてなして満足させられる? 自分がみじめな気持にならない?

もしあなたがいま「まさにこれが私の悩み」と感じたとしたら、だからこそ、あなたに高級レストランをおすすめするのです。

つまり、お店のルール(a)も高度なマナー(b)もセレブへのおもてなし(c)も、これこそが居酒屋チェーンにないものであり、激務に翻弄されてきた居酒屋チェーン勤務に違和感を持ったあなたが求めるものなのです。

これらの技術は一朝一夕に身につくものではないのは当然でもありますが、ただし、1度身につければ飲食業界において、非常に汎用性が高く応用できる技術、知識、経験となります。

高価格帯のレストランは立ち居振る舞いから料理の知識まですべてにおいて「質」を求められるが故に、出店ラッシュで「スピード」ばかり求める居酒屋チェーンとは対照的に、ゆっくり時間をかけて確実に従業員教育をしています。

1つの修業期間と考え、飲食業界ではどこに行っても通用する知識を身に着ける目的で、高価格帯レストランにトライするのは、大きな人生の転換点になる可能性を秘めているはずです。

3.これまでの接客対応力をフル活用し、アパレル店員に転職

もしあなたが「居酒屋チェーンから離れるだけでなく、飲食業から完全に撤退したい」と考えていたら、転職先の1候補としてアパレル業界をおすすめします。

特に居酒屋チェーン店のメイン顧客層となるような20代~30代の女性と同年代をターゲットとするアパレルブランドへの転職なら猶更有利ですし、ブランド力がなくとも、ユニクロやしまむらなどの勢いがある大手企業がけん引役となっているので、転職候補先には事欠かないのも魅力の1つです。

アパレル業界と飲食業界の市場規模の比較
アパレル業界(2014年6月) 飲食業界(2014年6月)
市場規模 4兆7867億円 4兆2526億円
過去5年の伸び率 +4.0% +1.7%
労働者数 35,663人 48,529人
平均年齢 38.9 歳 36.9歳
平均勤続年数 12.3年 8.5年
平均年収 507万円 475万円

この表から読み取れるアパレルの特徴は、次の通りです。

  • 成長が著しい(過去5年伸び率は飲食よりかなり高い)
  • 1人当たりの売上高が大きい(市場規模は飲食より大きいのに、労働者数が少ない。つまり効率的に稼いでいるということ)
  • それが年収に反映されている(年収は飲料の1.07倍)
  • じっくり働ける(平均勤続年数の長さは「働きやすさ」の指数でもある)

これがアパレル業界の魅力です。あなたがこの業界に飛び込む価値は、十分あると考えます。

人生の選択肢は常にあなた自身が持っている

居酒屋チェーン店勤務のあなたの人生を変えるために、まず一番注目すべきことは「居酒屋チェーン店以外の職場もあることを知る」ということです。
案外、外部と交流がない居酒屋業界人は井の中の蛙になることが多いです。
自分の会社以外のことを全く知らないというケースも非常に多いようで、勇気を出して一歩外に踏み出せば大きな海が広がっているということを、改めて考えてみてはどうでしょうか。

兎に角、どうしても今の悩みが解決できなければ「別に辞めればいい」「辞めたっていいんだ」「自分は自由に人生を選択できるんだ」と割り切ること。

周囲からの目を気にしたり、あなたの人生と無関係な上司のメンツを立てて、自分の人生を後回しにしてします思考こそが「今の職場を辞められなくなってしまう」ことの最大原因であり、悩みをより深くして人生を間違えてしまう事につながります。

転職コーディネーターに無料相談することから始める

自分自身でまず何をしてよいかわからないならば、人材紹介会社に登録するのも手。
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また、辞めづらい今の職場で、(転職先を紹介してもらった後に)スムーズに次の職場に移動するための方法やタイミングなどもしっかり教えてくれますよ。

いきなり仕事を辞めたりはせず、まずはじっくり転職エージェントと無料のアポイントを取って、今後の動き方を相談しつつ、あなたの希望に沿った新天地候補をじっくりと紹介してもらうべきでしょう。

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