
北野筆太

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記事の目次
外部から見れば立派な「一流企業」の損保会社でも、成績が悪ければ容赦なく「自爆」を押し付けられるブラックな体質に我慢ができない…。
荒川岳さん(仮名、30歳)に、大手損害保険会社という超一流企業をわずか5年で退職した理由を尋ねると、「最初に断っておきますが、僕は損保業界の将来性に失望して辞めたわけじゃなくて、国内の大手損害保険会社に嫌気をさしたから、去る決心をしたんです」と答えてくれました。
仕事にはやりがいを感じていたが、勤務先の会社が嫌で辞める――。
これだけなら、よくある話です。しかし荒川さんの強い語調からは、それ以上の意味があるように感じられました。それで質問を重ねると、荒川さんの発言の真意が見えてきました。
荒川さんにとっての「損保」とは
- 損害保険は、日本のみならず世界中の経済活動を支えている
- 損害保険という制度があるから、企業は様々なチャレンジができる
- 損害保険が整備されたから、日本は世界有数の車社会になった
荒川さんが、損保には「自動車」「火災」「地震」「傷害」「賠償責任」「貨物・運送」など多くの種類があることを知ったのは、就活のときでした。主に死亡や疾病を扱う生命保険に比べると、守備範囲がかなり広いと感じ、この業界を選びました。
「新入社員研修に役員がやってきて『私たちがいなかったら、日本経済は1歩も歩めない』と言ったのを聞いたとき、鳥肌が立ちました」
荒川さんは「自分はこれから日本を背負って立つ仕事に就く」と感じたそうです。
しかしそんな興奮は、新入社員研修が終わり、最初の部署に配属された瞬間に消えました。
荒川さんの社会人人生の最初の上司は、あいさつもそこそこに、荒川さんに「自爆」を迫ったのです。
損保業界にいるあなたなら、もちろん自爆はご存じかと思います。
荒川さんの最初の自爆は、300万円の自動車でした。荒川さんが契約書に判を押すと、上司は「ローンの支払いは給料天引きだから、安心してね」とニッコリ笑いました。
自爆の詳細については、後ほどじっくり解説します。損保の闇を、荒川さんの体験談を交えながらみてみましょう。
損保業界ならではの、就業中の不満、大変さ、辛さと悩み
辞めたい理由と悩み1:交通事故の示談交渉はとても嫌な仕事。「人はカネが絡むと豹変する」ことを損保マンは嫌でも学ぶ。
荒川さんが最初に配属されたのは、損害サービス部という部署で、主に自動車事故の示談交渉と保険金を支払う仕事をしました。
示談交渉は、仕事に着手した瞬間から修羅場と化します。それはそうでしょう。2台の車が交通事故を起こせば、双方の運転手は自分の過失の少なさを、ものすごい勢いで主張します。
「赤信号で停止していた車に、後ろからぶつかった運転手が『自分は一切悪くない』って言うこともあるんですよ」
荒川さんはあきれたように言いました。
示談交渉の担当者は原則、自社契約者の「味方」となり、「敵」である事故相手と交渉します。事故発生当初は自分の非を認めて謝っていた事故相手も、時間の経過とともに横柄になり、そして逆切れを起こします。
荒川さんのことを「バカ」「お前」「この野郎」呼ばわりし、過失割合を小さくしろと脅します。交渉は何度も行うことから、お互いに携帯電話の番号を交換し合うのですが、人は酔うと気持ちが大きくなるので、夜のクレーム電話は攻撃力が倍増します。
こういうクレーマーは、荒川さんが何度も「あとは保険屋同士で話し合いをしますので」と言っても、一向に治まりません。
そして示談交渉担当者は「味方」に噛みつかれることも珍しくありません。自社契約者が事故加害者になるケースです。
事故状況を聞き取り、過失割合の「相場」を伝えても、「何のためにこれまで高い保険料を払ってきたと思ってるんだ。こっちの責任を少しでも減らすのがあんたの仕事だろう」と言うのです。
荒川さんはこう振り返ります。
「人って、おカネが絡むと簡単に裏の顔を見せるんですよね。家庭や会社の中では絶対に出さない陰険な部分を、保険屋にはすぐにさらけ出します。人間不信に陥りましたね」
損保の6割は自動車関連!
正味収入保険料の保険種目別構成比(2015年度)8兆3597億円 | |||||
自動車関連(60.2%、5兆354億円) | 火災 | 傷害 | 新種 | 海上・運送 | |
自動車保険 | 自賠責保険 | ||||
47.8% | 12.4% | 16.0% | 8.2% | 12.4% | 3.2% |
3兆9987億円 | 1兆367億円 | 1兆3375億円 | 6893億円 | 1兆330億円 | 2645億円 |
自動車保険の保険金支払い額は年間約8000億円!
http://www.giroj.or.jp/disclosure/toukei/toukei_h27_01.pdf
辞めたい理由と悩み2:お客様のためを思って働くほどに長時間労働から逃げられなくなる日々…24時間365日対応は今や業界常識となりつつある。
若い荒川さんには、残業の多さも大きなストレス要因でした。退勤時間は必ず21時以降です。
なぜそんな時間になるのかというと、日中は次から次へと事故の報告があり新規の事故と、前日以前の既存の事故の対応に追われるからです。事務所の電話機と、会社支給の携帯電話はほとんど鳴りっぱなしです。
終業時間になると、とりあえず事務所の電話は鳴らなくなるので、そこから事務作業を行うことになります。しかし、終業時間後でも、緊急対応が必要な場合で、さらにそれがこじれたりすると、すぐに夜中になってしまいます。
業務スケジュールは「残業ありき」で組まれています。
こうした光景は、損保業界にいるあなたにはお馴染みでしょうか。損害保険会社はこぞって「24時間365日の事故対応」をPRしています。あくまでそれは事故対応コールセンターにおいてのことですが、契約者は遠慮なく担当の損保社員に直接連絡を24時間入れるようになります。お客様にとってはコールセンターも担当者も損保会社を代表とする窓口でしかないので、至極当たり前とも言えます。
夜中に対応する案件の中には「明日でもいいでしょ」という依頼も数多く含まれています。それでも契約者から「日付が変わる前に解決させたい」と強く言われれば、あなたは24時までパソコンとにらめっこするしかないのです。
損保会社本体がサービスの良さを宣伝すればするだけ、あなたの仕事は過酷になっていきます。損保の末端社員たちは「待てない現代人」の被害者ともいえるかもしれません。
国内の損保業界のトピックス
トピックス1:
国内の損害保険業界の市場規模を表す「正味収入保険料」は、2015年度は8兆3597億円
2010年度 | 2011年度 | 2012年度 | 2013年度 | 2014年度 | 2015年度 |
6兆9710億円 | 7兆1161億円 | 7兆3718億円 | 7兆7713億円 | 8兆831億円 | 8兆3597億円 |
トピックス2:
正味収入保険料は2011年度以降、5年連続で増加、市場規模は拡大傾向
トピックス3:
正味収入保険料の約5割を占める自動車保険は増収基調。火災保険も好調。建設工事、動産、機械の保険ニーズも高まっている。新たな産業の創出に伴ったリスクが生まれているためと考えられる。
辞めたい理由と悩み3:「自爆で取引先に貢献しろ!」というプレッシャー。欲しくもない車を300万円で買わされる悲劇。
それでは、荒川さんが衝撃を受けた「300万円の自動車の自爆」について紹介します。
「自爆」とは取引先の商品やサービスを、自腹で購入することをいいます。営業パーソンが、自社の製品やサービスを取引先に購入してもらう代わりに、取引先の商品やサービスを買う「悪しきビジネス慣習」です。「持ちつ持たれつ」の関係ともいいます。
荒川さんは入社して最初の配属先で、上司から「このメーカーのこの車種の車を買ってもらうからね」と言われ、売買契約書を渡されました。その車を販売しているのは、この部署の大口顧客であるディーラーです。
荒川さんが「ああ、これが自爆ってやつか。のっけから車はきついけど、洗礼と思って買わなきゃな」とすぐに覚悟を決められたのは、自爆について既に同期の間で噂になっていたからです。また「社会人になったらマイカーを買おう」とも思っていました。
しかし、上司が示した車は、荒川さんが欲しかった車種ではありません。そもそもそのメーカー自体が好きではありませんでした。
それで荒川さんは「あの、せめて車種は選べないんでしょうか。僕、独身ですので、ミニバンはちょっと持てあますと思うんです」と言いました。
上司は表情を曇らせ、こんな話をしました。
「君、自爆の意味を吐き違えているよ。君に買ってもらうのは、ディーラーさんでキャンセルに遭った車なの。困った処理をするから、自爆に価値が出てくるんじゃないか。
俺の同僚なんて、旭川に赴任していたころ、オープンカーを買わされたんだから。もちろん後輪駆動車ね。そいつは『せめて四駆を…』と懇願したけど、まったく意に介されなかったよ」
北海道旭川市は冬場は道路が完全に凍結するので、後輪駆動車は向かないとされています。もちろんオープンカーとはいえ、冬に幌を上げて走ることなんてできません。
荒川さんは「その人はその車を乗り続けたんですか?」と尋ねました。
上司は「ばーか、本州の人間がいきなり旭川の冬道で後輪駆動車に乗ったら、事故するよ。そいつはすぐにオープンカーを売って、小さい4WD車を買ったよ」と笑いました。
自爆は車だけにとどまりませんでした。
冒頭で、「損害保険には自動車、火災、地震、傷害、賠償責任、貨物・運送など多くの種類があり、守備範囲は相当広い」と紹介しました。つまり、国内のありとあらゆる企業が顧客になるので、国内のありとあらゆる商品が自爆の対象になるのです。ファストフードですら、商品券を購入することで「お礼」ができます。
どの業界でも、多かれ少なかれ営業マンたちは自爆をしていますが、損保社員の自爆は常軌を逸していると荒川さんは考えています。その理由は次の通りです。
荒川さんが考える損保社員が多額の自爆から逃げられない理由
- 売る商品の差別化が難しい。生命保険は現在では会社によって「特約」が大きく異なるが、損保はまた各社での違いが見えづらい。
- よって顧客は「どの損保会社でも同じ」と考える。
- そのため損保側は「ペコペコ営業」をするしかない。
- ペコペコしているから付け込まれる。
- 販売計画に「損保社員による自爆」を織り込んでいる取引先もある。
荒川さんは「国内の損保業界には、こうした腐った慣習が根強く残っています。なぜだか分かりますか。それは、努力をしない業界だからです。そして、努力をしなくても売り上げを叩き出せる業界だからです」と興奮した様子で言いました。
しかし、これだけ厳しい環境に置かれている日本のビジネスシーンに、努力を必要としない業界など存在するのでしょうか。その質問を荒川さんにぶつけると、「まあ、損保くらいでしょうね」と答えてくれました。
荒川さんが考える「損保会社が努力しなくても生き残れる」理由
- 損保の本当の営業は、代理店が行っている。損保会社の営業は、実質「代理店の管理」にすぎない。
- なので損保会社の社員は「営業の極意」が身に付かない。
- 損保も「金融」の一員だが、銀行、証券、生命保険と比べると、日本経済や株価、為替、債券などの値動きとの関連性が低い。
- つまり、損保マンは、日本経済、株価、為替、債券の動きを把握していなくても務まる「なんちゃって金融マン」である。
このように、荒川さんが持っている損保マンのイメージは、相当低いものです。
しかも、損害保険という商品は、実は代理店が9割も売っています。損保会社自身が売っているのは1割に過ぎません。損保代理店は国内に20万店以上あり、「損保を買う」イコール「代理店から買う」状態なのです。
なので、代理店を管理することが「損保会社の営業」となるので、本物の営業が身に付かないのは当然でしょう。
荒川さんが国内損保大手を退職したのは、将来性の低さでした。「金融の知識も、営業のスキルも身に付かない」そういった焦りが、荒川さんを転職活動へと駆り立てたのでした。
大手損保会社は、一流企業です。その事実は、損保マンのあなたの自尊心を満足させているはずです。
しかし、自尊心が満たされているにも関わらず、あなたがいつも不安に感じるのはなぜでしょうか。それは先輩や上司を見て「俺もこうなっちゃうのか」と思わずにいられないからではないでしょうか。
損保会社で繰り広げられている社内政治のすさまじさに呆れ返るのは、あなただけではありません。実は荒川さんも、呆れていました。詳しくみてみましょう。
辞めたい理由と悩み4:社内政治に巻き込まれまいと抵抗するも、自分の上司にゴルフでゴマすり、いつの間にやら泥沼の派閥競争にすっかり摩耗する自分に気づく。
荒川さんは社内政治について、「うちの会社だけかと思ったら、同業他社でもすさまじいそうです」と、損保業界全体の問題であると考えています。
荒川さんが勤めていた大手損保会社では、入社間もない20代前半の若手ですら上司へのごますりに精を出すそうです。
彼らはまず、自爆を自ら買って出ます。カーナビ付きの車を自爆した人が、後日、後付けのカーナビを自爆したこともありました。
若手社員が自爆すればするほど、上司は取引先に「良い顔」ができるので、上司たちは自爆志願者をとてもかわいがります。
荒川さんの同期社員は、「自爆は自己投資だよ。俺は年収の半分は自爆に使うと決めた。半分になったって、そこらのサラリーマンよりは多いわけだから、生活水準をそれほど落とさなくてもやっていけるしな」と言ったそうです。
確かに大手損保会社の年収は高く、30代で1000万円に届く人もいます。自爆をしたところで、「エリートサラリーマンの年収」が「准エリート並み」に落ちるだけですので、十分豊かな生活は送ることができます。
ごますり社員たちは、自爆の資金が上限に達してしまうと、今度はゴルフを始めます。上司と一緒にプレーできるだけでなく、上司の自宅に迎えに行く口実ができるので、関係が緊密になります。
なぜこんな前時代的な社内政治が一流企業で健在なのか、荒川さんはその理由を教えてくれました。
「損保マンが上司のご機嫌取りに躍起になるのは、損保社員の仕事の成果が、金融知識や営業努力といった実力によらないからです。
銀行や証券会社であれば、管理職は優秀なスタッフをそろえようとします。優秀な人でないとパフォーマンスが上がらないからです。
しかし損保の仕事は、よほどダメな社員でなければそこそここなすことができるので、別に優秀なスタッフをそろえる必要がありません。むしろ、優秀な人はプライドが高いから、上司を突き上げたりして邪魔な存在です。
だから損保の管理職たちは、自分の忠誠を尽くす者だけを出世させるのです。若手もそれを知っているから、尻尾を振り続けるんです」
荒川さんのように「ザ金融」の仕事をしたかった人が損保業界に入ると、もどかしさを常に抱えることになります。
しかも損保でも長時間労働は常態化しています。仕事への意欲が薄れる中で、残業地獄に落ちることは苦痛以外の何物でもありません。
是非ともあなたには、やりがいをもって全力で打ち込める仕事に就いていただきたいのです。そこで次の章から、あなたが取るべき道を紹介していきます。
この先もつらい現実に耐えながら生きていかなけばならないのでしょうか?
いいえ、「損害保険会社勤務の人生を変える解法」はきちんと存在していますので、それを今からご説明いたします。
あなたの「会社を辞めたくなる悩み」への対応策
1.機関代理店の担当者にシフトする
荒川さんは、新卒で入社した国内損保大手を、わずか5年で辞めてしまいました。その理由を一言で表すと「やりがいを見出せなかったから」となりますが、本当に損保会社には、職業人生をかけるほどの仕事がないのでしょうか。
損保マンが自虐的に「自分たちは金融業界の最底辺」と言うのは、難しい金融知識をそれほど必要としないから――と荒川さんは分析していました。
また、火災保険や地震保険は、自然災害の発生頻度に左右されやすい商品で、日本経済との連動性が低いともいえ、これも自虐的になる要因でしょう。
そんな損保会社にあって、日本経済とリンクする仕事があります。
荒川さんは「その仕事」に携わることなく退職してしまいました。もし荒川さんが「その仕事」をしていたら、状況は変わっていたかもしれません。
その仕事とは、機関代理店の担当になることです。
代理店は損保の商品の9割を売る存在です。なので損保会社の社員にとって、代理店を支援・指導・監督する仕事はとても重要です。
その代理店には様々な種類があるのですが、ここでは「機関代理店」と「兼業代理店」について解説します。
機関代理店 | 上場企業が自社のグループ会社として損保代理店を設立する。上場企業という「機関」のためだけの損保代理店、という意味。 |
兼業代理店 | 例えばカーディーラーが副業として自動車保険を売る場合、兼業代理店と呼ばれる。 |
代表的な兼業代理店はカーディーラーです。「自動車保険」という損保商品は、「車を売る」という本業との関連性が高いため、車と一緒に自動車保険を売っても営業コストはそれほど増えません。しかし、自動車保険を売れば、損保会社から手数料が入るので収益が上がります。
一方の機関代理店は、上場企業など多くの従業員を抱えている会社が、グループ会社として設立します。従業員に自動車保険を売るだけでも、損保会社から入ってくる手数料は莫大の金額になるので、わざわざ機関代理店を設立するメリットがあるのです。
この機関代理店が最近、「進化」を遂げています。例えば、親会社が一大プロジェクトを立ち上げるときに、そのメンバーに参加して、損害保険の観点からリスクマネジメントを検討するのです。
こうなると、「損保商品を代理で売るだけ」という代理店の枠を超えたダイナミックなビジネスを展開できます。東京スカイツリーの建設でも、リスクマネジメントで機関代理店が活躍したそうです。
これが、大手損保会社の社員であるあなたに、機関代理店の担当をおすすめする理由です。
機関代理店は、親会社のためにより効率的なリスクマネジメントを考えますが、そうなると既存の保険商品ではカバーし切れない状況が生まれます。そんなとき機関代理店は大手損保会社と一緒に、「オーダーメード損害保険」を作ることができるのです。
大手損保会社の従業員であっても、保険設計能力に磨きをかけて機関代理店担当に異動すれば、国内有数のビックプロジェクトに「もろに」関係することができるのです。
2.独立開業して自らが損保代理店を立ち上げる
損保大手のあなたが独立して損保代理店を開くメリットは、自由です。国内の損保代理店は20万店を超えるので、市場は飽和状態にあるといえます。しかし、独立すればブラックな労働環境から解放され、自分のペースで仕事を進めることができます。
損保代理店を開くためには、損保会社と代理店委託契約を結び、内閣総理大臣から登録の許可を受ける必要があります。
代理店委託契約を結ぶためには、最低でも日本損害保険協会が主催する「損保一般試験」の「基礎単位試験」「自動車保険単位試験」「火災保険単位試験」「傷害・疾病保険単位試験」に合格する必要があります。
しかしこれだけでは、先行するライバル代理店に勝てません。次のステップとして「損保大学課程」に挑戦すると、コンサルティングや法律、税務の知識が身に付くので、業務の幅は格段に広がります。
また、代理店を開業したら、損保だけでなく生命保険も扱いましょう。ある会社から損害保険の契約をゲットできたら、そのまま社長に生命保険を売ることができます。1カ所への営業活動で2つの手数料を獲得できるのです。

3.損害保険会社を辞めて他業界に転職する
国内大手損保会社を5年で退職した荒川岳さん(仮名、30歳)は、中堅商社の事務職に転職しました。「損保会社はもうこりごり」という思いが強かったからです。
あなたも同じ状態でしたら、今の会社でやりがいを見つけることにも、ましてや損保代理店を開くことにも興味を持てないでしょう。
ならば、他業界への転職です。
あなたからの履歴書を心待ちにしている業界は、数多く存在します。なぜなら、次のような理由があるからです。
損保大手の社員が他業界で受け入れられる理由
- 有名大学を卒業した安定能力人材が多いから
- 安定優良企業である損保大手を辞めるということは向上心が強いと考えられるから
- 損保大手の社員はあらゆる業界に精通しているから
転職活動は、自分という商品を売るシビアなビジネスですので、まずは自分の能力の棚卸をして、じっくりと次の業界を選んでください。
他業種への転職…不安はよくわかります。
しかし、うまく損保会社勤務を抜け出して、人生の立て直しに成功した人の多くは、損保業界以外への道を選択した人々なのです。
この件について、以下でより詳しく説明いたします。
損害保険会社の辞め方とタイミング
1:部下のことを「自爆財源」とみなす上司の引き留めは執拗。退職には揺るがない決意が必要。
働き方がハードな会社は、辞めるときもハードな目に遭わされます。法律的にはサラリーパーソンは2週間前に退職意向を示せばいいのですが、ブラック企業ではそうはいきません。
ブラック企業は従業員の退職を妨害するために、物理的な攻撃や心理作戦をしかけてきます。従業員は退職日をずるずる延ばされているうちに骨の髄まで吸い取られ、心を壊されたころに捨てられるのです。
荒川さんはそこまで酷い目に遭ったわけではありませんが、かなりハードな辞め方を強いられました。
最初のハードルは、荒川さんが最初に退職の意向を告げた直属の上司でした。彼は荒川さんに「5年で辞めるのって、一番もったいないぞ」と言いました。
上司の理屈はこうです。
3年目で辞めるのは「早期に見切りをつける」という意味があるし、7年目で辞めるのは「仕事のすべてを理解した上での決断」だからこれにも意味がある。
しかし5年目で辞めるのは、「ここまで続いたんだし」という点でももったいないし、「まだまだ仕事の魅力を発見できていない」という点でも中途半端である。
それでも荒川さんは上司の説得に応じませんでした。すると上司は、自分の源泉徴収票を荒川さんに見せました。その金額は1300万円を超えていました。
「俺とお前の年齢差は15歳だ。つまりあと15年でお前もこの年収に到達するんだぞ。日本のサラリーマンとしては成功者といえる」
それでも荒川さんが翻意をしないと、上司はとうとう本音を暴露しました。
「俺がどれだけお前の面倒をみてきたと思うんだ。俺に恩返しをしようって気持ちはないのか。せめて俺が異動するまで、退職するな。
お前を失うってことは、自爆の財源が減るってことだ。自爆が少なくなるってことは、営業成績が落ちるってことを意味しているんだぞ。そうなれば俺の人事考査に著しい傷がつく。だから、退職を撤回しろ」
荒川さんは「ふっ」と冷笑してから、上司に「ますます退職の決意が強くなりましたよ」と言い放ちました。
2:「人と人とのつながり」を引き継ぐには時間がかかる。立つ鳥跡を濁さずの精神で!
会社の人事部に退職届が受理されると、荒川さんは引き継ぎ業務に取り掛かりました。引き継ぎ相手は同僚です。つまりその同僚からすると、これまでの自分の仕事に加えて、荒川さんの仕事をしなければならなくなります。また、後日入ってくる荒川さんの後釜に、あらためて荒川さんの仕事を教えなければなりません。
なので、その同僚は不貞腐れていました。
同僚が不機嫌になるのも無理からぬことです。損保の仕事の引き継ぎは、事務職の業務引き継ぎのように、データを入力したUSBメモリを渡して「あとはこの中のデータをよく読んでおいてください」では済まないのです。
損保の仕事は、人と人とのつながりや、会社と会社の付き合いがカギを握っています。「つながり」や「付き合い」を引き継ぐには、物理的な接触が欠かせません。
荒川さんは同僚に、取引先の担当者の性格や趣味、喜ばれる贈り物などを伝授した上で、1件1件、実際に面談して顔をつないでいきました。
「退職のあいさつに行った取引先様の中には『荒川さんが担当から外れるなら、おたくの保険じゃなくてもいいんだよね』と言ってくれる方もいて、心の中でガッツポーズを作りましたよ」
荒川さんは、これまでの仕事が評価されたことを喜び、興奮気味に当時をそう振り返っていました。
退職を考えているあなたも、ぜひとも荒川さんのように「立つ鳥跡を濁さず」を実践してください。ビジネスパーソンとしての人格は、引き際に見えるのです。
損害保険会社の勤務経験が優遇される、より就労条件のよい「おすすめ転職先」の例
1.益々隆盛となる外資等の通販型自動車保険会社に転職
全国ネットのテレビCMの料金は、15秒でおおよそ100万円です。これにはCM制作費、つまり動画を作る費用は含まれていません。有名タレントや凝ったCGを使えば、制作費は青天井となります。
つまり、テレビCMをばんばん流している業界や企業は、景気が良いと考えていいでしょう。そんなうらやましい業界のひとつが、通販型自動車保険です。
この業界をあなたにおすすめするのは、これまでのわずらわしいしがらみを排除でき、なおかつ、あなたのキャリアを100%生かせるからです。
通販型自動車保険は、着実に広まっています。すべての自動車保険に占めるシェアは、2012年度は5.4%でしたが、2年後の2014年度には0.5ポイントアップの5.9%でした。
拡大を続ける通販型自動車保険
通販型自動車保険の正味収入保険料 | すべての自動車保険の正味収入保険料 | 通販型自動車保険のシェア | |
2012年度 | 1980億円 | 3兆6147億円 | 5.4% |
2013年度 | 2149億円 | 3兆7648億円 | 5.7% |
2014年度 | 2291億円 | 3兆8768億円 | 5.9% |

通販型自動車保険は、ネットビジネスとの親和性が高いことも魅力です。通販損保といえば、まだ自動車保険が主流ですが、ネット環境が整備されたり、規制緩和が進むことで、その他の損保商品もネット化されるでしょう。
つまり、いまはまだ通販損保の黎明期にすぎず、今後ますます拡大していく可能性を秘めているのです。
あなたのように「ザ損保」を熟知している人ならば、通販損保で革命を起こせるかもしれません。例えば、ソニー損保は中途採用の求人票をご覧ください。
ソニー損害保険株式会社の求人票
業務内容 | 人身、物損事故の示談交渉、事故受付、初動対応、相談業務 |
応募資格 | 自動車保険の損害調査業務経験者、事故受付などの経験者 |
勤務地 | 札幌、仙台、品川、蒲田、横浜、名古屋、大阪、広島、福岡、沖縄のいずれか |
ここに記載されている業務内容や応募資格は、あなたのいまの仕事そのもののはずです。あなたなのような国内損保での十分な業務実績がある方なら、転職後すぐに結果を出すことができるはずです。
2.大手生命保険会社(外資、国内)に転職
次におすすめするのは、生命保険会社への転職です。もし将来的に独立開業の可能性を考えている方ならば、特に外資の生命保険会社で活躍することによって、短期間で相当な給与を得ることも可能ですし、これまでの損保業界経験を加算することで、最終的には保険の総合的なスペシャリストを目指すことが可能となります。
損保の知識があるあなたが生命保険業界に飛び込めば、すべての顧客のすべてのライフシーンに適した保険商品を紹介できるようになるのは非常に大きいメリットといえます。
フルラインナップを手にした営業パーソンの強さは、説明するまでもないでしょう。
生命保険は人の命に着目したビジネスで、医療や介護とも深い関係があります。医療と介護は、政府の成長戦略にノミネートされている分野です。
生命保険では個人の資産運用にも携わるので、「富裕層ビジネス」も展開できるのです。
つまり「チャレンジングな仕事」であり「儲かる仕事」であり「やりがいのある仕事」なのです。
生命保険業界は成長を続けていて、個人保険の契約件数は増加傾向にあり、2015年度には約1億6千万件に達しました。
増加し続ける個人保険の契約件数
2011年度 | 2012年度 | 2013年度 | 2014年度 | 2015年度 |
1億2千万件 | 1億3500万件 | 1億4千万件 | 1億5千万件 | 1億6千万件 |
http://www.seiho.or.jp/data/statistics/trend/pdf/all.pdf
また、市場規模の大きさも、生命保険業界で働く魅力のひとつです。国内の損害保険業界の市場規模は8兆3597億円でしたが、生命保険は37兆7481億円に達します(いずれも収入保険料、2015年度)。
生命保険の市場規模は損保の4.5倍もあるのです。
「大きなビジネスシーン」を求めているあなたにうってつけのステージといえるでしょう。
3.証券会社の営業マンに転職
「肌がヒリヒリするような切った張ったのビジネスで、一気に年収をアップさせたい」と考えているあなたには、証券会社の営業マンへの転身をおすすめします。
日本企業はいま、バブル崩壊後の「失われた20年」からようやく脱出し、多くの企業が過去最高益を記録し、完全に勢いを取り戻しました。日銀の金融緩和策もしばらく継続する模様です。
国内政治は安定し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて政財が一体となって「強い経済」づくりに取り組んでいます。
まさに株式の時代、つまり証券会社の時代なのです。
アベノミクスがスタートした2012年12月の日経平均株価は、1万300円台でした。2015年には一時2万円台の大台に乗せ、2017年は再び2万円台が有力視されています。
しかも、こうした勢いを国が後押ししています。金融庁は個人投資家の参加拡大を目標に据え、関連する政令などを整備しています。こうした取り組みを受け、投資でおカネを増やそうと考える人が増え始めています。証券マンの見込み客が増えている、ということです。
しかし、人の金銭感覚は一朝一夕には変わりません。日本人の「おカネの作り方」といえば貯蓄が主流ですが、そのトレンドは堅調です。
日本人の金融資産のメインは現預金、株式と投資信託の合計はわずか9%
日本の家計金融資産の合計1568兆円(2012年度末) | |||||
現預金 | 保険・年金準備金 | リスク性資産(9%) | その他 | ||
株式 | 投資信託 | 外貨預金 | |||
54% | 28% | 5% | 4% | 0.4% | 9% |
株式への関心が高まっているのに、いまだに株式や投資信託への投資が少ないということは、ビジネスチャンスが大きいということです。
これも、損保の経験が長いあなたに、あえて株の世界をおすすめする大きな理由のひとつです。
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2014fy/E003664.pdf
http://www.fsa.go.jp/seisaku/18jisseki/21.pdf
人生の選択肢は常にあなた自身が持っている
損害保険会社勤務のあなたの人生を変えるために、まず一番注目すべきことは「損保業界以外の職場もあることを知る」ということです。
案外、外部と交流がない損保業界人は井の中の蛙になることが多いです。
自分の会社以外のことを全く知らないというケースも非常に多いようで、勇気を出して一歩外に踏み出せば大きな海が広がっているということを、改めて考えてみてはどうでしょうか。
兎に角、どうしても今の悩みが解決できなければ「別に辞めればいい」「辞めたっていいんだ」「自分は自由に人生を選択できるんだ」と割り切ること。
周囲からの目を気にしたり、あなたの人生と無関係な上司のメンツを立てて、自分の人生を後回しにしてします思考こそが「今の職場を辞められなくなってしまう」ことの最大原因であり、悩みをより深くして人生を間違えてしまう事につながります。
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自分自身でまず何をしてよいかわからないならば、人材紹介会社に登録するのも手。
転職コーディネーター経由で他の業界、企業の内情を知ることができますし、冷静な第三者の目で、あなたのスキルと経験を活かせる新しい職場を用意してくれます。
また、辞めづらい今の職場で、(転職先を紹介してもらった後に)スムーズに次の職場に移動するための方法やタイミングなどもしっかり教えてくれますよ。
いきなり仕事を辞めたりはせず、まずはじっくり転職エージェントと無料のアポイントを取って、今後の動き方を相談しつつ、あなたの希望に沿った新天地候補をじっくりと紹介してもらうべきでしょう。