
野村 龍一

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記事の目次
世間からの高い評価やイメージとは真逆の、パワハラ・セクハラ、過剰ノルマ、激務にブラックな金融商品押し売りで疲弊していく銀行員、信金マン達…。
電通やワタミの例を挙げる間もなく、一部の過剰な超過残業や営業ノルマ等が原因でブラック業界のレッテルを張られてしまった業界は多いですが、その多くが内外ともに認めるブラック業界であることがほとんどです。
ところが一方で銀行、信用金庫といった金融機関ほど、業界への内外それぞれからの評価にギャップがある業種も珍しいのではないでしょうか。
対外評価的にはエリートで高待遇の羨ましがられる存在でありつつも、「銀行や信用金庫といった金融機関ほどブラックな業界はない!」と内部から断言する声が噴出しているのは、非常に興味深い特徴だと感じてしまいます。
実際、多くの銀行員、信用金庫勤務の金融マン達にとっては、外部からの「いい仕事だね」「羨ましいよ」「年収も高くていいよな」といった羨望の声が苦笑…時には大いに苦痛に感じられるのではないでしょうか?
「我々の本当の姿は、営業ノルマにじわじわと絞殺される社畜そのものなのに…」
「銀行員…売りたくもない投信営業が本当に辛いんだ…」
「信用金庫…地域経済の潤滑油なんで全くのウソじゃないか…」
「なぜパワハラ、セクハラが平然と放置される?もう諦めた」
こんな金融機関内部からの労働者の苦しみの声は、ほとんど外部に届かないまま封じ込められています。
それだけ金融機関が日々苦心している「対外的信用力の構築」「ブランド力」という情報操作経営術が功を奏しているともいえますし、我々のような金融機関外部の人間が、銀行や信用金庫というだけで「信頼できる」と思考停止したまま妄信していることに責があるともいえるでしょう。
いずれにせよ、今回は銀行員や信用金庫内部からの苦しみの声を拾い上げてみます。意外なことに「銀行はもう嫌だ」「信用金庫を辞めたい」というあなたのような金融マン達の声なき声が、無数に聞こえてくるのに気付きます。
銀行業界、信用金庫業界ならではの、就業中の不満、大変さ、辛さと悩み
辞めたい理由と悩み1:投資信託、カードローンなど「売りたくない商品」を売らされて心が病んでいく
銀行の窓口で投資信託等を買ってはいけないよ、手数料だけ取られて全く儲かりもしない「まとも」ではない金融商品を売りつけられるからね…。
本当に情弱な方や経済紙、マネー関連メディアに普段触れることの少ないご老人の方々ならばいざしらず、手数料欲しさの銀行に、無知な老人達が投資信託を売りつけられてしまって、資産を大きく気目減りさせてしまったという惨い体験談は、殆どの日本国民にとっては、すっかり一般的な「常識話」にまでなりました。

ただ一方、多くのメディアでは「消費者向けに銀行や信金窓口の誘いにのって、唯々諾々で金融商品を買うべきではない」という体験談や経済評論家の警句は見られるものの、実際に無意味な投資信託等金融商品を売りつける側(=銀行員、信用金庫などの金融機関)に勤務する人々の本音はどういったものなのかまでは、あまり紹介されることがありません。
端的に言うと、こういった個人向けリテール商品を扱う銀行員や信金担当者も、本音では本当に嫌だ嫌だと思いながら、業務上抗えない立場のために、半ば心を無理やり閉ざしながら顧客に金融商品を売りつけています。
これを読んでいる金融機関のリテール担当のあなた、幾らノルマを達成しても(上司に罵倒されずに済むという安堵感はあれど)心から嬉しく幸せだと感じることはないのでは?むしろ、明らかに損をするだろう金融商品を平然と顧客に進めなければならない自分自身を恥じ、そんな欠陥金融商品の販売を無理強いする会社と上司に、大いに反発、嫌悪、忌避感を抱いているのではないでしょうか?
まともな人間ならば、他人のお金に責任を持つことがいかに恐ろしいことかであることが、肌感覚で理解できるでしょう。本当はあなたもそういった人間のひとりだったのでは?
しかし失職、左遷、減俸、ノルマ未達成などの、すべての金融機関勤務者に共通の恐怖の言葉が頭の中をぐるぐる駆け巡り、やりたくもない迷惑なセールスに日々身をやつしているのではないでしょうか。
近年では銀行が傘下の消費者金融や保証会社とタッグを組んで、総量規制がないことをいいことに返済見込みがない人間にまで莫大な個人カードローンを発行しています(銀行系カードローンに総量規制が存在しないことは、ついにメディアから大問題であるとして指摘されはじめましたね)。

金融商品だけでなく、カードローン販売担当の方々も苦しみの構造は同じです。顧客が損をする…人生が狂うかもしれない…そんな商品を平然とセールスしなければならないことに、普通の人間ならば大きな罪悪感を抱いて当然です。
それでも無理をしてセールス窓口に立ち続け、電話勧誘をし続け無ければいけない仕事…当然ですが銀行員、信金勤務のあなたの心はズタズタに病んできてしまいます。
辞めたい理由と悩み2:会社から強要される過剰なノルマ達成
数年前にヒットしたTBSドラマ半沢直樹の融資ノルマは年間100億だったと劇中で触れられていましたが、凡庸なふつうの銀行員、信金マンも毎月定期1000万円、ローン数百万円、投資信託数十件などのノルマは珍しくもありません。
総合職として勤務する銀行員や信金マンは、更に「過剰な販売ノルマ」の悩みを深くしています。窓口、外回りを問わずに個人法人の預金額はもちろん、先のカードや保険、投資信託、法人担当のかたは融資額のノルマも、金融機関勤務の総合職の心身を痛めつける大きな原因となっています。
一般職ならば販売額ノルマや融資額ノルマはないものの、総合職にとってはノルマが達成できない人材=人間以下という金融業界全体に共通している価値観にがんじがらめとなる人生から一生逃れることは叶わないことを思うと、あなたは絶望的な気持ちになることでしょう。
窓口、外回りとそれぞれ違った辛さはあるものの、過剰ノルマに対する絶望感は共通しています。しかも近年では、まるで一昔前の街金かと見まがうように、預金額の大きい顧客をリストアップして、直接の電話セールスによる金融商品や保険販売なども常態化しています。
直接の電話セールスをかけてみても、ほとんどの顧客からは冷たい反応をされることが多く、露骨に大声で怒鳴られたり、嫌悪感がにじみ出てくる言葉をぶつけられることも珍しくありませんが、ノルマ未達成ならば今度は上司から罵倒され、自分の人事評価がダダ下がりとなります。
電話セールスはあなたをはじめとする銀行員、信金マンに本当に過剰なストレスを蓄積させる業務ですが、ノルマ達成のために今日もまた「顧客には申し訳ない…」と心の中では感じつつも、受話器を手に取るしか選択肢はないのです。
顧客に買ってもらえなければ、自分自身での自己買いに走らざるを得ないからです。
また、都市銀行クラスになると、クレジットカード会社を始めとする様々な連結決算対象となる系列会社を傘下に揃えています。こういった系列クレジットカード会社に(飛ばされて)出向となった銀行員は更に悲惨なノルマ地獄に加え、周囲を取り巻く業務環境と人材レベルの劣化という現実を目の当りにします。
優秀な人間が銀行に残り、そうでない人間は系列企業や取引先に出向させるというのは、言わずと知れた銀行の人事規定路線です。
当然、系列クレジットカードは銀行本体に残ることができなかった卑屈な劣等感を持った人間が吹き溜まり、元々よくもなかった人間関係は更にギスギスとした職場となりますので、稟議書ひとつ通すにしても、銀行員だったころのようにスムーズに業務が回らないのがほとんど。
それでも新たなクレジットカード販売というノルマのために、心をボロ雑巾のようにすり減らしながらも営業に勤しまなければなりません。
辞めたい理由と悩み3:風通しの悪い銀行ならではの文化慣習とパワハラ体質の上司
銀行員を辞めたい理由のトップバッターは「過剰営業ノルマ」ですが、その次辺りに十中八九必ず昇ってくるのが「ギスギスして風通しの悪い人間関係」です。
銀行や信用金庫は外部から見ると、爽やか、丁寧で礼儀正しい人が集まる、きっちりした社風に見えることがほとんどですが、実際の内部からみた世界は全く異なります。完全なドロドロした地上でもっとも人間関係が悪いだろう職場に映って見えるのが当たり前です。
数々の業界再編を潜り抜けてきたものの、日本の金融機関の多くは大変長い業歴を持つ組織体であることがほとんどです。従って、長い年月を経て人為的、自然発生的に生まれたような慣習風紀が組織の体質としてしみこんでおり、それが人間関係や職場の雰囲気風土に直接影響を与えている面は否めません。
例えば、毎日の出勤日においては、上司の役職順番に(支店長→次長→代理→上席の先輩)直接面前まで出向いて都度挨拶をすることから始まり、書類の重ね方、提出の仕方、訂正印や担当印の付き方、休暇や研修不在後のあいさつ(「ただ今戻りました、お休みをいただきありがとうございました」と先の役職順番で御礼を告げていく)、昼食をとるタイミング…細かな社風からくる慣例的決まり事をあげたらきりがありません。
一般企業における「礼儀正しくふるまうための慣例的ルール(社内規定を含む)」とは、本来、職場に勤める人間同士や顧客との間とのコミュニケーションを円滑化させて、より業務をスムーズに運ばせる機能をもって然るべきでしょうが、銀行や信用金庫ではそういった機能面は置き去りにされ、唯ひたすら上席の命令に唯々諾々で従うための社畜養成のためのルールなのでは?と勘繰りたくなるレベルといえます。
過剰に厳格なルールに縛られた職場では、絶対君臨者としての上席の意向に逆らうことは100%許されず、その上、前項の「過剰ノルマ問題」が功(?)を奏する形で、更にそこに勤務するあなたをはじめとする人々を縛り付けてコントロールします。
そもそも銀行員、信金マンにつきもの、やたらと多い「ミーティング」だって、単にノルマ未達成の原因を上司から激詰めされるだけの儀式がほとんどだったりします。
渉外での些細な数字の読み違えを端に発する、上席による大声での人格否定を伴う叱責、書類や郵便物を投げつけて職員を威嚇する壮絶なパワハラともいえる態度は、仕事ができる職員以外(つまり普通のサラリーマン銀行員、信金マン)を人間扱いしないという悲しい職場風土を更に醸造させます。
勿論、社内イベント(運動会、CSR活動、毎週末や年末年始の飲み会)や地域イベントへの休日振替参加は強制なのが当たり前。
そして女性が多い職場でもあるので、より一層人間関係は難しくなってきます。何故か銀行や信用金庫に長く務めている女性(=40代、50代までこの世界生き残ってきたお局様)は、非常に陰険で後輩や同僚に冷たいという方が多いのは何かの偶然でしょうか?
有給でもとろうものならば、上司とお局様が一緒になって「ねえ、ノルマも未達なままで有給取るとかってどんな気持ち?私にはわからないなあ」とイヤミの嵐です。
飲み会では上司に加えてそんなお局様にもお酌をして周らなければならないし、頂いたお酒はどんなに下戸でも断ることすらできない理不尽さは、いかんともしがたいものがあります。
大昔よりコンプライアンスが厳しいので、露骨なセクハラが少なくなっただけ、他業界よりマシなのでしょうか…ね?
辞めたい理由と悩み4:大量の資格取得と激務を乗り越えた出世競争に敗れれば、もうその先の将来はない
銀行員や信金マンの男性総合職ともなれば、ノルマだらけの多忙な業務の間隙をぬって、様々な社内外の資格試験を突破しなければなりません。
学生時代に金融関連資格を既にある程度取得している人はまだましですが、金融マンになってから資格取得を開始した人は本当に大変です。資産運用や融資の基礎知識はもちろんのこと、不動産、相続、税務、国際ファイナンス、日々の時事的経済常識、常用漢字などの「常識」といわれる知識…その分野に際限はありませんので、勉強には終わりがありません。
即ち、金融機関(とりわけ銀行)勤務のあなたにとって、勤務外時間や休日も仕事から完全に離れて暮らすことはできません。気を抜けば当然出世競争から脱落し、それすなわち、銀行外の関連企業や融資先企業への出向(出世競争からの脱落)を意味することとなるのはご存じのとおりです。
銀行、信用金庫を含む金融機関の人事評価制度は徹底した減点主義ですから、日常業務でミスや失点は決して許されませんし、派閥外の上司同僚は全て敵であるとも言えますから「疲れた」と不平すらを漏らす余裕をもつことも許されません。
部店長以上の役職者以外は50歳定年制とまで言われる銀行の出世競争の厳しさですが、ドラマや小説の題材としてしばしば取り上げられるほど誰もが知っている話ですが、実際に関連会社や取引先に出向扱い、転籍扱いとなった人にとってはたまった話ではありません。家族を含めたあなたの人生に関わる話ですから。
辞めたい理由と悩み5:ワークライフバランスとは無縁の激務の末に、無慈悲な転勤命令
年々増えていく膨大な取り扱い業務種類(保険、投信、国債、年金、融資、クレカ、預金等)に対して、常に厳しい作業の時間的制約(3時に振込、入金処理、金庫鍵閉め、入行、退行時間も厳格に指定)に追いかけられる
銀行員、信金マン業務のハードさについて散々述べてきましたが、総合職のあなたにとっては、不正を防ぐためという名目で行われる3年に1度の転勤を覚悟しなければならないのも大きな苦しみの1つではないでしょうか。
経営母体が大きな銀行ほど転勤とは無縁でいられることは叶わず、好き放題に全国各所に異動辞令が下ります。まさに今世間で取りざたされているQOLやらワークライフバランスやらなどとは全く無縁の世界といえます。
当然、家族がいる…子供がまだ小さい…などといった個人的理由は一切考慮してもらえることはなく、新築の家を買ったら即座に海外勤務などという逸話も既に全くありふれた話にしか思えなくなっている自分がいるのに気づきます。
ただし地銀や信金勤務の場合は、全国転勤がなく休日も比較的取りやすいために、都銀勤務の方と比べると「全然マシ」というのが実情でしょう(それでも日常勤務がハードであることには全く変わりませんが)。
この先もつらい現実に耐えながら生きていかなけばならないのでしょうか?
いいえ、「銀行員、信金マンの人生を変える解法」はきちんと存在していますので、それを今からご説明いたします。
あなたの「銀行、信用金庫を辞めたくなる悩み」への対応策
1.あくまで金融マンの王道を突き進み、絶対必死の覚悟で役員に出世を果たす
もしもあなたが、周囲の同僚や上司、先輩と冷静に比較をした上で、まだまだ自分の実力がこの世界で発揮できると自信を持っている方であるならば、邪念を捨てる気持ちでひたすら役員への道を突き進むべく出世競争に勝ち残るという王道しか(本当にこれしか)道はありません。
出世競争は何も都市銀行員だけの限定イベントではなく、フィンテック技術をはじめとする予想外の角度からの収益横奪に対抗すべく、必死に生き残りを図らなければならない時代になっているのは言うまでもありません。
となると、信金だろうが地銀だろうが、出世競争に勝ち残れずに年齢だけを重ねていく使えない人材を抱えていく余裕は、今後ますます狭隘化していくことが確実でしょう。
タイムリミットは50歳になるまで。その年齢に達する前に部長職なり支店長職なりに到達して、尚且つ、社内派閥競争に勝ち抜きつつ、役員としての個人的資質を自他ともに認められることが必要という、はるかに辛く長い道のりなのは言うまでもありません。
その競争に負けること即ちヒラへの降格かやはり外部出向。つい先日まで部下としてこき使っていた仲間からもバカにされ丁稚として残りの金融マン人生を耐え抜かなければならない茨の道です。
2.不動産鑑定士、税理士、公認会計士(米国CPA含む)などの「士業」を目指して独立開業を視野に入れる
普段から散々資格取得に邁進している銀行員、信金マンにとって、不動産鑑定士資格や税理士・公認会計士資格(米国公認会計士資格含む)といった大型資格の受験を志す場合、様々なメリットを既に享受していることになります。
当然ですが、他の一般企業勤務のサラリーマンと比較すると資格受験対策の勉強そのものに慣れていることが1つ。また、難関大型資格の該当受験範囲には金融知識、簿記知識、財務知識を中心とした、銀行業務に直接関連した経験がものをいう問題が相当数含まれる資格が多いということです。
資格勉強そのものの突破は難しくないでしょうから、将来的にはダブル資格ホルダー(税理士+中小企業診断士、不動産鑑定士+税理士など)を目指した上、行内金庫内で税理士資格や不動産鑑定士資格を活かすだけでなく、その先には自分自身で事業を営む道(独立開業)を目指すという成功への道が考えれるでしょう。
事実、不動産鑑定士や税理士といった「士業」事務所を開いている方の多くに、元銀行マンや元信金マンが多いのも、親和性が高いことを裏付けています。
3.銀行や信用金庫勤務の経験を活かせる他業界に転職する
厳しい出世競争の道を人生掛けて勝ち抜くのも辛い、難関資格を取得して独立開業を目指すのもリスクが大きく簡単な道ではない…とお考えになるのは当然です。
そのような場合は、銀行の直接雇用年齢制限であろう50歳を待たずして、他業界などに転職することで人生を打開する道を選ぶべきでしょう。
他業界への転職は最も現実的かつ門戸が広い手段となりますが、これまでの銀行、信用金庫勤務の経験を120%利用する形で、最も有利に転職活動が進められる業界に転職をするという方法です。
他業種への転職…不安はよくわかります。
しかし、うまく銀行、信用金庫勤務を抜け出して、人生の立て直しに成功した人の多くは、金融機関以外への道を選択した人々なのです。
この件について、以下でより詳しく説明いたします。
銀行、信用金庫等の金融機関の辞め方とタイミング
辞め方1:繁忙期の年末、3月9月の決算期や月末の退職相談は避けるべき
銀行員や信金マンの場合、他業種のように特別に退職するタイミングを避けるべき時期などが特殊であるケースはほとんどありません。
一般的な常識範囲として、業務繁忙期である年末や3月と9月の決算期、また月末などを避ける形で、上司に退職相談をするべきでしょう(繁忙期などでは退職願いをはぐらかされてしまう場合もあります)。

辞め方2:法人担当者は融資先などの関与先には、しっかりと挨拶回りをしておくこと
退職が決まったら、特に法人担当者の場合、融資先などの関与先企業にはしっかりと挨拶回りをしておくことが重要です。
転職するのであれ、独立開業をするのであれ、銀行員時代・信金マン時代に培った法人ネットワークは、その後のあなたの人生において大変貴重な価値となることは間違いありません。
特に独立開業をする場合は、下手な大口顧客よりも小口の顧客の方が、今後の人生においてヘタな駆け引きなど無しで付き合いができる可能性があります(大口顧客程、あなたの退職が決まった途端、逆にあなたに対して冷たくなる可能性も考えられます)。
そういう意味だと、中小企業を顧客とする信金マンなどは、退職後にも既存のネットワークを活用できる可能性がより大きいので有利であるとも言えます。
せっかく何年もの間、良好な関係を保つことができてきた関与先法人のコネクションは、決して腐らせないように、丁寧に取り扱うようにしておくべきでしょう。可能ならば、できるだけ融資枠拡大などの相談に最後まで尽力する姿勢を見せておきたいところです。

銀行や信用金庫の勤務経験が優遇される、より就労条件のよい「おすすめ転職先」の例
1.独立行政法人、財団法人、業界団体、政府系機関といった、公務員に準ずる職場環境に転職する
転職の候補先として筆頭に挙がってくるのは、金融マンと同じく規律と厳しいコンプライアンス厳守を礎とする業務に勤しむ職種、特に待遇や安定性が公務員に準ずるような独立行政法人、財団法人、政府系機関や民間でも業界団体などが非常に有力となってきます。
変化球としては、外国大使館、領事館などの職員という手も考えられます(もしもあなたが語学に担当な場合は、更に有利になります)。
外国の大使館や領事館の求人はあなたが思った以上に頻繁に募集があるうえに、経済や財務に明るい知識(特にマクロ視点)を持っている人材を常に求めていますので、国際金融関連部署に所属したことがある方ならば、まず選考もトントン拍子で進むことが予想されます。
また、国内の政府系機関や財団法人などでも、経済産業省特に中小企業庁がらみの組織では、国内の中小企業支援施策の現場を担う使命があるため、積極的に民間金融機関の就業経験者を雇用しています。
もちろん、いずれの場合も金融機関のように過剰な営業ノルマに追立てられることもなく、マイペースで着実に仕事を運ぶことがキャリア形成の中心になってきますので、今までとは打って変わって、極度にストレスフルな上司からのパワハラなどは無く仕事をすることが可能となってきます。
2.難関資格を生かした士業事務所(税理士、社会保険労務士、中小企業診断士、ファイナンシャルプランナー、司法書士等)や経営コンサルティングファーム、M&Aファームに転職
税理士、ファイナンシャルプランナー、中小企業診断士といった、金融機関勤務のあなたにとって「得意分野」ともいえる領域の難関資格を既に取得しているならば、それらの資格を120%評価してくれる、中小企業向け経営コンサルティングファームやM&Aファームへの転職をお勧めいたします。
中小企業の大きな課題の1つに「資金繰り」がありますが、元銀行マンや元信金マンの経営コンサルタントの中には、豊富な融資業務知識を活かして、中小企業向けの融資獲得コンサルタントを専門としている方や、助成金獲得を専門にする方、キャッシュフロー経営を専門として経営全般まで幅広く相談に乗れる、総合コンサルタントを名乗れる方など、様々なスタイルがありますので、必ずあなたのキャリアが生かせる職場になるのは間違いないでしょう。
同じくして、中小企業では事業承継に絡んだM&A戦略支援も大きなトピックスの1つなっておりますので、転職先としては非常に有望です。例えば株式会社日本M&Aセンターなどは、利益率50%超をたたき出し、平均年収は1253万円という、言わずと知れた高給与の超優良企業です。
こういった企業に転職することで、これまであなたが培って気か財務知識を存分にふるって活躍するというプランは、かなり現実的且つ有望な人生戦略となりえるでしょう。

M&A仲介事業の平均年収Top3社
企業名 | 平均年収 |
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 | 1905万円 (※M&Aアドバイザー職) |
株式会社ストライク | 1640万円 (※M&Aアドバイザー職) |
株式会社日本M&Aセンター | 1253万円 (※M&Aアドバイザー職) |
3.リース会社など「金融知識」が生かせて「待ちの営業」ができるノルマのない営業職に転職
M&A業務やコンサルティング業などでバリバリ働くよりも、今までの激務から少し心身共にリラックスできて、マイペースで仕事をしたいと考えている方も多いでしょう。
ならばメーカー系のリース会社などは最適な職場となりえるでしょう。当然、これまでの財務・金融知識を十二分に生かせる職務内容でもありながら、福利厚生や給与もそれほど銀行や信用金庫時代と変わらないで、気持ちだけ安らかに仕事に邁進することが期待できます(某メーカー系リース企業は9時5時定時でサービス残業なし、仮に残業代が発生した場合は15分単位、給与水準と福利厚生は系列メーカー本社と同等、定年60歳で嘱託制度あり、社宅も9割会社負担、会社の風土もまったりしていて、落ち着いた人間関係が保たれている、という、非常に羨ましい待遇です)。
リース会社では当然のごとく、飛び込み訪問営業や電話営業などは一切ありません。営業スタイルは、ウェブやカタログなどを閲覧した顧客からの電話に対応して、訪問商談。
つまり「顧客から来てくれるのを待つスタイルでの営業」となります。これだけでも、金融機関時代の営業スタイルとは天と地ほどの差があり、ストレスから解放されて仕事をすることができるのがお分かりになるでしょう。
リース系企業に転職もありかな?と考えたあなたには、1つだけ注意点があります。
それは銀行系のリース会社に転職しないこと。どうしても銀行系のリース会社は、母体銀行の社風がそのまま受け継がれている可能性が大きいので、せっかく転職しても銀行員時代と同じような悩みに苦しむ羽目になりがちです。
ここは大手メーカー系のリース会社に絞って転職をする…ということを失念しないように、気を付けていただきたいものです。
リース会社の年代別・性別年収
年代別・性別 | 平均年収 |
40代平均年収 | 798万円 |
30代平均年収 | 478万円 |
20代平均年収 | 338万円 |
男性平均年収 | 636万円 |
女性平均年収 | 379万円 |
人生の選択肢は常にあなた自身が持っている
銀行や信用金庫勤務のあなたの人生を変えるために、まず一番注目すべきことは「金融機関以外の職場もあることを知る」ということです。
案外、外部と交流がない銀行/信用金庫業界人は井の中の蛙になることが多いです。
自分の会社以外のことを全く知らないというケースも非常に多いようで、勇気を出して一歩外に踏み出せば大きな海が広がっているということを、改めて考えてみてはどうでしょうか。
兎に角、どうしても今の悩みが解決できなければ「別に辞めればいい」「辞めたっていいんだ」「自分は自由に人生を選択できるんだ」と割り切ること。
周囲からの目を気にしたり、あなたの人生と無関係な上司のメンツを立てて、自分の人生を後回しにしてします思考こそが「今の職場を辞められなくなってしまう」ことの最大原因であり、悩みをより深くして人生を間違えてしまう事につながります。
転職コーディネーターに無料相談することから始める
自分自身でまず何をしてよいかわからないならば、人材紹介会社に登録するのも手。
転職コーディネーター経由で他の業界、企業の内情を知ることができますし、冷静な第三者の目で、あなたのスキルと経験を活かせる新しい職場を用意してくれます。
また、辞めづらい今の職場で、(転職先を紹介してもらった後に)スムーズに次の職場に移動するための方法やタイミングなどもしっかり教えてくれますよ。
いきなり仕事を辞めたりはせず、まずはじっくり転職エージェントと無料のアポイントを取って、今後の動き方を相談しつつ、あなたの希望に沿った新天地候補をじっくりと紹介してもらうべきでしょう。